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焦点:PEが米保険会社を積極買収、高利回り追求でリスク増大も

[ニューヨーク 1日 ロイター] - プライベートエクイティ(PE)の間で米保険会社を買収する動きが広がっている。保険会社が加入者への将来の支払いに備えて取り置いている巨額の資金を運用し、高いリターンを手に入れるためで、ここ数年の買収額は400億ドル近くに上っている。

 6月1日、プライベートエクイティ(PE)の間で米保険会社を買収する動きが広がっている。保険会社が加入者への将来の支払いに備えて取り置いている巨額の資金を運用し、高いリターンを手に入れるためで、ここ数年の買収額は400億ドル近くに上っている。ニューヨークで4 月26日撮影(2021年 ロイター/Carlo Allegri)

PEは国債など利回りの低い伝統資産から、不動産を担保に貸し付けるプライベートローンや未公開株など、リスクが高く、売却が難しい資産へと資金の一部を移している。

こうした動きは監督当局の注意を引いており、保険金の支払い請求に応じるためPEが短期間で規模の大きいポートフォリオを清算せざるを得なくなった場合の流動性ひっ迫への懸念を生じさせている。

PEと保険会社の組み合わせは成功をもたらすかもしれない。PEは保険会社にはない投資スキルや投資へのアクセスを持ち、保険会社は低コストの資金を提供する。PEは投資で常に大きなリターンを上げるとは限らないが、多額の手数料収入を稼げる。

しかしPEは徐々にリスクを高めている。格付け会社AMベストによると、PEは米国の全生命保険と全年金保険の資産の7.4%相当、3760億ドルを保有しており、これは2015年の2倍の水準だ。手続き中の案件を含めると、今年はさらに2500億ドル増えて保有比率は12%となる可能性がある。

州の保険規制当局と密接な関係を持つ仕組み金融の専門家によると、高利回り資産への投資によって常にデフォルト(債務不履行)リスクが高まるわけではない。しかし単純な金融商品に比べると、デフォルトが起きたときに大きな損失を被る傾向があるという。

<リスクは流動性とストラクチャー>

保険会社の買収に伴う運用戦略はさまざまだ。カーライル・グループによると、同社は昨年アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)から過半数株を取得した米再保険フォーティテュードのポートフォリオ(437億ドル)の一部、約50億ドルを、買収ファンド、クレジット商品、オルタナティブ投資などに回している。

アポロ・グローバル・マネジメントは、保険会社アテネ・ホールディングの全資産1860億ドルを運用。アポロの運用資産総額と手数料関連収入に占める比率はそれぞれ40%、30%となっている。

アポロのマーク・ローワン最高経営責任者(CEO)は「保険会社は、一定の流動性リスクとストラクチャー関連リスクを取るのに理想的だ。信用リスクを取るのではなく、流動性の低い証券を受け入れることで超過リターンが得られる」と話した。

<懸念強める当局>

米規制当局は、売却が難しい投資商品が積み上がっていることに目を光らせている。米連邦準備理事会(FRB)は最近、危機が起きて保険金の支払い請求が急増すれば保険会社が資金不足に陥る懸念があると警鐘を鳴らした。

ニューヨーク大学のジョシュア・ローネン教授(会計学)は「FRBが懸念しているのは、こうしたリスク性資産が十分な流動性を持たなかったり、価値が大幅に低下して保険加入者が危険にさらされたりする事態だ」と述べた。

保険会社は、この1年間の景気悪化にもかかわらず、十分な資本を維持しているようだ。アナリストによると、新型コロナ流行で利益が打撃を受けているが、資本は劣化していない。例えばS&Pグローバル・レーティングスは先に、アテネの格付けを「Aプラス」に引き上げ、見通しを「ポジティブ」とした。

しかし一部の案件はリスクへの懸念によって影響を受けている。

オールステートのトム・ウィルソンCEOによると、同社は最近、傘下の生命保険・年金保険事業を大手PEのブラックストーンなどに売却した際、高リスク資産に積極的に資金を振り向けない企業を探したという。ウィルソン氏は「もはや当社の顧客ではなくなっても、加入者には保険金が支払われることを望んでいる」と述べた。

(Alwyn Scott記者)

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