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焦点:コロナ大規模検査、費用対効果に科学者から疑問の声

[コペンハーゲン/ロンドン 10日 ロイター] - 綿棒を鼻やのどに突っ込まれる新型コロナウイルス検査のわずらわしさは、今や世界中の多くの人々が何度も経験している。

 5月10日、綿棒を鼻やのどに突っ込まれる新型コロナウイルス検査のわずらわしさは、今や世界中の多くの人々が何度も経験している。写真は2021年4月、デンマーク・コペンハーゲンで検査に並ぶ人々。待ち時間は約1時間半だった(2022年 ロイター/Tim Barsoe)

しかし、パンデミックの発生から2年を経た今、繰り返し行う大規模検査の感染抑制効果について、一部の国の衛生当局は疑問を呈し始めた。とりわけ、数十億ドル規模のコストに照らした費用対効果に注目が集まっている。

そうした国々の筆頭がデンマークだ。同国はパンデミック初期に世界有数の大規模検査体制を敷いた。だが、議会は今、この政策が有効だったか否かの検証を要求している。

コペンハーゲン国立病院の感染症学教授で政府の新型コロナ諮問団体メンバーのイェンス・ランドグレン氏は「わが国は諸外国よりずっと多くの検査を行ったが、過剰だった可能性がある」と語る。

日本は大規模検査を行わなかったが、感染・死亡件数を見る限り、パンデミックを比較的うまく乗り切った。英国やスペインは、一時に比べて検査を縮小した。

一方で、中国の「ゼロコロナ」政策では相変わらず、市民全員を繰り返し検査することが柱となっている。

世界保健機関(WHO)世界アウトブレーク警告・対応ネットワークの座長、デール・フィッシャー氏は「われわれは学んでいく必要がある。完璧な対応を採れた人はだれもいなかった」と述べた。

新型コロナが出現した当初、WHOは感染が疑われる人を全員検査するよう各国に促した。世界的な調査により、科学者は重症化や死亡、感染のリスクを解明することができた。

今では比較的症状の軽いオミクロン変異株が主流となり、ワクチンや、より有効な治療も普及した。そうした中で専門家は、各国政府が母集団から一部の調査対象を選び出して検査する標本調査など、より戦略的な政策を考慮すべきだと指摘する。

もっとも、あまり大胆に調査を縮小し過ぎると、変異し続けるウイルスを発見できなくなるとの指摘もある。

<多大なコスト>

WHOはこれまで、中国が現在行っているような無症状者を含む網羅的調査をガイドラインで勧告したことはない。コストが高く、有効性に関するデータもないからだ。

デンマークの新型コロナ感染者数と死亡率は結局、同国ほど大規模な検査を行わなかった国々と変わらなかった。このため議会では過半数の政党が、大規模検査戦略の検証を求めている。

人口580万人のデンマークは、過去2年間に実施した迅速検査とPCR検査合わせて1億2700万回を全て無料で対応した。デンマーク必須供給庁によると、その経費は総額160億クローネ(23億6000万ドル)を超えた。

アワ・ワールド・イン・データによると、人口が同程度の隣国、ノルウェーはPCR検査を1100万回実施するにとどまった。人口が約2倍のスウェーデンの検査回数は1800万回程度だった。

南デンマーク大学の世界衛生学教授、クリスティン・スタベル・ベン氏は、同国の戦略はコストが高く、結果が「文書化されていない」と言う。

「大規模検査アプローチは、本当に意味のある検査から焦点をずらしてしまった。それはリスクの高い人々への検査だ」とベン氏は語った。

一方で、大規模検査によって感染率が抑えられ、人々の社会復帰が進んで経済とメンタルヘルスの促進につながったと言う専門家もおり、政府もそう主張している。

昨年9月の政府の報告書によると、デンマーク経済は他の欧州諸国に比べ、新型コロナによる打撃が比較的穏やかだった。

ヘケロップ法相はロイターに対する電子メールで「多くの諸外国で行われた措置、例えば長期間のロックダウンの方が、人的・経済的コストが大きくなるであろうことは間違いない」と述べた。

<エビデンス>

昨年公表されたデンマークの調査結果では、検査プログラムと、それに続く感染者の隔離によって、感染が最大25%抑制されたと結論付けた。

だが、この推計に疑問を呈する専門家もいる。医学専門誌メディカル・ビロロジーに3月末に掲載された検証結果では、網羅的検査プログラムで無症状者に迅速検査を用いることの有効性は「不透明」だとの見方が示された。

英ブリストル大学・医科大学院の上席講師、アンジェラ・ラッフル氏は「(大規模検査により)パンデミックを直ちに阻止し、感染を90%削減できるという主張だったが、そうはならなかった」と述べた。

大規模検査が、より大きな効果を生まなかった理由については、目標が野心的過ぎたとか、実は検査が完璧ではなかったなど、いくつかの仮説がある。

加えて、多くの人々は陽性が確認された後に自己隔離しなかった、もしくはできなかった。オミクロン株がまん延する前に英医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナルに掲載された検証結果では、陽性確認者のうち指定期間いっぱい自宅隔離した人の割合は42.5%にとどまったことが分かっている。

英イングランドでは現在、無料で新型コロナ検査を受けられるのは政府の医療従事者、特定の健康状態にある人々、病院に入る人々に限られている。その他の人々は、症状があっても有料で検査を受けるか、回復するまで自宅にとどまるよう勧告されるだけだ。

世界的衛生専門家からは、こうした検査縮小は行き過ぎだ、との声も出ている。

マギル大学(カナダ)の世界衛生学教授、マドゥー・パイ氏は、政治家が経済活動を前進させるために「検査を故意に減らしたり、アクセスしにくくしたりする」事例が見られると指摘。「これは悲惨なことになる。より危険な変異株が現れた時、われわれは完全に不意打ちを食らうからだ」と警鐘を鳴らした。

(Nikolaj Skydsgaard記者 Jennifer Rigby記者)

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