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焦点:北朝鮮、戦術核の戦力化目前か 韓国とミサイル開発競争

[ソウル 30日 ロイター] - 韓国と北朝鮮が近年、熾烈(しれつ)なミサイル開発競争を繰り広げている。その結果、次々にさまざまな短距離ミサイルが配備されたが、北朝鮮が戦術核兵器の戦力化目前という段階まで達しつつあるという意味で、一歩抜け出した感がある。

 韓国と北朝鮮が近年、熾烈(しれつ)なミサイル開発競争を繰り広げている。写真は2019年10月、ソウルで開かれた国際航空宇宙・防衛産業展示会で撮影(2021年 ロイター/Josh Smith)

北朝鮮は、2018年に大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験を自主的に中断したことを踏まえ、韓国側の探知をくぐり抜けて目標に打撃を与えることができる精密誘導型ミサイルの開発を加速させている。

一方で韓国は17年に米国との間で弾道ミサイル弾頭の重量制限を撤廃する合意を交わしたため、北朝鮮の攻撃を先制するか、あるいは北朝鮮指導部を「排除」することを目指す戦略で重要な役割を担える、より大型なミサイル兵器開発を進めているところだ。

こうした中で3月下旬、北朝鮮が新たなミサイル発射実験をした。金正恩総書記が今年1月の朝鮮労働党大会で、核弾頭を戦術兵器に搭載するため「小型化」できると宣言して以降、ミサイル発射実験は今回が初めて。一連の北朝鮮の動きは、朝鮮半島の緊張緩和に向けた方策を模索しているバイデン米政権にとって、それがいかに難しいかを浮き彫りにしている。

韓国の事情に目を向けると、同国には米軍約2万8500人が駐留する。安全保障面でそうした米国への依存を減らしたい文在寅政権が、その手段の1つとみなしているのが、より大型で性能の高い短距離弾道ミサイル(SRBM)の導入だ。

昨年、韓国の当時の鄭景斗(チョン・ギョンドゥ)国防相は、射程距離800キロ、搭載弾頭重量2トンという「玄武(ヒョンム)4」ミサイルに言及。韓国は「朝鮮半島の平和を守るために十分な射程と世界最大級の弾頭を備えた」ミサイルを開発したと大見得を切った。

専門家によると、北朝鮮も自国の最新のSRBMについて2.5トンの弾頭搭載が可能だと表明したが、これは偶然の一致とは考えにくい。正恩氏の妹の与正氏は3月30日に発表した談話で、韓国のチョン氏の発言を引き合いに出し、北朝鮮も自前のミサイルを開発する権利があると主張した。

ジェームズ・マーティン不拡散研究センター(CNC)研究員のジョシュア・ポラック氏は「韓国が新たな能力を持つミサイルを開発すると、北朝鮮も負けず食らいついてくる」と指摘する。ポラック氏は昨年共同執筆したリポートで、韓国と北朝鮮がともに非核型の精密誘導型ミサイルの性能を進歩させることは、1つの危機から戦争にエスカレートする新たな道を助長していると警告した。

<核弾頭搭載SRBMか>

北朝鮮は、ミサイル開発の目的は自衛にあり、韓国と米国による合同軍事演習や兵器供与などの敵視政策が北朝鮮の安全を脅かしていると非難している。

正恩氏は1月の朝鮮労働党大会で、核兵器の「小型化、軽量化、規格化」に向けた技術を蓄えたと断言した。

韓国の諜報機関も、実際に搭載されたかどうかは不明ながらも北朝鮮が最新型SRBMに核弾頭を搭載できると結論を下したもようだ。諜報部門のレクチャーを受けたある同国議員が3月29日に明らかにした。

米シンクタンク、アトランティックカウンシル上席研究員で、かつて米国の諜報部門で北朝鮮担当だったマーカス・ガーロースカス氏は「北朝鮮側の発言に基づけば、彼らのSRBMでさえ核弾頭搭載が可能だと見なされなければならない」と話した。

欧州のミサイル専門家、マーカス・シラー氏によると、いったん技術を習得すれば核弾頭を通常弾頭よりも軽くできるという。

英シンクタンク、国際戦略研究所(IISS)のジョセフ・デンプシー研究員によると、北朝鮮の最新型ミサイルは低空を飛行して、目標到達直前に高度を上げる能力も示しており、そうなると探知や迎撃が難しくなる。「このタイプのSRBMが戦力化された場合、韓国内の特定目標に命中する確率が従来のタイプよりもずっと高くなる」と分析した。

米国の北朝鮮分析サイト、38ノースは26日、北朝鮮内の造船所の衛星画像から、数年にわたって建造作業が続いていた新型弾道ミサイル搭載型潜水艦の完成が近づいている可能性が示唆されると伝えた。

<対抗心>

文在寅氏は26日の演説で北朝鮮のミサイル発射実験に触れた上で、韓国のミサイルの能力は「世界クラス」だと強調した。

韓国は昨年の玄武4の発射実験後には、地下の発射基地破壊を目指す新たな地上発射型ミサイルの量産化にも乗り出すと発表している。

NGOのオープン・ニュークリアー・ネットワークのメリッサ・ハナム副ディレクターは、今回の北朝鮮によるミサイル発射実験は、韓国の玄武4に匹敵するか、それを上回るミサイルが自分たちにあると韓国側に伝える狙いがあったように見受けられると述べた。

韓国の報道によると、同国は早ければ年内にも、初の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の水中発射実験も行うかもしれない。このミサイルは射程500キロの玄武2Bをベースに開発された通常弾頭搭載タイプ。排水量3000トンで新型の「KSS III」潜水艦に装備される可能性がある。

韓国国防省は、安全保障上の理由から個々の兵器を確認するのは拒否したが、「わが軍は近代化を通じて北朝鮮の短距離ミサイルに対抗する能力を構築した。さらに軍備を向上させる計画だ」とコメントした。

そうしたミサイルは、韓国が掲げる2つの重要な対北朝鮮戦略を強化する役割を果たしてもおかしくない。その戦略とは、北朝鮮の攻撃計画を探知して核施設やミサイルや長距離兵器を先制して破壊できる「圧倒的反応」と、北朝鮮指導部の「除去(抹殺)」を含めた「戦略目標攻撃」だ。

CNCのミサイル研究者、ジェフリー・ルイス氏は「韓国は超大型の通常弾頭を北朝鮮の地下施設などに命中させると決意しているようだ。そこには単純な嫉妬もある。つまり北朝鮮がそうした能力を保有するなら、韓国も同様の措置を講じるのが当たり前という考えだ」と解説した。

(Josh Smith記者)

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