July 29, 2014 / 5:38 AM / 6 years ago

焦点:大型IPOラッシュに備える市場、JDIショックなお警戒も

[東京 29日 ロイター] - 東京株式市場で、今秋から大型の新規株式公開(IPO)が相次ぐ。発行体も投資銀行側もおおむね順調な消化を予想するが、投資家側には慎重な見方も目立つ。

 7月29日、東京株式市場で、今秋から大型の新規株式公開(IPO)が相次ぐ。写真は、東京証券取引所に上場を申請したスマホ向け無料通信アプリLINEのアイコン。都内で2012年8月撮影(2014年 ロイター/Yuriko Nakao)

昨年来のIPOムードを後押ししてきたアベノミクスへの市場の期待がしぼみつつある中、初値が公開価格を下回るリスクも消えておらず、価格設定をめぐって神経質な展開が予想される。

<発行総額は6000億円超に>

現在、予定されている主なIPOは、すかいらーく(東京都武蔵野市)、人材派遣会社のリクルートホールディングス(東京都千代田区)、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ、大阪府大阪市)などで、今秋から来年春あたりにかけて実施される見通し。このほか、韓国の検索サイト大手ネイバー(035420.KS)の日本子会社で、スマートフォン向け無料通信アプリのLINE(東京都渋谷区)は、東証に上場を申請したが、米国市場との重複上場になるか、まだ決まっていない。

投資銀行関係者によれば、発行計画が明確になっていないLINEを除いても、すかいらーく、リクルートなどでオファリングの総額は6000億円を超えるとみられる。このところ、1日平均売買高が2兆円を切るなど凪(なぎ)の相場展開の中で、これだけの規模となる新株発行を市場が無事に消化できるかが注目点だ。

予想外の逆風が吹いた例として記憶に新しいのが、今年3月のジャパンディスプレイ(JDI)(6740.T)のIPOだ。同社は大手電機メーカーの中小小型液晶パネル事業を統合、政府系ファンドの産業革新機構が2000億円を出資し再建した、いわば国策的な戦略企業。しかし、売り手の革新機構が高い公開価格を望んだことが裏目に出て、初値は公募価格を15%下回る結果となった。

同社の株価はいまだにIPO価格割れで推移している。同社も含め、今年に入ってIPOを行った30社(東京プロマーケットを除く)中、8社の初値が公開価格を割り込んだままだ。JDIショックに象徴されるIPOへの警戒感は、いまだに市場に残っている。

<発行体側は順調な消化を予想>

発行体の動向を注視し、投資銀行関係者は、大型IPOラッシュの先行きに楽観的だ。

メリルリンチ日本証券の楠瀬丈生・副会長(投資銀行部門担当)は、上場企業が自社株買いを積極化しているため、市場に供給される株式が多くなっても需給過多にはなりそうにない、と指摘。「リストラ併用型でも完全成長型でも、(企業業績が拡大するという)光るストーリーがあれば、十分買ってもらえるお金は市場にある」と予想する。

野村証券の倉本敬治・公開引受部次長も、IPOが「よほど集中しなければ心配ない」との見方だ。同氏によれば、個人投資家からも機関投資家からも需要は引き続き旺盛だという。

一方、IPOを受け止める側の投資家や市場関係者の意見は、楽観論と悲観論に分かれている。

IPOの環境の良好さを指摘するのは、楽天証券経済研究所の窪田真之・チーフストラテジスト。企業の自社株買いが増えており、増資額から自社株買い総額を差し引いた「ネット調達」がマイナス(市場に吸収余地がある)となっている点や、市場の資金量を増やす日銀の異次元緩和が継続している点などが好材料だという。

しかし、いちよしアセットマネジメントの秋野充成・執行役員運用部長は「足元の商いの乏しさでは大型IPOを吸収することは難しい」と指摘。そのうえで、大型IPOを吸収するには「2兆2000─3000億円程度の東証1部の売買代金が必要だろう」と、年後半にかけての相場の盛り上がりがカギを握ると話す。

足元の株式相場では売買代金の低迷が続いており、7月は東証の一日平均売買代金が1.92兆円と2兆円を割っている。

<公開価格、強気な設定に警鐘>

需給面で大きなハードルはないとしても、IPOの成否を占う要因として市場関係者が共通して警戒しているのは公開価格の水準だ。

ミョウジョウ・アセット・マネジメントの菊池真社長は「(3月公開した)日立マクセル(6810.T)やJDIは明らかに、公募価格の設定が高すぎた。すかいらーく、リクルートも公募価格の設定が重要」としたうえで、「落ち着きどころと考えられる株価の10─20%下に価格を設定しないと、JDIの二の舞になりかねない」と警鐘を鳴らす。

上場予定の企業の中で、複数の市場関係者が共通して注目銘柄として挙げるのがLINEとすかいらーくだ。

LINEに関しては、成長企業のイメージはある一方で、世界的な金融緩和を背景に、SNSを含むネット関連銘柄は米国市場でも過大評価されている。そうした環境下でのデビューに懸念はないか。ミョウジョウ・アセットの菊地氏は、ネット関連の株価修正が「LINE上場までにすでに起きているか、上場後の株価下落がそのきっかけになるのか、どちらの可能性が高い」という。

一方、すかいらーくは、2006年の株式非公開化を経て、ファンドのもとで再生し再上場を狙う。ドルトン・キャピタル・ジャパンの松本史雄・ファンドマネージャーはすかいらーくが、成熟産業、再上場、ファンドのエグジットなどという「魅力の低いIPOの条件をほとんど満たす」と指摘し、公開価格を慎重に設定する必要があるとの考えを示している。

江本恵美、安藤律子、取材協力:杉山容俊、富沢綾衣、編集:北松克朗

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