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焦点:みずほが2周遅れの危機、システム関連で巨額減損損失

[東京 6日 ロイター] - みずほフィナンシャルグループ8411.Tが巨額減損損失を計上したことで、三菱UFJフィナンシャル・グループ8306.Tなど他のメガ銀行グループとの距離は広がるばかりだ。ライバルが着実に自己資本を積み上げ、海外金融機関などへの出資や買収を進める中、みずほの自己資本の見劣りは明らかだ。「もはや周回遅れどころか2周遅れ」(銀行アナリスト)との指摘も出ている。

 3月6日、みずほフィナンシャルグループが巨額減損損失を計上したことで、三菱UFJフィナンシャル・グループなど他のメガ銀行グループとの距離は広がるばかりだ。2015年5月撮影(2019年 ロイター/Yuya Shino)

<店舗の減損、他メガは昨年に計上>

「このタイミングで、こんな巨額の減損を計上するとは想定外」―─。ある銀行アナリストは、みずほの突然の損失計上に驚きを隠さなかった。

みずほが発表した損失6800億円の内訳は、固定資産の減損損失約5000億円、市場部門の米国債の損失計上約1800億円。固定資産の損失のうち、リテール部門にかかわる次期システムも含めたソフトウエアが4600億円、店舗統廃合が400億円と説明する。

店舗の統廃合に伴う損失は、三菱UFJや三井住友フィナンシャルグループ8316.Tが18年3月期にすでに計上を済ませ、みずほが追いついてきたかたちだ。ソフトウエアの減損は現在、統合を進めている次期システムがほとんどだという。来年度から生じる年間800億円規模の償却負担を軽減することになる。

新年度から新たな中期経営計画が走り出すタイミングで、損失計上を放置して先送りせずに一括処理する経営判断に踏み切った。重荷を下ろした分、成長路線に乗れるのかどうが問われることになる。会見した坂井辰史社長は「減損処理を一気にやることで、後年度の費用負担を解消した」と強調した。

<買収戦略で遠のくライバルの背中>

銀行アナリストの1人は、みずほと他の2メガとの関係について「すでに差が付いているのに、今回の損失計上により、その格差は一段と広がるだろう」と分析する。

3グループの自己資本比率(CET1比率)は、18年9月末時点で三井住友の14%台後半、三菱UFJの11%台後半に対し、みずほは9%台後半と水をあけられている。

三菱UFJは3月、独銀から航空機ファイナンス事業を7000億円超で買収するなどM&Aも積極的に進めている。健全性では三菱UFJを抜いた三井住友も「今後はM&A含めた成長投資に資本を充てる」(国部毅社長)と前向きだ。

これに対して、みずほは「うちは資本が弱い。他メガのように大きな買収などは困難」(グループ会社幹部)という状況だ。

みずほは今回、巨額損失計上にもかかわらず年間配当7.5円を維持すると発表。株主には朗報だが、配当総額は約1900億円で、通期の業績予想800億円を上回り、持ち出しになる。

すでに見劣りする自己資本の積み上げで、さらに劣後するのは間違いなく、M&Aなどの成長投資に振り向ける資本が、ますます枯渇する展開が予想される。

布施太郎 編集:田巻一彦

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