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アングル:ロシアのハッカー攻撃、情報漏洩と保険金問題で肩すかし

[ロンドン/ワシントン 1日 ロイター] - ロシア系ハッカーが身代金要求型のウイルス「ランサムウエア」によってウクライナと西側同盟国のネットワークを混乱に陥れるとの警戒感が広がっているが、今のところそうした事態は現実化していない。背後には、犯罪集団が情報漏洩などにうろたえている状況や、身代金を要求された企業や組織に保険金が下りないのではないか、との懸念があるようだ。

 3月1日、ロシア系ハッカーが身代金要求型のウイルス「ランサムウエア」によってウクライナと西側同盟国のネットワークを混乱に陥れるとの警戒感が広がっているが、今のところそうした事態は現実化していない(2022年 ロイター/Kacper Pempel)

最も悪名高いロシア系ハッカー集団の1つである「Conti(コンティ)」は先週、ロシアのプーチン政権への「全面的な支持」を表明したが、その後自らが情報漏えいの犠牲となって姿勢を転換。ウェブサイトに「われわれはいかなる政権とも組んでおらず、現在進行中の戦争を強く非難する」との声明を出した。

コンティはこれまで、ランサムウエアを使って欧米企業から巨額の資金をゆすり取ってきたことで知られる。

声明の数時間後、「ContiLeaks(コンティのリーク)」というアカウントがツイッターに登場し、コンティ内部のチャット履歴だとするやり取りを掲載した。

米フロリダ州のサイバーセキュリティー会社、アドビンテルのビタリ・クレメズ最高経営責任者(CEO)と、米ウィスコンシン州のホールド・セキュリティー社の創業者、アレックス・ホールデン氏によると、内部のチャットをリークしたのはウクライナ人のサイバーセキュリティー研究者だ。ロイターはチャット履歴の真偽を独自に確認することができなかった。

両氏はこの研究者と連絡を取っているが、研究者はまだウクライナにいるためメディアに話をすることを望んでいないという。

クレメズ氏によると、研究者は以前からコンティのログにアクセスしていたが、ロシアのウクライナ侵攻に際してコンティがロシア政府への忠誠を誓ったことが、チャット公開の引き金となった。「彼らの発言に気分を害したのだ」という。

西側諸国の諜報機関は侵攻が始まる数カ月前から、ロシア側がウクライナのインフラにサイバー攻撃を仕掛ければ大きな余波が広がり、混乱が起こると警戒していた。

コンティは先月、英国のスナック菓子で有名なKPスナックスへの大々的な攻撃に関与したほか、少なくとも1つの石油貯蔵企業に攻撃を仕掛け、欧州の石油出荷が一部遅れる原因となった。

<保険金の問題>

しかし米上院情報委員会のマーク・ワーナー委員長は、ロシアがウクライナに侵攻して以来、米国が特定した最大のロシア系ハッカー集団が大規模なサイバー攻撃に使われていないと述べている。ワーナー氏は2月28日、ロイターに対し、この「Aチーム」集団が「活動している様子は見られない」と語った。

2月27日には、やはりロシアにメンバーがいるとされるランサムウエア集団「Lockbit(ロックビット)」が、ウクライナ問題に関して中立を宣言する声明をウェブサイトに出した。

「われわれにとって、これは単なるビジネスであり、われわれは皆政治に無関心だ。関心があるのは、われわれの有益無害な仕事に対して支払われるカネだ」と表明。「われわれはいかなる状況下でも、世界中のどの国であれ重要なインフラへのサイバー攻撃に参加せず、どんな国際紛争にも決して関与しない」とした。

ハッカー集団がこうした姿勢を採るのは、サイバーセキュリティー保険の「穴」に一因があるかもしれない。

専門家らによると、洗練されたランサムウエア犯罪集団は保険を掛けている組織や企業に絞って攻撃を仕掛ける傾向がある。身代金を支払うための保険に入っているため、金額の引き下げを要求したり、支払いを拒否したりする可能性が小さいからだ。

しかし保険契約は普通、戦争など「不可抗力の事由」を保険適用の例外事項と定めている。この事由がどのような場合に当てはまるかを示す法的前例はまだ少ないものの、ロシアなどの戦争遂行国と関連する犯罪集団によるサイバー攻撃が、この分類に入る可能性は非常に高いとホールデン氏は言う。

ホールデン氏は、企業は保険会社から「不可抗力の事由、あるいは戦争なのでカバーできない」と言われるだろうと述べた。

他にも理由がある。ハッカー集団の多くは金儲けにしか関心を持っておらず、おおっぴらに西側の敵国と組むことによって悪い意味で注目を集めることを警戒しているのだ。

ホールデン氏は「わが国(米国)政府は彼らを敵の戦闘員、あるいはテロリストと認定し始めるだろう」と語った。

(James Pearson記者、 Raphael Satter記者)

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