November 2, 2015 / 7:23 AM / 4 years ago

焦点:南シナ海で高まる中国のプレゼンス、米軍を「量」で凌駕

[香港 30日 ロイター] - 米国は、海軍のミサイル駆逐艦を南シナ海で中国が造成した人工島付近に派遣したが、それは中国の艦隊が周囲で監視・追跡する中で行われた。

 10月30日、米海軍は今後も長い間、アジアで技術的優位を維持すると思われるが、それに対し中国は数で勝負していると言えるかもしれない。写真は中国が人工島を造成したスプラトリー諸島スビ礁の衛星写真。9月撮影。提供写真(2015年 ロイター/CSIS Asia Maritime Transparency Initiative/DigitalGlobe)

米海軍は今後も長い間、アジアで技術的優位を維持すると思われるが、それに対し中国は数で勝負していると言えるかもしれない。南シナ海では、多くの中国の海軍艦艇や巡視船が定期的に配備されている。

アジアや米国の海軍当局者は、中国が領有権を主張する、南シナ海の約90%が対象となる「九段線」の周縁部でさえ、中国船との遭遇が頻繁に起きていると語る。以前は、そのような遭遇は比較的まれだったという。

米ミサイル駆逐艦「ラッセン」が26日に派遣され、南沙(英語名スプラトリー)諸島の渚碧(同スビ)礁から12カイリ内を航行したのと同じような「航行の自由」作戦を定期的に行うと米当局者らが明らかにしたのを受け、そのような遭遇は増える一方となるだろう。

「彼ら(中国の海軍と巡視船)はどこにでもいる。そして、自分たちの存在を示したがっている。南シナ海にいたら、追跡されていると考えた方がいい」と、アジアにいる米海軍将校は匿名で語った。

実戦では米国の技術的優位が決定的となるだろうが、中国の数的優位は、とりわけ海上で対峙した場合は考慮に入れるべき事柄だと、安全保障の専門家らは指摘する。

米艦ラッセンがスプラトリー諸島を航行中、中国の艦船は同艦を追跡していた。

中国の艦船は距離を保ちながらラッセンを追跡したとはいえ、自国が領有を主張し、造成した7つの人工島から12カイリ内を米国が繰り返し航行すれば、同国の忍耐を試すことになると、専門家らはみている。

中国の張業遂・筆頭外務次官は、米国のボーカス駐中国大使を呼び出し、米艦派遣は「極めて無責任」だと抗議した。一方、米当局者らは、国際法が許す限り、米国はどこでも飛行や航行を行うと繰り返し述べている。

緊張が高まる中、両国の海軍は29日にテレビ会議を開催。米政府高官は、双方が対話の継続と「洋上で不慮の遭遇をした場合の行動基準(CUES)」を順守する必要性で一致したと明らかにした。

中国は人工島にすでに1本の滑走路を完成し、さらに2本を建設中。人工島は中国にとって、東南アジアやそれを超えた海域への海洋進出の足掛かりとなるだろう。スプラトリー諸島では、ベトナム、フィリピン、台湾、マレーシアも実効支配している。

<地元の利>

米国防総省が4月に発表した調査によると、南シナ海に配備されている中国の艦隊は、同国が保有する3艦隊のうち最大となる116隻で構成されている。

同調査はまた、中国が500トン型以上の巡視船200隻以上を保有しており、その多くが1000トン型以上だとしている。同国の巡視船隊だけで、他のアジア諸国の合計数をしのぐという。

一方、日本の横須賀を拠点とし、原子力空母ロナルド・レーガンが所属する米海軍の第7艦隊は55隻で構成され、西太平洋とインド洋の大半を管轄下に置く。

「中国には地元の利がある」と、オーストラリアの元海軍将校で、ラジャラトナム国際研究院(シンガポール)のアドバイザーを務めるサム・ベイトマン氏は指摘。侵入者とみなされる相手と対峙する場合など「いくつかの状況では、質よりも量が重要となり得る」と語った。

ベイトマン氏や他の同地域の安全保障専門家らは、航行の自由を掲げて哨戒活動を行う米艦船は今後、それを阻止しようとする中国の艦船に包囲されることになる可能性を指摘する。

中国国営メディアの報道によると、一部の中国人専門家は、中国が米艦船を阻止するための作戦を行うと警告している。

行動基準によって、米国の艦船は攻撃の口火を切ったり、事態をエスカレートさせたりすることには消極的となり、撤退を余儀なくさせられる可能性があると、ベイトマン氏は述べた。

米海軍はコメントを差し控えている。

だが、メイバス米海軍長官は近年、艦船数増加を優先事項としており、多くの場で「量は質を兼ねる」と語っている。

<プレゼンス拡大>

艦隊の増強や巡視船への取り締まりの一本化などから、南シナ海における中国のプレゼンスが着実に拡大していると、同海域で活動する海軍将校らは口をそろえる。

また、巡視船が同海域で従来は海軍が行ってきた哨戒活動の多くを担う一方、中国の探知能力が進歩したことで海軍も近くにいることが可能となったと将校らは指摘する。

過去2年間の南シナ海の衛星画像を見た専門家と海軍将校らは、中国の艦船は領有を争う複数の場所で半永久的なプレゼンスを維持しているとの見方を示した。

その中には、フィリピン沖の黄岩島(同スカボロー礁)や仁愛礁(同セカンド・トーマス礁)、西沙諸島(同パラセル諸島)からスプラトリー諸島の北部にかけて存在するいくつかの礁、マレーシアのサラワク沿岸沖にある南康暗沙(南ルコニア礁)が含まれる。

中国海軍はまた、マレーシアに近い曾母暗沙(同ジェームズ礁)付近でも哨戒活動を行っている。

中国は2013年1月以降、ほぼ常にプレゼンスを維持できるように巡視船を巡回させていると、オーストラリア国防大学で南ルコニア礁での状況を研究するスコット・ベントレー氏は指摘。

「中国は初めて、九段線全体を明確に主張するだけでなく、その域内の海域で領有権の主張を積極的に拡大しようとしている」と同氏は語った。

(Greg Torode記者、翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)

0 : 0
  • narrow-browser-and-phone
  • medium-browser-and-portrait-tablet
  • landscape-tablet
  • medium-wide-browser
  • wide-browser-and-larger
  • medium-browser-and-landscape-tablet
  • medium-wide-browser-and-larger
  • above-phone
  • portrait-tablet-and-above
  • above-portrait-tablet
  • landscape-tablet-and-above
  • landscape-tablet-and-medium-wide-browser
  • portrait-tablet-and-below
  • landscape-tablet-and-below