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焦点:スタグフレーションに身構える市場、70年代の再来は本当か

[ニューヨーク 27日 ロイター] - 資産運用会社で働くフィル・オーランド氏が、これほど多くの市場参加者からスタグフレーションの話を聞くのは、自身が金融ジャーナリストだった1970年代終盤以来だ。当時は原油価格が高騰し、物価上昇率は現在の2倍以上だった。

資産運用会社で働くフィル・オーランド氏が、これほど多くの市場参加者からスタグフレーションの話を聞くのは、自身が金融ジャーナリストだった1970年代終盤以来だ。写真は6月、ニューヨーク証券取引所前で撮影(2021年 ロイター/Andrew Kelly)

フェデレーテッド・ハーミーズのチーフ株式市場ストラテジストのオーランド氏は今、景気減速と物価上昇が同時に進むスタグフレーションが再燃する態勢になっていると語り、高インフレと経済成長減速の局面を乗り切れる銘柄に資金を集中させつつある。

「(足元の)物価の急上昇は米連邦準備理事会(FRB)やバイデン政権がわれわれに告げてきたような一過性の現象ではないと分かってきた。成長がピークを過ぎてもしつこく続いている」と、オーランド氏は話す。

実際、9月の米消費者物価指数(CPI)は前年比5.4%上昇。年間で1990年以来最も高い伸びになるペースで推移している。アナリストは、商品価格の高騰から新型コロナウイルスを受けた総額約5兆3000億ドルの政府による刺激策まで、あらゆる要素が物価を押し上げたと分析する。一方、第3・四半期の米国内総生産(GDP)は前期比2.7%増と、第2・四半期の6.7%増から鈍化が見込まれる。

ほとんどのエコノミストは、スタグフレーションが不可避だとはみていない。FRBも物価高は一時的だと言い続けている。S&P総合500種は年初来で22.1%上がり、なお過去最高値圏にある。

それでも多くの投資家は、過去のスタグフレーションが資産価格を目減りさせた点に警戒感をのぞかせる。

グーグルでは今月、「スタグフレーション」の検索数が2008年以降で最多になろうとしている。ゴールドマン・サックスはスタグフレーションを「顧客の会話で最も頻繁に登場する言葉」と記した。バンク・オブ・アメリカ・グローバル・リサーチの調査によると、スタグフレーションを想定するファンドマネジャーの数は10月に14ポイント増え、12年以来の水準に達した。

ナベリエ・アンド・アソシエーツのルイス・ナベリエ最高投資責任者は「米経済の減速が衝撃的でスタグフレーションを示唆しているのは間違いない。われわれは全てのポートフォリオの管理を強化している。なぜなら(株式市場が)より不安が多く道が狭いトンネルに入ろうとしているからだ」と述べた。

確かに過去のスタグフレーション局面は株価を圧迫している。ゴールドマン・サックスの分析に基づくと、S&P総合500種では、過去60年余りでスタグフレーションと認定された四半期の騰落率中央値はマイナス2.1%、他の四半期はプラス2.5%だった。

債券も、1960年終盤に始まった直近の大きなスタグフレーションでは苦戦を強いられた。当時は原油高騰と失業率上昇、金融緩和が重なり、1980年にCPI上昇率が13.5%に達した。FRBは政策金利を20%近くまで引き上げた。ニューヨーク大学のアズワス・ダモダラン教授が集計したデータでは、米10年国債は1982年までの11年のうち9年で価格が下落している。

こうした中でフェデレーテッド・ハーミーズのオーランド氏は現在、エネルギーや工業などコスト上昇を消費者に転嫁できる銘柄を保有。ナベリエ氏は、ターゲットなど自前の供給網を持つ大規模小売り業者を重視する姿勢だ。

<70年代との違い>

もっとも、市場では1970年代を引き合いに出すことに否定的な声も多い。足元の物価高の原因が過大視されているか、いずれ消えてなくなりそうな点がその理由だ。

BMOアセット・マネジメントの米債券共同責任者スコット・キンバル氏は「今まさにスタグフレーション懸念が頂点に達していると思う」と語り、インフレタカ派にとって主な心配の種になっているインフラ投資法案の支出の大半は長期間に及ぶもので、目先の経済的影響はないとの見方を示した。

ブラックロック・インベストメント・インスティテュートを率いるジャン・ボワバン氏は、供給制約が緩和されるとともに成長は加速し、米国債利回りは上昇しそうだと予想。「われわれが想定したインフレ圧力はここに存在する」としながらも、これはスタグフレーションではなく、同社のリスク志向は変わらないと強調した。

UBSのアナリストチームは、1970年代のスタグフレーションを主導したのは原油高だけでなく、供給の足を引っ張った政府の価格統制など今では考慮に入れる意味がない幾つかの要素だったと指摘した。

ただし株式市場にとって波乱をもたらす恐れがあるのは、物価上振れの脅威を感じたFRBがよりタカ派的になる展開だ。毎月1200億ドルの債券買い入れの縮小に乗り出そうとしているFRBがその縮小ペースを速めたり、より積極的な利上げに動いたりすれば、株価は重圧を受けかねない。

ジャナスのグローバル債券ポートフォリオマネジャー、ジェーソン・イングランド氏は「来年も物価上昇率のレベルがまだ現在と同じぐらいで、成長が上向いていないとすれば、FRBが行動すると考えておく必要がある」と警告した。

(David Randall記者)

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