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アングル:トルコ大統領の預金保護策、短期効果で早期選挙に布石か

[イスタンブール 21日 ロイター] - トルコのエルドアン大統領が打ち出した自国通貨リラ建ての預金を保護する措置は、国内の預金者にある程度安心感を与えただろう。同時に、2023年に予定されている大統領・議会選挙の前倒しに向けた布石なのかもしれない。ただ、今後政府債務が増大し、インフレをさらにあおる危険もはらんでいる。

 トルコのエルドアン大統領(写真)が打ち出した自国通貨リラ建ての預金を保護する措置は、国内の預金者にある程度安心感を与えただろう。同時に、2023年に予定されている大統領・議会選挙の前倒しに向けた布石なのかもしれない。写真はアンカラで撮影。提供写真(2021年 ロイター/Murat Cetinmuhurdar/PPO)

雇用や成長、輸出を促進して借り入れコストも下がるという自身の触れ込みで「新たな経済モデル」を推進してきたエルドアン氏だが、現実にはリラの急落で生活苦にあえぐ国民の支持率低下に直面している。

そのエルドアン氏が20日に公表した対策の柱が、リラ建て預金保護だった。これによって国民は預金金利の収入の享受しながら、財務省が補てんする形で外貨換算ベースの損失を回避し、なおかつ非課税という「良いことずくめ」になり、預金者のドル売り/リラ買いを後押ししている。

エルドアン氏が、短期的な成果を得られる半面、長期的な痛みをもたらしかねないこうした政策カードを切ったのは、数カ月中に選挙を行うシグナルだと受け止める向きもいる。世論調査機関メトロポールのセンカル社長は「早期に選挙があるだろう。これまで経済に対して(政府が)打ってきた手は選挙戦略だ」と分析した。

実際、政権与党の公正発展党(AKP)とエルドアン氏による最近の積極的な政策対応は、保守的な低所得勤労者層という自らの支持基盤をてこ入れし、過去に成し遂げた経済成長を再び取り戻そうとする「最後の抵抗」、というのが専門家の見立てだ。

21日にはリラの対ドル相場も急反発した。しかしアナリストや銀行関係者によると、エルドアン政権は為替レートの変動に起因する将来の損失をカバーするという負担を背負い続ける恐れがある。足元のリラ高も長続きせず、再び下落してもおかしくない。

公式統計に基づくと、トルコの一般国民が保有するリラ建て定期預金残高は今月10日時点で約1兆2000億リラ(925億ドル)に上る。全てに新たな保護措置を適用し、ドル高/リラ安のペースが中銀の預金金利より20%速い場合、財政負担は2400億リラに達する、とマルマラ大学の経済学者フルシト・ギュネシュ氏は試算した。

もっとも、預金者からすれば、財務省がいつ預金の損失を補てんし、どのような方法で免税してくれるか疑問は残るものの、資産の目減りを防ぐ待望の措置が提供されたことになる。複数の銀行関係者はロイターに、だからこそ20日の夜だけで最大15億ドルがリラに転換され、1日として過去最大のリラ高につながったと語った。

ビルケント大学のレフェト・ギュルカイナク経済学部長は「(過去2カ月間に)起きたようにドルのリラに対する価値が2倍になると想定すれば、リラ建て預金のリターンは100%だ」と指摘。「とはいえ、危険な結果を招きかねない」と警戒感を示した。

トルコでは経済学の定石に反する金融緩和が積極果敢に進められて政策金利が14%に下がっている以上、各銀行が既に16━18%に設定している預金金利の大幅な引き上げは提示できそうにない。エルドアン氏の圧力を受け、中銀は9月以降、計500ベーシスポイント(bp)の利下げを実施し、物価上昇に歯止めが利かなくなるとの懸念から過去20年間で最悪の通貨危機が発生した。

<代償は不可避>

トルコの11月の物価上昇率は前年比21%で、リラ急落に伴う輸入物価高騰のため、来年には30%超に跳ね上がると予想されている。食品やその他生活必需品の値上がりはもっと急激で、とっくにぎりぎりのやり繰りを迫られている家計はもはや火の車だ。

リラ安がさらに進めば、理論的には財務省が際限なく新規国債を発行することを意味する。その財源の工面は中央銀行に押し付けられる可能性があり、新たなインフレの波を生み出すと銀行関係者やアナリストは懸念する。

テリマーの株式調査責任者、ハスナイン・マリク氏は「リラにとってフリーランチは存在しない。リラ建て預金保護の代償は、最終的に企業の借り入れコスト増大ないし増税を通じて支払うことになる。覚悟を決めて信頼するに足る金利政策環境を再構築する以外、逃げ場はない」と強調した。

一方、事情に詳しい政府関係者は、財政負担が見込まれ、インフレが進む恐れはあると認めつつも、「これらは制御可能だ」と断言。発表した全ての決定項目にはさまざまなリスクからの保護も含まれていると付け加えた。

トルコ大統領首席顧問で政府の経済政策委員会に所属するチェミル・エルテム氏はロイターに、預金保護は個人がインフレから身を守るためにドルに頼る必要をなくす「歴史的な変化」をもたらしたと説明した。

それでもある銀行幹部は、新政策が機能するのはトルコ経済が経常黒字を維持する場合だけであり、21日に示した概要にとどまらず、もっと詳しい説明が政府に求められると注文をつける。また「財務省はいつ、どうやって補てん分を支払うのか。3カ月ごと、あるいは半年ごとに支払うのだろうか」と疑問を投げかけた。

(Ebru Tuncay 記者、Nevzat Devranoglu 記者)

*記事の内容は執筆時の情報に基づいています。

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