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焦点:米の対中制裁、世界の政府系ファンドや年金基金を直撃

[ロンドン 26日 ロイター] - ハイテク分野を巡る米中両国の対立激化が、幾つかの世界最大級の政府系ファンド(SWF)や年金基金を苦境に追いやっている。ロイターがこれらの機関投資家のデータや開示資料を分析して明らかになった。

 1月26日、ハイテク分野を巡る米中両国の対立激化が、幾つかの世界最大級の政府系ファンド(SWF)や年金基金を苦境に追いやっている。写真はノルウェーの政府系ファンド(SWF)が置かれているノルウェー中央銀行。オスロで2018年3月撮影(2021年 ロイター/Gwladys Fouche)

「とばっちり」を受けている形の投資家は1兆1000億ドル(約114兆1100億円)規模の全米教職員年金保険組合(TIAA)から、ノルウェーやシンガポールのSWF、スイス国立銀行(中央銀行)まで多岐にわたる。

直接の原因は、トランプ前大統領が昨年11月に中国の軍と関係があると見なす企業に米国民が投資するのを禁止するとする命令を出したことだ。これまでに40余りの中国企業がブラックリストに掲載された。

そのためTIAA傘下のヌビーンは、ブラックリストに加えられた中国電信(チャイナテレコム)、中国移動通信(チャイナモバイル)、中国聯通(チャイナユニコム)、中国海洋石油(CNOCC)、中芯国際集成電路製造(SMIC)、小米科技(シャオミ)といった保有銘柄の売却を余儀なくされた。

他の米公的年金も追随するとみられる。例えばカリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)は、チャイナテレコムの香港上場株(H株)を1.1%、チャイナモバイルとチャイナユニコムのH株は0.2%を持っていることがリフィニティブで確認できる。カルパースは米共和党議員から中国企業への投資を批判されてもいる。同年金はコメント要請に応じていない。

2000億ドルを動かすフロリダ州運用管理理事会(FSBA)もチャイナテレコム、チャイナモバイル、シャオミの株を少量だが保有しており、ロイターの取材に対して投資禁止命令に従うと回答した。

ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズの政策調査責任者エリオット・ヘントフ氏は「米国の機関投資家にとって、この投資禁止は本当に痛手になっている」と指摘する。

<中国投資の拡大に冷水>

もっとも影響は米国だけにとどまらない。ブラックリストに掲載された中国企業について、ニューヨーク証券取引所が上場廃止に動いたばかりか、MSCIやS&Pダウ・ジョーンズ、FTSEラッセルが一斉に株価指数から除外した。このため、これらの企業の株価は一部が20%余りも急落し、ポートフォリオに組み込んでいた海外のいくつものSWFを直撃した。

世界最大のSWFであるノルウェー政府年金基金(資産1兆3000億ドル)は、昨年初めまでの直近の情報開示によると、さまざまな中国株350億ドル相当を保有。その中にはチャイナテレコム、チャイナモバイル、シャオミ、CNOCC、チャイナユニコムも持ち分0.2-0.6%程度の割合で含まれていた。取材したところ、保有する個別銘柄に関するコメントはしないとの返答だった。

シンガポール政府投資公社(GIC)はチャイナテレコムのH株10%と、SMICの中国本土上場株(A株)とH株約1.4%を持っていることが、証券取引所への届け出書類に基づくロイターの計算で判明した。コメントは拒否している。

ブラックリスト対象企業の株は、カナダ第2位の資産規模を持つ年金基金であるケベック州貯蓄投資公庫(CDPQ)、カナダ公的年金投資委員会、オランダに拠点を置く独立系年金運用会社PGGM、オランダ公務員年金基金を運用するAPGアセット・マネジメントなども保有している。

世界の株式市場における中国株のウエートが近年高まっていることを背景に、SWFは中国株投資を拡大してきた。そのSWFに対して、まさに冷や水を浴びせたのが米国の投資禁止命令や、さらには華為技術(ファーウェイ)ないし動画投稿アプリのTikTok(ティックトック)が中国政府のスパイ活動に関与しているとの米政府の主張だ。こうした禁止命令や米政府の主張は、ハイテク分野が米中の地政学的な対立における主戦場の1つになっている状況を物語る。

<中国政府のアリババ規制でも痛手>

バイデン大統領の今後の方針がまだ明確になっていない中で、チャイナテレコム、チャイナモバイル、シャオミ、CNOCCの株価は昨年11月以降、あるいは今月に入って12-22%の幅で下落した。

SWFの中国投資(CIC)でかつてマネジングディレクターを務めたウィンストン・マー氏は「売られた株の一部は米国以外の投資家が押し目で拾うかもしれないが、彼らが全部を吸収するのは難しいだろう」と述べた。

中国株を保有する機関投資家が翻弄されているのは、米国だけのせいでもない。昨年11月にはアリババ傘下の金融会社アント・グループが計画していた新規株式公開(IPO)に、中国政府が直前になって待ったを掛け、アント株の3割強を保有するアリババの時価総額が25%余り目減りする場面があったからだ。アリババは世界の時価総額トップ10銘柄の1つで、幅広いSWFや年金基金に保有されている。

米証券取引委員会(SEC)のデータによると、スイス中銀は昨年9月時点でアリババ株の保有が14億ドル相当と、それまでの2年間で2倍に膨らませていた。その後の11月の急落で保有価値がおよそ3億5000万ドルも消失した格好だ。ただ今月に米政府がアリババを投資禁止対象に追加するのを見送ると、同社株は値下がりのおよそ半分を取り戻している。

(Marc Jones記者、Tom Arnold記者)

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