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アングル:中国が「漁船団」に軍事訓練、南シナ海へ派遣

[白馬井(中国) 1日 ロイター] - 中国は、領有権を争う南シナ海へ送り込む漁船団の「高性能化」を進めており、海南島にある小さな港町、白馬井の漁船団は、軍事訓練や助成金はもちろん燃料や氷に至るまで、あらゆる支援を受けている。

 5月1日、中国は、領有権を争う南シナ海へ送り込む漁船団の「高性能化」を進めており、海南島の漁船団は、軍事訓練や助成金はもちろん燃料や氷に至るまで、あらゆる支援を受けている。写真は、同島潭門鎮で4月撮影(2016年 ロイター/Megha Rajagopalan)

そうした訓練や支援には、海上演習や外国船舶に関する情報収集などが含まれていると、海南省当局者や同地域の外交筋、水産会社幹部らが最近行ったインタビューで明らかにした。

「海上で活動する民兵組織は拡大している。国がそれを必要としているからだ。また、国益を守り、国家への奉仕に携わりたいという漁師の気持ちもその一因だろう」と、同省政府の顧問は匿名で語った。

しかしこのような漁船団は、年間5兆ドル(約532兆5000億円)の貿易を支える戦略的輸送路となっている同海域で、外国の海軍と対立するリスクも高めていると、外交官や海軍専門家らは指摘する。

南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)諸島で中国が人工島を建設している付近では、米軍が海空から哨戒活動を行っており、昨年11月にはB52戦略爆撃機2機を飛行させている。米国政府は2月、南シナ海周辺での「航行の自由」作戦を増やす意向を明らかにした。

<基礎的な軍事訓練>

人民武装部の支部が漁師に基本的な軍事訓練を提供していると、この海南省政府顧問は話す。このような支部は、中国人民解放軍(PLA)と共産党の地方当局の監督下に置かれている。

訓練の内容には、捜索・救助活動や海上災害対策、そして「中国の主権を守ること」が含まれると、南シナ海を専門とするこの顧問は明らかにした。

海上演習も行う訓練は5─8月に実施され、政府は漁師に「参加費」を支払うという。

また政府は漁師に助成金を出すことで、木製ではなく、鋼鉄製でより重量のある船舶を使用するよう奨励している。

中国政府は少なくとも5万隻に全地球測位システム(GPS)装置も提供、外国船籍の船との遭遇など緊急時には海警局と連絡が取れるようになっていると、業界幹部は語る。

複数の海南島の漁師や外交官はロイターに対し、一部の漁船には小型の武器が搭載されていると述べた。

「主権を守る特別任務」が生じた際には、政府当局が漁船団と連携し、外国船舶の活動について情報収集させると、前出の顧問は明らかにした。

<インドネシアとの対立>

政府当局と漁船団の連携は、3月に南シナ海にあるインドネシア領ナトゥナ諸島で中国の漁船が拿捕(だほ)されそうになったとき顕著に現れた。

中国の沿岸警備艇は、漁船を連行しようとするインドネシア海軍を阻止するためにすぐさま介入、外交問題にまで発展した。中国政府はナトゥナ諸島の領有権を主張していないものの、漁船は「中国の従来の漁場」にいたとしている。

中国国有の水産会社は、スプラトリー諸島へ定期的に運航し、軍事訓練や助成金の多くを受ける漁船団を支配していると、業界筋は話す。

中国の水産業が世界最大であるのは間違いないが、同国沿岸地域の水産資源が激減しており、領有権を争う海域で漁をする経済的必要性に迫られていると、漁師や業界幹部は口をそろえる。

国有企業である「Hainan South China Sea Modern Fishery GroupCompany」のウェブサイトには「軍民両方」とあり、目的の一つはスプラトリー諸島に「中国の国旗を掲げる」ことだとしている。

「主権を守ることは、政府の主な懸念事項だ」と、同社のゼネラルマネジャーであるYe Ning氏は、海南省の省都、海口市にあるオフィスで説明。「だが言うまでもなく、自国の海域で普通の人々が漁をできることは当たり前であるべきだ。それもわれわれの目的の一つだ」と同氏は語った。

ロイターが入手した同社の会社案内によると、スプラトリー諸島に出航する漁師に燃料や水や氷を提供し、彼らが得た魚を買い取っているという。

<危険がいっぱい>

「さまざまな外国船があるなかで漁をするのは、以前にもまして危険だ」と語るのは、閑散とした港町、白馬井の漁師であるHuang Jingさんだ。白馬井の港には見渡す限り、鋼鉄製の大きなトロール漁船が並んでいる。

「でも、中国は強くなった。私たちを守ってくれると、政府を信頼している」とHuangさんは語る。

また、私企業だが国から助成を受けている「Hainan Jianghai Group Co. Ltd」の会長を務めるChen Rishen氏は、大規模な鋼鉄製トロール漁船団をスプラトリー諸島付近に送り込み、その漁獲量は何百トンにも上ると語る。一度の漁はたいてい数カ月に及ぶが、主に商業的な理由だとしている。

「外国の漁船がわれわれの領海に侵入して妨害しようとするなら、われわれは主権を守るという役目を果たす」と、Chen氏は海口市で行われたインタビューのなかで答えた。

一方、中国政府は、南シナ海における領有権問題で漁船は使っていないとし、外務省の陸慷報道官は「このような状況は存在しない」と語った。

中国は漁船団が合法的に操業するよう措置を講じていると、同報道官は先月にも定例記者会見で語った。

<活動ルール>

Chen氏はまた、同氏の会社に属する漁師たちが、燃料補給や中国沿岸警備艇との連絡のために西沙諸島(同パラセル諸島)の永興島(同ウッディー島)に立ち寄っていることを明らかにした。中国は2月、同島に地対空ミサイルを配備している。

漁師たちは、中国がスプラトリー諸島でも建設中の同様の施設を利用することを心待ちにしていると、Chen氏は言う。これまでのところ中国は、同諸島に滑走路1本を完成。そのほか2本の滑走路と補給施設などが建設中である。

「こうしたことは全て、同海域で活動する各国の民間船と警備艇の間で効果的なコミュニケーションを取るための協定合意が必要なことを示している」と、人道対話センターのアジアディレクターを務めるマイケル・バティキオティス氏は指摘する。同センターは、領有権を主張する国々がそのような信頼を構築するための措置を講じる手助けを行っている。

連絡や手続きに関する地域的な協定は、敵対する海軍同士の艦船や他の軍艦にのみ適用されていると、同氏は指摘した。

(Megha Rajagopalan記者 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)

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