for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up

アングル:中国発「鉄冷え」どこ吹く風、蘇るゾンビ製鉄所

[襄汾県(中国) 11日 ロイター] - コモディティー(商品)価格の下落と需要低迷により、昨年10月に閉鎖に追い込まれた中国の山西中升鋼鉄は、その時点でサンフランシスコからメキシコ国境まで高速鉄道の線路を敷けるほどの在庫を抱えていた。

 5月11日、山西中升鋼鉄のように、長年の価格下落で生産停止を余儀なくされた「ゾンビ企業」と呼ばれる中国の鉄鋼メーカーが息を吹き返している。山西省の同社で4月撮影(2016年 ロイター/John Ruwitch)

しかし政府の景気刺激策に後押しされ、中国の鉄鋼価格が急激に改善したことで事態は一変した。世界的な需要低迷とは裏腹に、山西中升鋼鉄は息を吹き返し、10万トンの在庫を売りさばいた。現在も、鉄筋や線材を含む製品を1日当たり約4000トン生産している。

山西中升鋼鉄のように、長年の価格下落で生産停止を余儀なくされた「ゾンビ企業」と呼ばれる中国の鉄鋼メーカーが息を吹き返している。それはまさに世界的な鉄鋼不況を引き起こしているとして、他国が中国に過剰生産の抑制を求めるなかで起こっている。

──関連記事:中国「ゾンビ」製鉄所が復活、過剰生産やまず

中国の鉄鋼供給量は世界の半分を占め、世界的な供給過剰にもかかわらず、同国の3月粗鋼生産量は月間最高を記録した。

中国政府は生産能力を削減すると明言しているが、山西省などにある鉄鋼の町が抱える問題は一筋縄ではいかない。同国の経済的台頭においてなくてはならない役割を担ってきた鉄鋼業界を手なずけるのが、政府にとっていかに困難であるかを物語っている。

山西中升鋼鉄のような多くの鉄鋼メーカーは、こうした企業が地域の主な雇用者であり納税者であることを意識している地方政府の圧力を受け、価格が戻るとすぐに生産を再開。その他多くのメーカーも、大量解雇や債務を押し付けられることを恐れた地方政府による支援のおかげで、事業低迷にもかかわらず生き残っている。

製鉄所の生産再開はまた、石炭やコークスの需要を増加させるなど、地元経済への波及効果も期待できる。

「中国では、大人になったらいずれマイホームとマイカーを持たなくてはと言われる。これらは生活の基本的ニーズを保証するだけでなく、鉄鋼需要を保証するものでもある」と、山西中升鋼鉄のChenXuewu氏は語る。

閉鎖していた中国の製鉄所が復活したというニュースは、世界的な供給過剰に対処しようと努力する英国や米国の企業にとっては気の滅入る話だ。

インド鉄鋼大手タタ・スチールTISC.NSは3月、中国製を含む安い輸入品の大量流入が原因で英事業の一部売却を決めたと発表した。

鉄鋼業界の情報ポータルサイト「steelcn.cn」によれば、山西省だけで、過去1年程度の間に少なくとも23の製鉄所が生産を停止、もしくは削減した。そのうちいくつは生産を再開している。

停止していても、山西省の昨年の粗鋼生産量は3850万トンに上る。これは英国の生産量の3倍以上だ。中国全体の生産量は8億0400万トンで世界最大となっている。

マッコーリー・リサーチは4月のリポートで、中国鉄鋼メーカーのセンチメントは過去数年で最も明るいとしている。

<ファンダメンタルズの欠如>

山西中升鋼鉄の製鉄所から北に車で3時間ほどにある広大な山西文水海威鋼鉄の製鉄所は、ブロートーチを使って巨大な金属製のじょうごを切断している男性2人を除けば閑散としている。製鉄所の門には警備員さえいない。

山西文水海威鋼鉄は1985年に生産を開始、ピーク時には従業員が8000人いた。だが採算が取れなくなり、約半年前に初めて閉鎖を余儀なくされた。

しかし現在、呂梁市政府は同市の主な納税者で雇用者である山西文水海威鋼鉄に生産再開を求めている。国営メディアの報道によれば、市長と副市長は3月に同社を訪れ、できるだけ早い工場再開を促している。同社はこの1カ月以上、準備に追われているという。

同市政府はコメントを差し控えた。

山西省は今週、環境改善計画の一環として、鉄鋼生産能力を高めるような新たなプロジェクトは禁止すると発表。だが現行の生産能力を維持したゾンビ製鉄所の復活は、問題になってはいないようだった。

経済協力開発機構(OECD)によれば、2015年は世界の鉄鋼生産能力の30%以上が未使用であり、世界中の鉄鋼メーカーだけでなく、中国のメーカーにとっても圧力となっているという。

とはいえ中国では、多くの製鉄所を生き返らせた活気は、上海鉄筋先物価格に現れている。25年ぶりの低成長から脱却すべく政府が債務に依存するインフラ投資を奨励するなか、同価格は昨年12月初めから今年4月終わりまでの間に80%上昇した。

建設資材である鉄筋の先物価格はそれ以降、25%下落している。フィッチ・レーティングスのローラ・ザイ氏は、同価格が昨年第4・四半期の水準にまで下がると、再開した製鉄所が再び生産を停止することになるとの見方を示した。

インフラ投資の主な目安となる固定資産投資の伸びがほぼ15年ぶりの低水準にとどまっていることから、価格の回復がいつまで続くかは疑問だとザイ氏は指摘。

「鉄鋼のようなコモディティーにとって、価格回復の真の支援材料としてファンダメンタルズは欠かせない。今年はファンダメンタルズの変化はあまり見られない」と、同氏は語った。

電気工のWang Dehuiさんにとって、再開したばかりの山西宏達鋼鉄の製鉄所での仕事は家の近くで働けることを意味するが、将来については幻想を抱いてはいないという。

「長くは続かないだろう。鉄鋼価格が良ければ生産を続けるだろうが、下がればまた製鉄所を閉めるだろう」と、Wangさんは麺をすすりながらこう話した。

(John Ruwitch記者 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)

for-phone-onlyfor-tablet-portrait-upfor-tablet-landscape-upfor-desktop-upfor-wide-desktop-up