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アングル:新興国市場の格下げサイクルは終息へ

[ロンドン 3日 ロイター] - 信用格付けの引き下げは新興国の経済や企業に向こう何カ月にもわたって苦痛をもたらすものだが、ここ何年も続いてきた格下げサイクルが終息に近付いている可能性を示す暫定的な兆候も出ている。

 6月3日、信用格付けの引き下げは新興国の経済や企業に向こう何カ月にもわたって苦痛をもたらすものだが、ここ何年も続いてきた格下げサイクルが終息に近付いている可能性を示す暫定的な兆候も出ている。写真は、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)の建物。NYで2013年2月撮影(2016年 ロイター/Brendan McDermid)

新興国市場は近年、コモディティ価格の下落や経済成長の減速、外国為替相場の大幅な変動により財政が悪化し、打撃を受けてきた。

こうした状況に格付け機関は、多数の国や企業の格付けを一段と低い水準に下げることで対応し、かつては隆盛を誇ったブラジルやロシアなどの発展途上国の格付けを投機的(ジャンク)等級に引き下げた。

格付けの変更に敏感な投資家は発展途上国に関連した資産を売却し、2002年から2012年にかけて大規模なポートフォリオを構築した取引を一部、巻き戻した。

スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)グローバル・レーティングスは3日、南アフリカの格付けを投資適格級で最低の水準に据え置いたが、格付け見通しは「ネガティブ」とした。トルコやポーランドも格下げの可能性に直面している。

それでも投資家は、新興国の格付けが悪化する動きが減速しつつあるかもしれないと考えている。

NNインベストメント・パートナーズの新興国市場債部門を率いるマルセロ・アサリン氏は「大半の地域で依然として格下げの動きが見られるが、ペースは鈍ってきている」と指摘。「コモディティ価格は安定しつつあり、実際には最終的に持ち直す動きも見られる。成長悪化のペースは和らぎつつあり、通貨が上昇する動きもある」と述べた。

同氏は「従来と同じ程度で格下げの動きが今後も続くと、われわれが単純に考えていないのは、それが理由だ」と付け加えた。

ただアサリン氏は、格付けの変更は通常、信用の改善に遅れるとも指摘。このため2016年序盤に極端に多数の格下げが行われたと説明した。

ICBCスタンダード・バンクが集計したデータによると、ムーディーズ、フィッチ、S&Pグローバルの3大格付け機関は今年第1・四半期に新興国のソブリン格付けについて、引き下げたか、見通しをネガティブとしたかのマイナス方向の動きが差し引きで62件だった。

だが、この動きは第2・四半期に入って5月末までの時点では13件となり、そのうち12件はアフリカだった。

また新興国企業の格付けは第1・四半期、引き下げ件数が引き上げ件数よりも123件多かったが、この数値は第2・四半期に入ってこれまでのところ40件程度に減少した。

ICBCスタンダードの新興国市場戦略部門ヘッドを務めるデービッド・シュピーゲル氏は最新のノートに「格付け変更の差し引きの件数は2016年いっぱいは引き下げ方向の動きが優勢のまま推移すると予想しているが、格付けの引き下げは底を打ったと考えており、2017年半ばには格下げの増加よりも格付けのプラス方向の動きの方が優勢になるはずだ」と記した。

<2017年に状況好転か>

問題となっている分野は経済成長だ。

UBSの調査によると、新興大国19カ国の経済成長率は先進国の成長率を1.6%上回っているが、2009年には7.5%上回っていた。

だが2014年半ばに下落し始めたコモディティ価格が落ち着くのに伴って、景気減速の動きが底打ちしつつあると示す兆候も出ている。

国際通貨基金(IMF)はロシアが景気後退から脱却すると予想。ブラジル政府は向こう何四半期かのうちに景気が最悪期から持ち直すと見込んでいる。

シュピーゲル氏は、新興国市場における信用の基調的動きは成長と密接に連動する傾向があると指摘。だが「新興国市場の成長の改善は、新興国市場におけるクレジットマイグレーションの状況悪化の終わりを告げる前触れとなるはずだ」と付け加えた。

同氏によると、最近まで問題のある地域とされていたアルゼンチンとロシアでは今年、企業の格下げより格上げの方が多くなっている。

フィッチは最近、アルゼンチンのソブリン格付けを「一部債務不履行(RD)」から「B」に引き上げた。他の格付け機関もこの動きに追随している。

フィッチはまた、ハンガリーの格付けを2012年以降で初めて、投資適格級に戻した。インドネシアの格付けも引き上げられる可能性がある。

<企業>

企業の格付けは一般的には当該国のソブリン格付けよりも遅れて動くという傾向を踏まえ、格付け機関は企業についてはより慎重な姿勢を示している。

S&Pグローバルの債券調査部門を率いるダイアン・バッツァ氏によると、新興の欧州・中東・アフリカ諸国における企業の格付けは「アウトルック」か「クレジットウォッチ」が「ネガティブ」となっているケースが40%を占める。

同氏は、地政学リスクとコモディティ価格に言及したうえで、この比率は「同地域における長期平均の12%を大きく上回っており、今後、短期的もしくは中期的に格下げが増えることが見込まれる」と説明した。

フィッチのデータによると、金融を除く新興国企業の格下げは今年1─4月に前年同期比で3分の1ほど増えている。

それでもICBCのシュピーゲル氏は、最近の格付けデータに「勇気付けられる」という。「最近は格付け機関が実際の基礎的条件の改善に追い付く格好で急速に対応したことを示すシグナルが増えており、差し引きの格付けサイクルにおける(格下げが格上げを上回る件数の)減少がゆっくりしているという当初の懸念が足元では和らいでいる」と話した。

それでもICBCのシュピーゲル氏は、「最近は格付け機関が実際の基礎的条件の改善に追い付く格好で急速に対応したことを示すシグナルが増えている」と指摘し、最近の格付けデータに「勇気付けられる」と話した。

(Karin Strohecker記者)

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