August 28, 2014 / 7:32 AM / 5 years ago

アングル:政策当局内に「輸出回復は困難」の声、企業増益に期待

[東京 28日 ロイター] - 政策当局の間で「想定外」の事態だった今年の輸出の伸び悩みに対し、増勢回復は簡単ではないとあきらめの声が広がっている。生産移転や価格維持戦略、それに人手不足が構造化しているためだ。それでも企業収益は、海外での増益で好調を維持しており、それが国内経済にプラスになるとして、悲観的な声は少ない。

 8月28日、政策当局の間で「想定外」の事態だった今年の輸出の伸び悩みに対し、増勢回復は簡単ではないとあきらめの声が広がっている。写真は東京の港に積まれたコンテナ。5月撮影(2014年 ロイター REUTERS/Toru Hanai)

ただし、国内への収益還元が増えるのか、それが国内賃金へ波及するのか、このシナリオの成否はまだ見えない。

<輸出回復なくても、企業は増益>

今年前半、輸出が低迷を続けたことは、政府・日銀にとって「想定外」の事態だった。世界経済の停滞が続いたことや、海外への生産移転が原因だとみている。

政策当局にしてみれば、消費税引き上げの影響で個人消費に大きな期待を持てない中で、景気拡大のエンジンとして輸出や設備投資の持ち直しを当初は重視していた。もし、輸出と設備投資も弱々しいままとなれば、「クリーンアップ」が沈黙する貧打の野球チームになりかねない。

ところが、意外にもこのところ輸出回復の遅れを嘆く声は、政策当局の内部であまり聞かれない。「貿易赤字が続いても特に問題はない。海外で稼いでいれば所得収支として日本に還元される」──。経済官庁のある幹部は、輸出停滞を悲観するよりも、外で稼ぐ力を強調してみせた。

日銀でも、輸出が回復していない状況の下で、企業から悲鳴の声があまり届いていないことの因果関係を分析しているもようだ。

「企業収益が上がっているので、日本全体で困ることもない」と強気の発言が政策当局者から飛び出す背景には、企業収益が増益を維持していることがある。

確かに、消費増税後の4─6月期は、内需も落ち込み、輸出は金額・数量ともに減少した。だが、企業収益は増益を実現している。東証一部上場企業の経常利益は、前年同期比8.8%の増益(みずほ証券リサーチ&コンサルティング集計)となった。ロイター短観でも、この夏の輸出業種の景況感がリーマン・ショック前に匹敵する高水準となっている。

政府・日銀では、企業が売上数量重視から収益重視に戦略転換したことも要因だと分析。7月末に公表された経済白書では、2007年までの前回の円安時と比べて、昨年来の円安局面で企業が円相場の下落ほどに輸出価格を引き下げていないことを明らかにしている。

<輸出回復を阻む人手不足>

もっとも、楽観的発言の裏には、あきらめも見え隠れする。輸出が回復するにこしたことはないというのが政府・日銀の本音であることは間違いない。

政府関係者の中には「今後の日本経済を民需主導の持続的成長に乗せるには、やはり設備投資と輸出が重要。消費税引き上げがある中で、消費はせいぜい景気を下支えする程度しか期待できない」との見方は根強く残る。

先行き3、4カ月程度に関しては、政府の月例経済報告や、日銀の金融経済月報で、海外経済の回復を背景に輸出が徐々に回復に向かっていくシナリオを維持している。

たとえば、機械受注の外需の受注は4─6月に急増しており、そうした兆しがうかがえ、ある程度の伸びは期待できそうだ。もともと、日本の産業・工作機械はグローバル競争力が強く、為替相場に関係なく、価格設定ができる分野の1つでもある。

一方、輸出を増やしたくとも、人手不足という供給制約の存在が鮮明化している。ある政策当局幹部は「企業は雇用もひっ迫し、設備投資もこれまで絞り込んできた。短期的には、これ以上輸出を増やしにくいという事情もあるだろう」と述べ、輸出回復シナリオに確信が持てない心情をのぞかせる。

8月のロイター企業調査では、毎月のようにパート・アルバイトの時給は上昇が続いている中で「これ以上の人件費上昇には、海外生産強化で対応せざるを得なくなる」(機械)といった声が相次いだ。

また、「期間工が集めづらい」(自動車)「非正規社員が集まらない」(電機)といった状況にあり、思うように生産体制が組めない様子がうかがえる。

<経済白書は方向転換を明言>

それでは、中長期的な観点で、輸出はどうなるのだろうか。経済白書では「輸出数量は増加しにくくなっている」との見方を明確に打ち出した。

大きな要因の1つに、海外への生産シフトの継続という流れがある。今年2月に内閣府が公表した「企業行動アンケート調査」では、海外生産比率は20%から25%以上に拡大する見通し。

白書では、2010年から昨年10─12月期まで海外生産拡大により生産は、1割少なくなったと試算している。

また、円安が進行しても、企業が利益重視戦略をとる中では価格競争力より輸出数量が伸びるといった「Jカーフ効果」もさほど期待できない。

ただ、今回の輸出停滞の要因について、分析が完全に進んだわけではない。世界経済の停滞による影響はどの程度なのか、いったん海外に出た生産設備は100%国内には戻らないのか──。企業が海外で稼いだ利益は、果たして国内の賃上げなどの原資になり得るのか、という点も、来年の春闘を予想する上で、極めて重要なポイントになるだろう。

政策当局幹部の一人は「まだ精査すべきことがたくさんある」としている。

中川泉 編集:田巻一彦

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