May 29, 2014 / 12:17 AM / 5 years ago

アングル:潜水艦めぐる日豪協議、年内の締結視野も課題山積

[東京/キャンベラ 29日 ロイター] - オーストラリアが関心を寄せる日本の潜水艦技術をめぐり、両国間の協議が本格的に前進する可能性が出てきた。防衛装備品の共同開発に必要な、政府間協定の年内締結が視野に入りつつある。エンジンを供与するだけでなく、日本が船体の開発にも関わる案など、具体的な話も聞かれるようになってきた。ただ、日豪ともに国内での調整課題が多く、実際に計画が合意に至るには、なお時間がかかる見込みだ。

 5月29日、オーストラリアが関心を寄せる日本の潜水艦技術をめぐり、両国間の協議が本格的に前進する可能性が出てきた。写真は安倍首相(左)とオーストラリアのアボット(左から3番目)首相。都内で4月撮影(2014年 ロイター/Yuya Shino)

<豪との安保関係を強化>

両国は6月に東京で外務・防衛担当閣僚級協議(2プラス2)を開催、7月には安倍晋三首相がオーストラリアを訪問し、アボット首相と会談する。オーストラリアはかねてから日本の潜水艦技術に関心を示し、両国は実務者級の協議を進めてきたが、この2つの会合を通じて話し合いが一気に進む可能性が出てきた。

日本の政府関係者によると、潜水艦を念頭に、防衛装備品の共同開発に必要な政府間協定を年内に締結することも視野に入れているという。

アジア太平洋地域で中国が台頭し、米国の存在感低下への懸念も意識され出している中で、日本は防衛装備品の輸出や共同開発を通じ、オーストラリアとの安全保障関係を強化したい考え。「オーストラリアはアジア太平洋地域で最も相互依存が進み、信頼できる国のひとつ。防衛技術を供与できない理由が見当たらない」と、別の関係者は言う。

日本は4月に武器の禁輸政策を見直し、一定の条件を満たせば輸出や他国との共同開発を認める防衛移転三原則を導入した。第一号の主要案件は新明和工業(7224.T)の救難飛行艇「US2」のインド輸出とみられていたが、「オーストラリアとの協議の方が、追い越してしまうかもしれない」と、前出の政府関係者は話す。

<条件に最も合う日本の潜水艦>

ディーゼルエンジンが推進力の潜水艦6隻を配備するオーストラリアは、2030年代初めまでに代替を計画。長い海岸線の警戒活動を強化するため、現在の「コリンズ級」より大型の排水量4000トンクラスを導入することを考えている。

ドイツやスウェーデンなど複数国の潜水艦が候補に上がる中、オーストラリアが目を付けたのは川崎重工業(7012.T)と三菱重工業(7011.T)が手掛ける、日本の「そうりゅう型」。ディーゼル、4000トンクラスという条件に唯一合致する。

オーストラリアは静音性と長期間の潜航能力に優れるエンジンにとりわけ関心を示しているが、同国には潜水艦の建造能力がない。複数の関係者によると、船体の設計や建設に日本がかかわる案も浮上しているという。

オーストラリア側からはオースタル(ASB.AX)などの造船メーカーや、潜水艦を維持管理している政府系のオーストラリア潜水艦企業体、同国の防衛産業とつながりが強い英BAEシステムズ(BAES.L)などが参画する可能性があると、業界関係者は話す。

<中国か日本か、岐路に立つオーストラリア>

しかし、実際に両国のメーカーが計画に着手するまでには難航が予想される。第三国へ輸出する際に事前同意を求めるなどの政府間協定は、あくまで防衛装備品の共同開発を可能にするための枠組み。それが締結されて初めて、具体的な案件について検討を開始する。

日本は防衛装備品の輸出ルールを見直したとはいえ、いきなり潜水艦という武器性の高い装備品を他国に移転することに対し、国内で反発を呼ぶ可能性がある。

また、機密性の高い潜水艦の技術を提供することには、自衛隊の中で慎重論もある。日本自身が潜水艦の増強を進めているため、オーストラリアに協力できる技術者の不足を懸念する声もある。

「速く進めていくのは難しい。徐々に協力を拡大していかざるを得ない」と、日本側の関係者は言う。

一方のオーストラリアでは、380億米ドルと試算されるプロジェクトをどう国内経済の活性化につなげるかが課題として浮上している。エンジンだけを日本から調達し、雇用創出のため建造は独力でやるべきとの声もある。

さらに、経済的な結びつきが強い中国との関係が計画に影を落とす。親中だった前政権と打って変わり、昨年9月に就任したアボット首相は日本寄りで、4月の訪日時には安倍晋三首相との親密ぶりをアピールした。

だが、1995年から2000年まで国防副次官を務めたオーストラリア国立大学のヒュー・ホワイト教授は「潜水艦のような機微な技術で日本と組むと、日豪同盟への布石だと中国から警戒されるリスクがある」と話す。「30年後の日本がどのような国になっているか、オーストラリアには賭けだ」。

久保信博、ティム・ケリー、マット・シーゲル 編集:田巻一彦

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