December 16, 2014 / 8:32 AM / 5 years ago

アングル:踏み込んだ賃上げ要請、消費低迷で苛立つ政府の「アメとムチ」

[東京 16日 ロイター] - 政労使会議での今年の賃上げ合意は、秋以降も消費が停滞していることへの政府の苛立ちを表すかのように、昨年より踏み込んだ表現となった。政府内には、法人税減税の約束にもかかわらず、企業の賃上げや設備投資への動きが鈍いとの思いがあるためだ。

 12月16日、政労使会議での今年の賃上げ合意は、秋以降も消費が停滞していることへの政府の苛立ちを表すかのように、昨年より踏み込んだ表現となった。2010年8月撮影(2014年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

ただ政府主導の賃上げ要請の繰り返しは、本来のあり方ではない。生産性向上への労働市場改革や賃上げルール作りへの取り組みが伴わなければ好循環につながらないことは明らかだ。

<企業に向かう政府の不満、賃上げと設備投資が不足>

「経済界には、来年春の賃上げに最大限の努力を図っていただけるように要請したい」──安倍晋三首相は16日、政労使合意を受けてこう述べた。今回の政労使での合意は、賃上げについて「最大限の努力を図る」と明記。昨年の「労使は(中略)十分な議論を行い、企業収益の拡大を賃金上昇につなげていく」との文言より踏み込み、政府サイドの強い意向をにじませるトーンとなった。

背景には、企業に対する政府の苛立ちもあったようだ。12月になっても消費停滞感が続く中、政府高官の一人は「賃金が物価に追いついていないし、魅力的な商品が出てこない」と指摘、デフレ脱却に向けて思うように景気が動かない原因は、企業行動の鈍さにあるとの認識を示していた。

というのも、政府は、賃上げを伴う好循環を実現するために、来年度からの法人税減税を決定し、企業の懐を直接温めることにした。しかし、物価上昇に見合って名目賃金の引き上げが実現していかないのではないか、という不満が政府内に蓄積していたようだ。

さらに、新商品開発のための設備投資にも積極姿勢が足りないために、消費者が動かない、だから消費が停滞している、という見立ても浮上。「アメとムチのはずが、アメだけもらって動いていないじゃないか」といった声も一部に漏れ聞こえていた。

<収益次第、が企業の基本姿勢>

もっとも経済界にしてみれば、賃上げは収益次第との基本的な認識がある。昨年度は大企業も中小企業も2ケタの大幅増益となり政府の要請に答えて賃上げを実施する余裕があった。しかし、15日発表の日銀短観によれば、今年度の経常利益見通しは大企業でも1%台、中小企業は減益見通しとなっている。

今年4月の春闘での賃上げ率は2.07%(連合まとめ)と 15年ぶりの高水準になったが、ロイター調査によると、来年春闘でそれと同程度ないし上回る賃上げができるとの回答は、11月時点で3割にとどまっている。

回答企業の中には「消費増税の社員の負担を緩和する必要がある」(運輸)として昨年並みの賃上げを実施するとしている企業もあるが、「先行きを含めて経営環境の好転が見えなければ再度の引き上げは難しい」(精密機械)など業績次第との方針で臨む企業がほとんどだ。

甘利明経済再生担当相も、今年の政労使会議を開催するにあたり「毎回賃上げを要求する会議ではない」と述べ、今年は働き方改革などに力を入れ、労働生産性を上げることで好循環につなげる方針を示していた。

それでも政府が賃上げ要請に動いた背景の一つには、今年新たに経団連会長に就任した榊原定征氏が政労使会議に加わり、賃上げに前向きな姿勢を表明したことがありそうだ。さらに、労働分配率は13年度の収益拡大もあって低下しており、「昨年並みの2%の賃上げ体力はありそうだ」(日本総研調査部長の山田久氏)との分析もある。

また、消費増税を先送りしたことで、2017年4月までに消費税を引き上げられる環境を作らなくてはいけないという認識もある。甘利明経済再生担当相は「残されている時間はあと2年半しかない。できるだけ短期間で、できれば来年の賃上げで実質賃金をプラスにもっていけるのが理想だ」と語る。

<賃上げ要請繰り返しても好循環につながらず>

ただ、こうして政労使会議で賃上げ要請をとりまとめることは本来の姿でない上、それだけでは好循環にもつながらないのは誰の目にも明らかだ。

山田氏は「本来は、労使が、これまでの賃下げという縮小均衡では企業の成長はないことを自覚し、自ら賃上げが必要との認識で臨むべき」と指摘。そのうえで、「政府の役割は賃上げ要請ではなく、労働市場改革や規制緩和、そして賃上げが生産連動で上がる仕組み作りだ」と主張する。

甘利担当相は16日の会見で「単純に賃上げ交渉に政府が介入したという意味ではなく、賃上げが好循環を回す最初のギアであるという点も含めて、立ち入った要請をした」と説明。デフレ脱却へ向けた経済の好循環を作るには「それぞれが何をすべきかということを覚悟し、共有することが大事だ」とし、賃金体系のあり方や働き方などへの取り組みも重要との認識を示している。

中川泉 編集:石田仁志

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