[香港 26日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 中国のコンドーム需要の急増は、ビジネス界には良いニュースかもしれないが、政府にとってはそうでもないようだ。
中国の製薬会社と地元の投資会社が、世界2位のコンドーム・メーカーを6億ドル(約670億円)で買収する。中国人カップルは、セーフ・セックスに、より多くのおカネを使うようになっており、この投資は報われるかもしれない。一方で、中間所得層にもっと子供を産むよう奨励している中国政府が直面する困難も示している。
25日、中国の人福医薬集団600079.SSとCITICキャピタル・チャイナ・パートナーズが、豪ゴム製品大手アンセルANN.AXのコンドーム部門を共同で買収すると発表。モルガン・スタンレーの推定では、買収価格は、昨年の利払い・税・償却前利益(EBITDA)の16倍近くに上り、比較的割高だ。だが人福医薬集団の関心は理解できる。
調査会社トランスパレンシー・マーケット・リサーチ社の予測では、中国のコンドーム産業は年率12%で成長し、2024年には売上げ規模が年50億ドルに届く見通しだ。
これは、社会の意識が大きく変化し、楽しみのために性行為を行うようになったことが大きい。
かつてお堅かった中国の街中に、セックス玩具の店が堂々と店を構え、コンビニエンスストアのレジ横には、コンドームとバイブレーターが並べられている。アンセルのコンドームブランド「ジスボン」は、北京語の発音が「ジェームス・ボンド」に近いだけでなく、高品質とみられている。人福医薬集団は、巨大な成長の伸びしろを獲得することができるかも知れない。
だが、すでに企業の海外買収に懸念を抱いている中国政府側は複雑な心境かもしれない。家族計画の方法として、コンドームより歴史的に多用された中絶は、病気の拡散につながった。一方で、避妊手段が普及すれば、子供の数が減りかねない。
他の東アジア諸国と同様、中国の出生率は、人口再生産に必要とされる「女性1人あたり2.3人」を大きく下回る。1979年に導入された1人っ子政策に加え、男子を好む文化的背景もあって、中国は、労働力と出産適齢女性の不足という問題を抱えるようになった。2030年までに、人口の4分の1が60歳以上になるとみられている。
中国は1人っ子政策を2015年に転換。トランスパレンシーによると、売上が急減したコンドームメーカーもあった。だが、業界壊滅の心配は大げさだった。多くの女性は、子供は1人か、産まない選択をしている。2016年の出生数は7・9%増加し、130万人増えた。だが政府が予測した年間300万人増には遠く及ばない。
これは、ベビー・ブーム到来を予測して乳業メーカーなどに投資した投資家には残念なことだ。だが、人福医薬集団とっては良い傾向といえる。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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