February 24, 2019 / 12:13 AM / in 25 days

アングル:気候変動の解明なるか、南極の「棚氷」に挑む科学者

[キングジョージ島(南極) 15日] - チリ南端から数百キロ、南極の端に位置するこの島の観測基地で、科学者が氷の採取に精を出している。気候変動から、がんの治療法まで、さまざまな課題への手がかりを見つけようというのだ。

2月15日、チリ南端から数百キロ、南極の端に位置するこの島の観測基地で、科学者が氷の採取に精を出している。2日、キングジョージ島の氷河を観測するチリ南極研究所の観測船(2019年 ロイター/Fabian Cambero)

キングジョージ島にあるチリのエスクデロ基地を拠点に、さまざまな国からやって来た科学者300人以上が、凍てつく寒さに耐えながら南極点までの広大な範囲で採取にあたっている。

チリ南極研究所(INACH)は、南極に自生する植物から見つかった「アンタルティーナ」と呼ばれる生体分子の研究を支援している。初期段階の研究では、ネズミを使った実験で、大腸や肝臓や胃がんの治療に効果がみられたという。

また、アルツハイマー病の治療に使える可能性がある地衣類や、牛乳からラクトースを取り除く酵素、レタスの生育を促進する効果がある別の酵素なども研究している。

今月には、多国籍の科学者チームが、地球温暖化との関連が指摘されている棚氷分離の原因調査に出発した。

2017年に、カリブ海の島国トリニダード・トバゴの国土に匹敵する大きさの巨大氷山が棚氷から分離し、船舶事故や海面上昇などへの懸念が広がった。

「棚氷を侵食する海水温上昇の原因については、さまざまな仮説が出されている。水の動きや排水についての仮説もある」

科学者チームを率いるニュージーランドの氷河学者シェリー・マクドネル氏は、影響が出ている氷山の1つに向けて出発する準備をしながら、こう話した。

マクドネル氏の研究チームは、棚氷のどの箇所でいつ分離が起きるか予測可能にすることを目標にしている。

この研究で、今後数十年にわたり南極大陸の地形図の作成を容易にし、島国や沿岸国が海面の上昇に備えることを可能にしたいと願っている。

「南極のエコシステムについては、今後の温暖化の展開と同様、早急に研究されるべき分野が数多く残っている」。INACHのマルセロ・レッペ所長はこう話す。

<氷の壁>

棚氷は、南極の氷が海に拡散するのを防ぐ壁の役割を果たしている。氷山の分離は数世紀単位で起きているが、近年では分離の頻度が上昇している。

1月に発表された研究によると、南極から分離した氷の量は、2009─2017年は年間2520億トンで、1979─1990年の同400億トンから増加している。

「過去にも巨大な氷山が分離したことはある。だが、そうした分離が段階的に起きたものか、それとも現在われわれが観測している分離のように瞬間的に起きたのかは分かっていない」と、マクドネル氏は説明した。

チリの観測基地がある南極半島は、氷の溶解の影響を最も受ける地域の1つとして注目されている。科学者らは、海に露出している部分が大きいためとみている。

「温暖化とこうした氷山の崩壊(の相関)プロセスを示す、長期的な傾向がある」と、マクドネル氏の研究チームに参加するチリの氷河学者フランシスコ・フェルナンドイ氏は言う。

オランダやその他数カ国の島国などが、研究結果を待ち望んでいる。グリーンランドや南極を覆う氷が全て解ければ、海面が10メートル上昇し、これらの国が水没すると、INACHのデータが示している。

<氷を読む>

マクドネル氏とそのチームは、航空機や船、ヘリコプターやスキーを使い、モラー棚氷への長い旅に出発した。モラー棚氷自体も、昨年末に長さ1.6キロの氷山を失っている。

南極は夏だが、チームはブリザードや零下の気温を乗り越え、間もなく訪れる冬の前に2週間かけてさまざまなサンプルを採取する。

レーダーを使って氷山の大きさを計測するほか、氷床コアの採取も行う。これを使えば、過去の大気の状況などを推定することができる。

氷床コアは、チリ中部にある専門の研究機関に運ばれ、マイナス20度に保たれた研究室で分析される。

チームに参加する科学者は、将来的な氷の溶解モデルを作り上げ、それが気候変動に対応するための各国の合意の土台となることを願っている。

キングジョージ島の氷河。2日撮影(2019年 ロイター/Fabian Cambero)

「われわれには政治的な決断はできないが、シナリオを予測することはできる。もし気温が上昇、または現状維持や下落した場合、それぞれのケースでどういうことが起きるかを推測できる」と、前出のフェルナンドイ氏は話す。

「それがわれわれができる貢献だ。決断そのものは、別の次元の話だ」

(翻訳:山口香子、編集:伊藤典子)

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