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コラム:反ユダヤ主義が顕在化しているのはなぜか
April 19, 2017 / 1:20 AM / 8 months ago

コラム:反ユダヤ主義が顕在化しているのはなぜか

John Lloyd

 4月14日、最近になって顕在化する反ユダヤ主義的な言動は、一時的な苛立ち、それとも無理解、あるいは単なる無知からくるものなのだろうか。写真は2014年9月、ベルリンで行われたユダヤ人差別に反対する大規模集会の開始を待つ男性(2017年 ロイター/Thomas Peter)

[14日 ロイター] - 西側諸国の政府はすべて反ユダヤ主義を否定している。だが、古くからの嫌悪はまだ生き残っている。その有害性はどの程度のものなのか。最近になって顕在化するユダヤ人差別的な言動は、一時的な苛立ち、それとも無理解、あるいは単なる無知からくるものなのだろうか。

スパイサー米大統領報道官の場合は、ひいき目で見れば、最後の「単なる無知」に該当することになろう。11日の記者会見で飛び出した「ヒトラーは化学兵器を使用しなかった」という彼の発言は、激しい怒りを招き、ただちに謝罪する結果となった。

スパイサー氏が言いたかったのは、ヒトラーが化学兵器を爆弾として航空機から投下しなかったという意味だ。これは正しい見解であり、マティス国防長官も当日述べている。しかし、ナチスは強制収容所で「ジクロンB」を使用している。ヒトラーが戦場における化学兵器の使用を自制したのは、戦術的な理由によるものかもしれない。

スパイサー報道官の視野がもう少し広ければ、彼はアサド大統領とヒトラーを比較することを慎んだろうし、ナチスがどこで誰に対して化学兵器を用いたかを明示しただろう。だが、彼のコメントは必ずしもレイシズム(人種差別・民族差別)を示すものではない。

とはいえ、同報道官が仕える政権は、1月27日の「ホロコースト犠牲者を想起する国際デー」に向けた声明のなかで、ユダヤ人について言及しなかった。バノン首席戦略官兼上級顧問は、いわゆる「オルタナ右翼」を支持していることで、反ユダヤ主義者であるとの批判が絶えない。

一方で、トランプ大統領の娘イバンカさんとその夫のジャレド・クシュナー氏はユダヤ教徒だ。この夫妻の存在によってホワイトハウスの反ユダヤ傾向は緩和されていると見られている。

英国における最近の反ユダヤ主義の高まりを見ても、その現状が特に明確になってくるわけではない。労働党の重鎮で元ロンドン市長のケン・リビングストン氏は、「ヒトラーはシオニストだった」という主張を繰り返してきた。つまり、ヒトラーがイスラエル建国を支持していたという意味だ。この主張はかなり徹底的に反証されており、反ユダヤ主義に基づいていると考える人が多い。

これが「単なる間違い」ということがあり得るだろうか。リビングストン氏は、反ユダヤ主義的な傾向を否定している。彼は党員資格を1年間停止された。労働党議員や党員の多くは、この処分を甘すぎると感じており、トム・ワトソン副党首はこの処分に強く抗議し、除名がふさわしいと主張している。

こうした対立は、あらゆる西側諸国の左派勢力に見られる分裂を露呈している。一方の側には、イスラエルこそ中東における最大の問題であると考え、イスラエルの打倒を誓うヒズボラやハマスといった組織に対し、程度の差こそあれ共感を示す勢力がある。

もう一方には、入植などの政策について現在のイスラエル政府を非難しつつも、ユダヤ民族国家の存続を支持する人々がいる。

現在の労働党党首であるジェレミー・コービン氏は前者のグループに属しており、イスラム教シーア派武装組織ヒズボラやイスラム原理主義組織ハマスの双方を「友人たち」と呼んだこともある。ただし後に、こうした表現について後悔を表明している。

フランスは、西側諸国のなかで最もユダヤ人に対する攻撃や迫害が広がっていた国だが、前党首ジャンマリー・ルペン氏の時代にはきわめて反ユダヤ色が強かった極右政党「国民戦線」が、娘のマリーヌ・ルペン氏のもとでその傾向を一掃したのは朗報に思える。

だが、本当にそうだろうか。

最近の報道では、仏極右政党「国民戦線」を率いるルペン党首の側近、フレデリック・シャティヨン氏が積極的な反ユダヤ主義者であると指摘されている。こうした報道は、国民戦線が基本的には変化しておらず、変化できない兆候だと受け止める人もいる。今なお党員の多くが、真実を主張した人物としてジャンマリー氏に敬意を払っているためだ。

ルペン氏が大統領に当選するようなことがあれば、フランス在住のユダヤ人の懸念は高まり、イスラエルに移住する人が増えるだろう。反ユダヤ主義に基づく事件や攻撃に最も積極的な反対キャンペーンを行っている雑誌バニティ・フェアが掲載した記事は、引退した警察本部長がイスラエルに移住したことを伝えている。

中欧では、古くさい嘘が今も健在である。ハンガリーでは極右政党ヨッビクの得票率が約20%に達し、国民の3分の1が反ユダヤ主義を自称する。ポーランドでの最近の調査によれば、ユダヤ人を家族として受け入れないという回答が半数以上、ユダヤ人が隣近所に住むことを好まないとの回答がほぼ3分の1に達した。

たとえホロコースト後に生まれた世代であっても、ユダヤ人ならば、ナショナリズムや社会不安が高まり、ポピュリスト政党が勢力を伸ばす時代は、彼らにとって決して幸運をもたらさないことを知っている。彼らは、リベラルな政治が生き残り、強さが維持されることを頼りにしている。このこともまた、そうあるべき十分な理由の一つだ。

*筆者はロイターのコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

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