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アングル:ジョブズ氏のこだわり甦るアップル新社屋「宇宙船」
2017年2月8日 / 08:29 / 9ヶ月前

アングル:ジョブズ氏のこだわり甦るアップル新社屋「宇宙船」

[サンフランシスコ 7日 ロイター] - スティーブ・ジョブズ氏は、初代マッキントッシュ・コンピューターの内側にチーム全員のサインを刻んだというが、このことは、米アップル(AAPL.O)製品の隠れた細部にも同氏の深いこだわりが詰まっていたことを物語っている。

アップルの共同創業者で2011年に死去したジョブズ氏の「最後の作品」と言えるのが、現在カリフォルニア州クパチーノで建設している新たな本社だ。「宇宙船」と称されるその建物はまさにジョブズ氏へのトリビュートと呼ぶにふさわしいものだ。

斬新な新社屋には、細部への驚くべきこだわりが見て取れる。配線から配管の隠し方まで、約26万平方メートルの同社屋は見どころにあふれている。

しかし、携帯端末と同じくらい完璧に建物を建築することは至難の業だということが、新社屋の建設に関わった約20人へのインタビューから明らかになった。彼らの大半は、アップルと守秘義務契約を結んでいるため、身元を明かすことはできない。

アップルが2011年に建設計画を発表してから、新社屋への引っ越し日は徐々に延期されていった。ジョブズ氏の当初の計画では2015年だったが、関係筋によれば、今では今年の春ごろとみられているという。クパチーノ市との承認手続きに時間がかかっていることも延期の一因だ。

アップルは建築費用の総額を明らかにしていないが、元プロジェクトマネジャーらは、推定約50億ドル(約5600億円)としている。ティム・クック最高経営責任者(CEO)は、2015年に行われたテレビインタビューのなかで、この数字に反論しなかった。元建設管理者によると、主要建物の内装だけでも10億ドル以上が計上されている。

このプロジェクトに投じられた時間とカネにもかかわらず、建築業界からは、アップルが最終的に正しい方向に向かっているのか、疑問の声も上がっている。

カリフォルニア大学バークレー校のルイーズ・モジンゴ教授は、協調を育むため徹底的にオフィスをオープン化する傾向に、この新社屋は当てはまらないと指摘。宇宙船のような巨大なリング状のオフィスビルの運営はチャレンジだと同教授は語る。

「これはオフィス空間の生産性を最大化しているのではない。この世界的企業のシンボルとなる中枢を造っているのだ」とモジンゴ教授は言う。「彼らはアイコンを築いている」

アップルの広報担当者は、本記事についてコメントを差し控えた。

<世界最大の曲面ガラス>

ジョブズ氏が亡くなる数カ月前に発表したこの新社屋建設は、シリコンバレーの建築物において新たな一章を刻むものだ。

2013年のプロジェクト説明によれば、完成した新社屋は最大1万4200人の社員を収容すると書かれている。メインビルディングには世界最大の曲面ガラスが使われており、木々がそれを囲んでいる。

だが、建設プロジェクトに関わった人たちを最も驚がくさせたのは、広大な新社屋の建設を、携帯端末のデザインと同様に扱おうとする同社マネジャーたちの断固とした姿勢だった。

社内の建設チームは多くのルールを設けた。その1つが、換気口や配管がガラスに映ってはいけないというものだった。建物に多く使われる特別な木材に関するガイドラインは約30ページに及んでいた。

同社の鋭いデザインセンスによってプロジェクトは強化されたが、その期待と建設する上での現実が時折衝突することがあったと、設計に携わった人物は語る。

 2月7日、アップルの共同創業者で2011年に死去したジョブズ氏の「最後の作品」と言えるのが、現在カリフォルニア州クパチーノで建設している新たな本社だ。1月撮影(2017年 ロイター/Noah Berger)

「携帯端末の場合は非常にわずかな誤差で設計するが、建物ではそうはいかない。ドアが開かなくなってしまう」

<デザインの原理に忠実に>

新社屋に対するアップルの斬新なアプローチは多くの造形に現れている。

プロジェクトに関わった建築家のジャーマン・デラトーレ氏は、丸い角のカーブといった比率の多くがアップル製品から来ていることに気づいたという。一部の社員はエレベーターのボタンがiPhone(アイフォーン)のホームボタンに似ていると感じており、元マネジャーの1人はトイレの流線型のデザインがアイフォーンのようだと表現した。

だが、アップルの幹部たちはアイフォーン自体を想起させようとしていたわけではなく、造形や空間において理想のようなものを追っていたということが最終的に分かったとデラトーレ氏は言う。

「長年の試行錯誤からデザインの原則にたどり着き、それらに忠実にあろうとしている」

主な信条には、狂信的とも言える細部へのこだわりがあった。

最も悩ませたこだわりの1つは出入り口だった。アップルは少しの段差もなく、完全にフラットにしたかった。建設チームは反対したが、アップル側は断固として譲らなかった。

その理由は、元建設管理者によると、アップルのエンジニアたちが建物に入る際、歩き方を調節しなければいけなくなると、気が散って仕事に支障が出る恐れがあるというものだった。

アップルのマネジャーたちは、何カ月も細部にこだわり続け、プロジェクトの他の部分を遅らせるという連鎖反応を幾度となく繰り返したと、複数の元建設管理者は口をそろえる。

また、標識には絶妙なバランスを要した。アップルはすべての標識に同社の流線的でミニマリスト的美学を反映させたがったが、消防当局は緊急時に速やかに誘導できることを第一としていた。

プロジェクトで同州サンタクララ郡の消防当局を代表しているダーク・マターン氏は、この問題に関連するミーティングに15回は出席したと話す。「標識のことでこんなに時間をかけたのは初めてだ」

完成した新社屋に残されるのはジョブズ氏の指紋だけだろう。作業員はデリケートな原料を損なわないように手袋をはめなくてはいけないこともあったと、塗装関係者の組合の地元責任者であるブレット・デービス氏は語る。

「まるで触ってはいけない絵のようだ。内部に入れるようになったら分かるよ」

(Julia Love記者 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)

*下から2段落目の表現を修正して再送します。

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