May 7, 2014 / 2:17 AM / 5 years ago

焦点:米アップルが医療技術幹部を引き抜き、iWatchへの布石か

[サンフランシスコ 5日 ロイター] - 米アップルはこのところ、バイオテクノロジー業界の幹部を相次いで引き抜いている。同社のこうした動きは、今年下期にも発売されるとみられている「iWatch(アイウォッチ)」といったウエアラブル端末について、同社の計画を占うヒントとなるだろう。

 5月5日、米アップルはバイオテクノロジー業界の幹部を相次いで引き抜いており、医療技術業界では、発売が期待される「iWatch」などで医用生体工学分野に同社が本格的に進出するとみられている。写真はアップルのロゴ。4月撮影(2014年 ロイター)

ビジネス向けソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)のリンクトインのプロフィルを見ると、アップルは過去1年で、医用生体工学の分野で名の知られた専門家を少なくとも6人採用。また、匿名の2人の情報筋によると、ある著名な研究者が2週間前にアップルに移籍したほか、人数は明らかではないものの、同社は医療やハードウエアの専門家も複数採用しているという。

彼らの多くはセンサー技術分野を専門としている。これは、ティム・クック最高経営責任者(CEO)が「爆発」しそうだと昨年指摘していた分野だ。業界関係者は、こうした動きから、フィットネス目的が主流の現在のウエアラブル端末を超えて、血糖値から栄養状態まで全てをモニターできる端末をアップルが見据えていることが見て取れると話す。

アップルは、クックCEOの公約通り新製品を今年発売するよう迫られている。2010年にタブレット端末「iPad(アイパッド)」を発売して以降、同社は新型の製品を世に送り出していない。同社が一連の自社株買いや配当金支払いを発表しているにもかかわらず、株価が過去最高値を依然大幅に下回った水準であるのも、新製品が出ないことへの投資家の不満の表れとみられる。

アップルは、日本では「iWatch」の商標を登録している。また、同社が持つ複数の特許はスマートウオッチ(腕時計型端末)の可能性を示しており、今年2月には歩数を測定したりできるイヤホンの特許を申請した。

モバイル端末を使った医療関連会社の幹部は匿名でロイターに対し、アップルのiWatch担当幹部と最近話したとし、アップルがウエアラブル端末にとどまらず、同社のアプリケーション販売サイト「App Store(アップストア)」をモデルにした、健康・フィットネス分野のあらゆるサービスを提供するプラットフォームを考えていると明らかにした。

この件について、アップルの広報担当者はコメントを差し控えた。

医療技術業界は、アップルがアップストア型プラットフォームを構築し、新興企業にも医療アプリ開発への道が開かれるようになるとみている。

デジタル医療機器分野への投資にも力を入れるクレアモント・クリーク・ベンチャーズのパートナー、テッド・ドリスコル氏は「アップルがこの分野で動きまわっているのは間違いない」と指摘。同社は主に「体表モニター」の分野で専門知識を持つエンジニアの採用に注力しているようだと述べた。

実際にアップルは、バイタル・コネクト、マシモ、サノ・インテリジェンスといった企業から医用生体工学者を引き抜いている。

マシモは指先などにセンサーを装着して動脈血の酸素飽和度を測定する医療機器パルスオキシメーターで有名であり、バイタル・コネクトは心拍や体温といった生体データを管理する機器メーカーだ。

リンクトインの検索からは、マシモのチーフ・メディカル・オフィサーだったマイケル・オライリー氏、バイタル・コネクトのバイオセンサー技術担当副社長だったラビ・ナラシムハン氏らがアップルに移ったことが分かる。

アップルはまた、ウエアラブル端末のセンサーを開発するサノ・インテリジェンスのナンシー・ドーティー氏らハードウエアの専門家も引き入れている。

そして、2人の情報筋によれば、スタンフォード大学の起業支援プログラムの医療版スタートXメッドの開発者であるディビヤ・ナグ氏が、ヘルスケア製品開発のため、アップルの研究開発チームに2週間前に加わった。ナグ氏はコメントを求めるロイターの取材に応じなかった。

こうしたアップルによる引き抜きについて、サノ・インテリジェンスとバイタル・コネクトはコメントを避けているが、マシモはオライリー氏が同社を去ったことを確認した。

<人材を「買収」>

医用生体工学の技術開発を目指す「フューチャーメッド・プログラム」の責任者であるシンギュラリティ大学のダニエル・クラフト氏は、iWatchの最初のバージョンでは、血圧や心拍数などを測定できる機能が搭載される可能性があると指摘。いずれは採血しなくても血糖値を測定・記録できるような端末が発売されるとの見方を示した。

マシモのジョー・キアニCEOは、アップルが引き抜いたなかには、企業の機密情報を入手できた人材もいると指摘。アップルは職務内容をほとんど明らかにせずに相当な額の給料を提示し、人材を「買収している」と語った。

<規制の壁>

一方、アップルがフィットネス以上の機能を持つ端末を目指すつもりなら、規制の壁にぶち当たる可能性がある。ニューヨーク・タイムズ紙は1月、オライリー氏を含むアップル幹部たちが米食品医薬品局(FDA)の高官と面会したと報じた。そのFDA当局者のなかには、モバイル医療アプリ用ガイダンスの草案を作成したバクル・パテル氏もいた。

FDAは昨秋、スマートフォンが医療機器となるような、もしくは規制される医療機器の付属品としての使用が意図されたようなアプリを主な規制対象とするとした。

例えば、肺機能を測定したり、尿を検査したりできるアプリは規制の対象となり得るが、ナイキのフューエルバンドのような活動量などを測定しても医療的なアドバイスはしないものは該当しない可能性がある。

アップルはまた、競合他社のウエアラブル端末が大衆市場(マスマーケット)で失敗しているのを目の当たりにしている。韓国サムスン電子のスマートウオッチ「ギャラクシー・ギア」は批評家から酷評され、消費者の反応も冷ややかだ。

コンサルティング会社エンデバー・パートナーズのリポートによれば、ウエアラブル端末を購入した米消費者の3分の1が、半年以内に端末を使用しなくなり処分している。同リポートは、バッテリー駆動時間やデザイン、実用性や医学的妥当性などが主な課題だと指摘している。ナイキは今月、技術系情報サイト「Re/code」に対し、フューエルバンドに携わる人員を一部解雇したことを認めた。

一方、米グーグルは異なるアプローチを取っている。同社は3月、ウエアラブル端末向けの基本ソフト(OS)「アンドロイド・ウエア」を発表し、アップルに対して先手を打った。アップル同様、グーグルも医療技術分野に関心を示しており、涙から血糖値の測定が可能なコンタクトレンズの開発を進めている。

(Christina Farr記者、翻訳:伊藤典子、編集:宮井伸明)

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