October 4, 2018 / 2:30 AM / 17 days ago

コラム:英国のブレグジット騒動、大荒れの終幕に突入

[2日 ロイター] - もし英国が本当に土壇場で欧州連合(EU)離脱の合意を勝ち取りたいのなら、ハント外相は、EUを旧ソ連と比べるべきではなかった。

10月2日、もし英国が本当に土壇場でEU離脱の合意を勝ち取りたいのなら、ハント外相は、EUを旧ソ連と比べるべきではなかった。英保守党大会が行われたバーミンガムの会場で1日、EU離脱に抗議する女性(2018年 ロイター/Toby Melville)

メイ首相率いる与党保守党の大会で、英国との関係改善に努力しないEUを旧ソ連に例えて批判したハント外相の発言は、案の定、他のEU加盟国の指導者から大きな反発を招いた。そして、恐らくそれこそが外相の意図したところだ。

ハント外相は、次期党首候補の1人とみられている。

ボリス・ジョンソン前外相やトランプ米大統領のように、ハント外相は、過激な発言をすれば関心が集まり、たとえ政府としてやらなければいけないことの実現が困難になったとしても、党内から一定の支持を集められると計算したように見受けられる。

この秋、西側政治のどこに目を向けても、個人や党派の利益のために意図的に政策遂行を妨げている野心的な政治家の姿が目に付く。

ドイツやオーストリア、スウェーデンでの極右の台頭にしてもそうだし、イタリアの難民問題を巡る政治駆け引き、そしてももちろん、米議会においてもその現象が見られる。

こうした政治家は、恐怖や怒り、そして何よりも分断を「武器」にして危機や対立をあおれば、狭いながらも強力な支持を党派や有権者から得て、新たな権力や権威を手にできると考えているのだろう。

問題は、こうしたことに巧みな手腕を持つ政治家がほとんどいないということだ。

政治ニュースや地政学の大渦や、ライバルの陰謀を乗り切らなければならないということは、目論見通りには物事が進まないことを意味する。そして、英国のEU離脱(ブレグジット)ほど、それが真実なことはない。英国は「合意なき離脱」という、さらなる不安定さを招く結末に向かって、後戻りのできない道を突き進みつつあるようだ。

ほんの数週間前まで、ブレグジットは、メイ首相が閣僚と7月に公式別荘「チェッカーズ」でまとめた妥協案に基づく、比較的穏健なイベントとなるように思われていた。

だがその計画はいまや、保守党の大半から拒否され、先月オーストリアのザルツブルグで開かれたEU首脳会議でも否定された。

メイ首相と保守党は今週、合意なき離脱の可能性も含め、より厳しいブレグジットに向かおうとしているようだ。

国境や市場、物流の分断をもたらすそのシナリオは、すでに英国は深刻な経済的打撃を与えている。ある報告書によると、週5億ポンド(約740億円)相当の経済的活動が英国から失われている。だが不確実性があまりに高いため、損害額は劇的に拡大する可能性がある。

今後1年で、欧州統合に懐疑的な保守政権が英国で誕生し、減税や歳出削減でシンガポールのような回避地を目指そうとする可能性は十分にある。また、解散総選挙によって野党労働党が政権を奪還し、富裕層や大企業向けの増税や、大規模公共投資という正反対の政策に踏み切る可能性もある。

EU離脱を巡る国民投票の再実施を求める声も高まっているが、それがどのように実現され得るかについては全く不明瞭だ。

一部には、無秩序な「合意なき」ブレグジットと、ノルウェーやスイスのようにEU域外から緊密な関係を維持する穏健な離脱のいずれかを選択する国民投票を求める声が上がっている。また、離脱を取りやめてEUに残る選択肢も投票用紙に記載すべきとの主張もある。

しかし、投票を繰り返すことなく、これら3つの選択肢をどう有権者に提示できるか、現実的な提案はほとんどない。このような不確実性が高まっているときに、意見の一致をみることは一層困難だろう。

いまやこの問題が、英国の評判だけでなく、国民の生活もむしばみ始めていることは、驚くに値しない。

筆者の世話をする介護者の1人が先月突然辞めたため、いつもの介護機関に電話して代わりの派遣を頼んだ。だが返事は「誰もいない」というものだった。12年前負傷して身体の自由が利かなくなって以来、筆者を支えてくれた若い外国人労働者は、もうやって来ないのだ。

結局、代わりの人を個人的に見つけたが、この構図はすでに、ビジネスや農業、サービス業にヘルスケアなど、経済の大部分を揺さぶりつつある。

ジャビド英内相は2日、離脱後の移民政策について最新のアウトラインを公表し、高スキル労働者を優先する方針を示した。だが、経済の大部分を支えている低スキル労働者をどうするかについては何も発表がない。ここでも、短期的な政治的思惑が政策を動かしているようだ。

こうしたすべてが、どの程度危険なのかは、評価方法によって違ってくる。

極右政党が勢力を拡大し、多文化で開かれた社会の最も基礎的要件を防衛することにさえ苦戦する主流政党に取って代わろうとしている他の欧州諸国と比べると、予見不能な部分が大きいとはいえ、英国で起きていることは警戒度は低いという見方もできる。

そんな事態を英国が回避できたのは、強固な2大政党制のおかげだ。だが米国の例でも分かるように、このシステムにおける政治闘争からは予測もできない事態が飛び出すこともある。

米国では少なくとも、次回選挙の日程が決まっている。英国には、そのような透明性はない。政権が倒れたときに選挙が実施される。そして、メイ首相の保守党が昨年の総選挙(これも失敗に終わった短慮の1つだ)で議会の過半数を失ったため、これはいつでも起こり得る。

希望が持てるとすれば、短期的な問題が何であれ、ブレグジットを巡る一連の騒動で両党の政治が活性化し、英国が本当に重要な問題に集中できるようになることだろう。

だがそこに至るには、大荒れの道のりとなりそうだ。

*筆者はロイターのコラムニスト。元ロイターの防衛担当記者で、現在はシンクタンク「Project for Study of the 21st Century(PS21)」を立ち上げ、理事を務める。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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