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コラム:一貫性なきトランプ外交、就任100日の「成果」
2017年4月27日 / 01:37 / 7ヶ月前

コラム:一貫性なきトランプ外交、就任100日の「成果」

[25日 ロイター] - 今月シリアで化学兵器攻撃が行われた直後、同国の空軍基地を巡航ミサイルで攻撃するよう指示したトランプ大統領に対して、オバマ前政権時代の何人かの高官は公然と感嘆の声を漏らした。

 4月25日、今月シリアで化学兵器攻撃が行われた直後、同国の空軍基地を巡航ミサイルで攻撃するよう指示したトランプ大統領に対して、オバマ前政権の元高官らは公然と感嘆の声を漏らした。写真はワシントンで6日撮影 (2017年 ロイター/Carlos Barria)

「(われわれには)これを48時間では成し得なかっただろう」と元高官の1人は米政治情報サイト「ポリティコ」に語った。

今回の攻撃は、トランプ政権が特に外交政策において内包するパラドックスの1つを、最も顕著に表している。

トランプ政権は混沌とした印象を与えることが多く、米国による北大西洋条約機構(NATO)支持などの話題では、一貫性に欠けるメッセージを出してきた。メキシコ国境の壁建設などで垣間見える大統領の執着や、時に不明瞭な発言スタイルは、同盟国も敵対国にも等しく不安を抱かせている。

だが同時に、特に国家安全保障面において、現政権は多くの人が予想したよりもずっと有効なシステムを作り上げているように見える。

中心的な役割を果たしているのは、米軍の優秀な戦略家として政界で名高いマクマスター大統領補佐官(国家安全保障問題)だ。トランプ政権内で最も成功した外交政策の立役者であり、その影響力はマティス国防長官やティラーソン国務長官をもしのぐと見る人も多い。

シリア政権の化学兵器使用に対する米軍対応を検討した際に、マクマスター補佐官と軍の作戦立案者は、トランプ大統領に3つの選択肢を示したとされる。

最初の案は、シリアのアサド大統領を標的にした「斬首」作戦で、同大統領の宮殿を壊滅させる内容だった。2つ目の案も、複数のシリア空軍基地を攻撃するという、同様に過激なもので、駐留中のロシア人軍事アドバイザーや乗組員に被害が出ることはほぼ確実だった。

こうした案の重大性が、化学兵器による攻撃を担った空軍基地1カ所を攻撃するという3番目の案をトランプ大統領に選ばせたとみられる。米国はロシアに、自国の人員を退去させるのに十分な事前通告を行った。

シリア反政府勢力へ武器や物資支援を拡大はするが、戦況を変えるのに十分な戦闘力は与えないといった、オバマ前政権によるいくつかの混乱した手法に比べると、トランプ政権による1回限りの攻撃は限定的で明確なものだ。

ホワイトハウスとマクマスター補佐官は、今回の攻撃は化学兵器使用に対する報復であり、反政府支配地域で起きている通常兵器による攻撃に米国は介入しないだろう、というメッセージを迅速に発信した。

シリア攻撃は、中国の習近平国家主席がトランプ大統領の高級別荘「マールアラーゴ」を訪問するなかで行われ、大統領が北朝鮮への軍事行動を行う用意があることを示す機会となった。中国政府は、北朝鮮からの石炭輸入をさらに減らし、平壌で行われた軍事パレードに政府高官を参加させないことで、トランプ大統領に応じた。

たとえ北朝鮮が、米国の軍事行動を招くことはないと信じてミサイル発射試験を続ける可能性が高いとしても、このことは米国の戦略的意思発信の勝利と言えるだろう。

だがトランプ氏はすぐにつまずいた。シリア攻撃直後のインタビューで、米国が爆撃したのがどの国か忘れてしまった様子で、ミサイルが「イラクに向かっていた」と発言したのだ。

さらに、朝鮮半島に向かっているはずの「米軍艦隊」についてのメディア向けブリーフィングや声明にも混乱が生じた。シンガポールから韓国方面に航行中のはずの米空母カール・ビンソンが、実際にはアジアの反対側で事前に計画されていたオーストラリア海軍との演習に参加していたことが明らかになったとき、ホワイトハウスは現実を見失ったかに見えた。

トランプ政権は、将来的にこうした不手際を避けることができるようになるだろう。だがより大きな問題は、地政学的な対立が、まだ何一つ改善していないことだ。

アサド大統領は依然シリアで権力を握っており、ロシアが同大統領を見捨てる可能性があるとのマクマスター補佐官らの観測は、これまでのところ実現していない。北朝鮮の兵器開発は前進しており、最近のミサイル発射は失敗したが、平壌のレトリックと軍備は強まる一方だ。

同じことが、アフガニスタンやイラク、リビアやイエメンなど、米国が関与している他の紛争にもあてはまる。トランプ政権下で、米軍によるイラク、シリア、アフガニスタン、イエメンへの空爆は増加しており、多くの場合、民間人の犠牲者も増えている。

ホワイトハウスが最近の軍事行動のすべてを直接指示した訳ではない。アフガニスタンで投下された米軍最強の非核爆弾は大きな話題になったが、地域司令官の決断で使われたたようだ。トランプ政権は、紛争現場における米軍の行動について、細かく管理しがちだったオバマ政権より、制限を減らしているようだ。だがそれはリスクも伴う。

また、政権がどの程度の関心を、より緊急度の低い課題にも向けられるかという問題もある。国務省や国防総省で実務を担う副長官や次官ポストは、まだ埋まっていない。

就任100日で、トランプ政権は、多くの人が予測したよりも巧みな危機対応を見せ、世界への戦略的意思発信に驚くほど熟練していることを示した。しかし、一方で軍事力に頼り、特に空爆やそれによる脅しを、問題解決の最後ではなく最初の拠り所とする不安な傾向も見せた。

これは、中東における個別危機や、もしかすると北朝鮮にも時に有効なアプローチかもしれない。だが間違った方向に行く場合もあり、ロシアや中国との緊張が高まる時代において、壊滅的な結果を招く可能性もある。

*筆者はロイターのコラムニスト。元ロイターの防衛担当記者で、現在はシンクタンク「Project for Study of the 21st Century(PS21)」を立ち上げ、理事を務める。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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