May 10, 2019 / 7:36 AM / 4 months ago

コラム:ファーウェイ騒動、脱グローバル化の「代償」露呈

[ロンドン 8日 ロイター] - 中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の任正非(レン・ツェンフェイ)最高経営責任者(CEO)が同社を創業した1987年当時、彼の目標は極めてシンプルなものにみえた。

 5月8日、中国政府との癒着がささやかれるファーウェイは、米中両政府による地政学的な対立の真っただ中にいる。写真はリトアニアの首都ビルニュスにあるオフィスビル。3月30日撮影(2019年 ロイター/Ints Kalnins)

外国製の電話スイッチや基本的な通信機器をリバースエンジニアリングすることによって、海外の競合他社よりも安く売ることが可能となり、世界市場でトップに立つという計算だ。

創業からの30年は、その戦略がうまく機能しているようだった。2011年までにファーウェイは170カ国以上で業務を展開、世界の通信企業上位50社のうち45社に対して機器やサービスを提供し、地球人口の3分の1にまでそのリーチを広げた。

しかしここにきて、同社の戦略が明るみになった。

中国政府との癒着がささやかれる同社は、米中両政府による地政学的な対立の真っただ中にいる。さまざまな形で中国のためのスパイ工作をしていると非難されているだけでなく、2018年には任氏の娘、孟晩舟(メン・ワンツォウ)最高財務責任者(CFO)が米国の要請でカナダで逮捕された。国際的な金融機関を欺いたとして米当局に起訴されており、身柄引き渡しを巡り係争中だ。

その真相がどうであれ、ファーウェイは多くの国にとって、採用するには物議を醸すだけでなく、信頼度も低い企業となってしまった。

ファーウェイは不正を強固に否定し、同社にはいかなる中国政府の干渉もないと主張している。しかし、多くの観点から見て、もはや問題はそこではない。

一連の訴訟と政治的危機をもたらした今回の騒動は、自由なグローバリゼーションによって繁栄したすべての企業が直面する、より大きなトレンドを浮き彫りにしている。

国際的な不信や地政学的な緊張が高まる状況において、大企業が、幅広い法域で政治的逆風にさらされずに世界的に活動することは、もはや困難になりつつある。

<疑惑と不信感>

この新たな「不信の時代」の負け組となる企業は、ファーウェイが最初ではない。特に、スパイ工作やサイバー戦争に対する苛立ちが募るテクノロジー業界においては、ロシアや中国の企業が、他国から疑惑の目を向けられる羽目に陥ることを意味する。

このトレンドの犠牲となったもう1つの大企業は、ロシアの情報セキュリティー会社カスペルスキー研究所だ。

以前旧ソ連の国家保安委員会(KGB)とかかわりのあったユージン・カスペルスキー氏と妻のナタリヤ氏が1997年に創業した同社は、消費者向けITソフト市場で世界3位だった。

しかし2017年には、ロシア政府との癒着や国家安全保障上のリスクを懸念した米国政府が、政府機関における同社製品の使用禁止に踏み切った。

ファーウェイ同様、カスペルスキーも自社の独立性を主張し、海外の個人ユーザーを安心させるため、多くのサーバーをモスクワからスイスへ移動した。

しかしこうした施策には、被害を抑える程度の効果しかない。結論として両社とも、創業地というたった1つの判断材料をもって、ますます多くの人から信頼できないとのレッテルを永久に貼られてしまう。

このようなトレンドが発生する兆候は以前からあった。一部の企業、特にロシア国営のガス生産企業ガスプロムなどは、これまでも国家権力の手先だとみなされてきた。

当時との違いは、今やロシアと中国の企業は一目で怪しまれてしまうことだ。ビジネス開拓ができなくなるわけではないが、彼らとの取引は以前にも増して論議を呼ぶだろう。

イタリア、ギリシャ、そして規模は小さいがドイツなど一部の欧州諸国では、地中海の港湾などのインフラ事業に対して出資を強化している中国企業とのビジネスに積極的だ。一方、英国などの政府は、いまだに対応を決めあぐねている。

<情報漏えい>

ファーウェイに対し次世代通信規格「5G」ネットワーク構築への参入を制限付きで認める方針をとする英国家安全保障会議の討議内容を漏らしたとして、メイ英首相はウィリアムソン国防相を1日解任した。

メイ首相はファーウェイを排除しない方針だが、その決め手は経費削減につながるという理由だけではなく、中国とのビジネスチャンスにつながるからだろう。しかし、国際情勢が悪化し続ける中、その方針を維持できるのか疑問は残る。

アフリカや中南米、中東の国々は、この論争にとらわれず、欧米と提携しながら中国の出資を受け入れることができる。しかしロシアや中国への対立色を強めている東南アジアや欧州北部では、選択肢が急速に狭まっている。

これまでは欧米、ロシア双方と良好な関係を維持しようとしていた北大西洋条約機構(NATO)加盟国のトルコも、ロシア製ミサイル防衛システム「S400」を購入するのか、米国からの出荷が停止されている最新鋭ステルス戦闘機「F35」を受け取るのか、早急な選択を迫られている。

米政府はF35の機密情報がロシアの手に渡る可能性を懸念しており、トルコに対し両方購入することはできないと明言している。米国防総省はまた、中国で事業展開する自国のIT企業の存在が、人工知能(AI)などの分野で中国政府に恩恵を与える可能性につながるとして批判している。

このような状況下で、英国のようにファーウェイを使い続ける試みは今後難しくなるだろう。機密情報を共有する「ファイブ・アイズ」に属する米国、オーストラリア、ニュージーランドはファーウェイの技術を使わないことを決定しており、英国が異なる方針を選択するのであれば協力関係にひびが入る恐れがあると警告している。

すでに、これまでのインフラ事業におけるファーウェイ技術のセキュリティを批判する複数の内部リポートも出回っている。最終的には、こうした複雑な情勢によって、コストが安くなるとしても、英国でファーウェイが展開すること自体が難しくなるだろう。

国家間の緊張が高まる中、潜在的な敵を国の基幹インフラ事業から排除することは欧米諸国にとって理にかなったことだ。

それでも、国境を越えた投資とグローバリゼーションは、ロシアや中国企業に対して欧米諸国とのつながりを深めるよう奨励することを含め、これまで国際平和の大きな拠り所の1つだと考えられてきた。

今やそれを容認できない流れになっていくのだとすれば、今後、憂慮すべき影響が出てくるかもしれない。

*筆者はロイターのコラムニスト。元ロイターの防衛担当記者で、現在はシンクタンク「Project for Study of the 21st Century(PS21)」を立ち上げ、理事を務める。2006年にスリランカの内戦を取材中に交通事故に遭い四肢がまひしたため、国際情勢やグローバリゼーションのほか、身体障害についてもブログを書いている。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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