November 14, 2018 / 7:12 AM / a month ago

コラム:世界で存在感薄れる米国、蘇る「100年前の教訓」

[12日 ロイター] - トランプ米大統領にとって、米中間選挙後初の外遊先となった仏パリの陰うつな天候は、世界の外交を取り巻くムードを映し出している。

 11月12日、トランプ米大統領(写真の右から6番目)にとって、米中間選挙後初の外遊先となった仏パリの陰うつな天候は、世界の外交を取り巻くムードを映し出している。写真は11日、パリで行われた第1次世界大戦の休戦100周年を記念する式典に参加した各国首脳。代表撮影(2018年 ロイター)

第1次世界大戦の休戦100周年を記念する式典に11日参加したトランプ大統領は、精彩を欠いた様子だった。その前日には、悪天候と混雑を理由に米戦没者が眠るパリ郊外の墓地訪問予定を取り止めたことで、多くの欧州市民の神経を逆なでした。

トランプ大統領のこうした態度は、6日実施の中間選挙で与党・共和党が下院での優位を失ったことに対するいら立ちなのかもしれない。とはいえ、共和党は上院では勝利を収め、民主党にはトランプ氏を脅かす明確な有力候補が見当たらないことを考え合わせると、少なくとも現時点では、2020年大統領選におけるトランプ再選という可能性を世界各国は受け入れざるを得ないというのが現実だ。

欧州やその他の指導者は、米国の心底からの支持を得られない世界が続くことを覚悟しなければならない。米国大統領とのあいだで、これまで以上に険悪な協議が重ねられ、どちらにとっても互いの嫌悪感を隠すことがさらに困難になるだろう。

今回のパリ式典で、トランプ大統領とホスト役のマクロン仏大統領、メルケル独首相とのあいだに見られた「分断」は、きわめて印象的だった。マクロン氏が「ナショナリズム」に対する批判を展開し、驚くほど露骨にトランプ氏とその世界観を攻撃する演説を行うあいだ、トランプ氏はもっぱら仏頂面のまま座っていた。

少なくとも笑顔と握手という基準で判断する限り、今回の各国首脳の顔合わせで最も楽しそうだったのは、トランプ氏とロシアのプーチン大統領の会談だ。現在の米国指導者は、強権的な独裁者を相手にする方が、より民主的で中道的な人物と対峙するよりも、はるかに居心地良く見えることを改めて印象づけた。

7月ヘルシンキで行われたプーチン大統領との熱意あふれる首脳会談と同様に、今回の様子からも、2016年米大統領選におけるロシア介入疑惑を巡る公式捜査が行われようと、トランプ氏がプーチン氏との接し方を変えるつもりがないことが窺われる。

フランスでの世論も、トランプ大統領は特に気にならないようだ。 式典会場からのツイートを見ても、トランプ氏はあいかわらず、少なくとも海外のイベントと同程度の関心を米国政治に注いでいる。西側諸国のリベラルな政治家に喧嘩を仕掛け、争い続けても、自らの共和党支持基盤に打撃を与えることはないと十分承知しているようだ。

マクロン大統領やカナダのトルドー首相など、トランプ批判の急先鋒に立つ首脳たちも、そうすることで自らの支持基盤にアピールしていることをトランプ氏は分かっているのだ。

だが、これはやがてトランプ氏にとって、より大きな問題となるだろう。彼や彼の支持者の多くが抱いている保護主義的な衝動にもかかわらず、トランプ政権が何か国際的な影響力を発揮するには他の主要国と協力する必要があるためだ。さもなくば、中東から東南アジア、サブサハラ・アフリカ、中南米など、世界のほとんどの地域において、米国は必然的に自身の影響力低下を目の当たりにすることになる。

今回の記念式典は、トランプ、プーチン両氏が、欧州の主流派とかけ離れた異色の存在だということを示すだけにとどまらなかった。非常に優れたショーマンシップを誇るマクロン大統領は、米大統領とは異なる、はるかに国際主義的な世界観の旗手としての自分をアピールする場としてこの週末を演出した。

ただ現実には、欧州大陸においてでさえ、トランプ氏が本当に異色の存在なのか問われるだろう。アルゼンチンで今月開催される20カ国・地域(G20)首脳会合において、最も孤立し、「蚊帳の外」の存在となるリスクがあるのは、マクロン大統領やメルケル首相、トルドー首相など西側諸国の進歩主義的な西側指導者だ。

G20会議には、トランプ流の攻撃的なナショナリズムを急速に取り入れ、独立メディアやマイノリティを攻撃する首脳も集まってくる。ブラジルで新たに就任するブラジルのボルソナロ大統領もそのリストに名を連ねるほか、インドのモディ首相、トルコのエルドアン大統領、そしてもちろんプーチン氏や中国の習近平国家主席も参加する。

もっとも彼ら同士の足並みがそろうかは、また別の問題だ。G20は単に、彼らのあいだの相違を際立たせる結果になるのかもしれない。

中国と米国は貿易紛争の最中であり、トランプ大統領は米議会の反対によってロシア政府に過度に接近することが難しい。G20各国の見解にはばらつきがあるため、トランプ大統領が欧州・カナダからの反対を受けて孤立した今年のG7が再現される可能性は低いものの、新たな外交上のさや当てが展開されるチャンスも大きい。トランプ氏も、今回は少なくとも一時的な味方を見つけられるはずだ。

だが、今回の記念式典で得た包括的な教訓は、米国の存在感低下だ。実際のところ、トランプ大統領がまったく姿を見せなかったとしても、パリの式典はほとんど何の影響もなかっただろう。

気掛かりなのは100年前に起きた似たような出来事だ。米国が国際連盟に参加しなかったことで、第1次世界大戦という破局的な戦争を経て、誕生したばかりの国際システムは弱体化した。それからたった20年で、世界は次の大戦に突入してしまった。恐らく動きがもっと速くなっている21世紀において、これは警戒すべき連想だろう。

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*筆者はロイターのコラムニスト。元ロイターの防衛担当記者で、現在はシンクタンク「Project for Study of the 21st Century(PS21)」を立ち上げ、理事を務める。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

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