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コラム:武田薬品のアリアド買収額は払い過ぎ

[ニューヨーク 9日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 日本企業は海外企業の合併・買収(M&A)で法外に高い金額を支払う傾向がある。武田薬品工業4502.Tによる米バイオ医薬品会社アリアド・ファーマシューティカルズARIA.Oの買収もその例外ではない。

 1月9日、日本企業は海外企業の合併・買収(M&A)で法外に高い金額を支払う傾向がある。武田薬品工業による米バイオ医薬品会社アリアド・ファーマシューティカルズの買収もその例外ではない。写真は2009年7月都内で撮影(2017年 ロイター)

支払総額は52億ドルにも上り、1株当たりの買収額は75%のプレミアムを乗せているが、アリアドのがん治療薬の市場規模は「そこそこ」という程度だ。

武田薬品をはじめとする日本の医薬品メーカーは苦境にある。これまでは欧米で開発された治療薬の販売活動を時折自前の工夫で補う形で、何十年も居心地の良い市場を謳歌してきた。しかし最近は安価なジェネリック(後発医薬品)の登場による競争激化のため、日本市場の収益性は低下している。また日本メーカーは、多額の研究開発投資を新薬につなげる難しさを世界の最大手と共有する規模になっているものの、他社の医薬品のライセンス化や販売という面で多国籍企業としのぎを削っていくには小さ過ぎる。

2015年4月に外国人のクリストファー・ウェバー氏が社長に就任した武田薬品の場合、特に新薬候補を補充しなければならないという固有の問題も抱えている。08年には約90億ドルを投じてミレニアム・ファーマシューティカルズを買収し、多発性骨髄腫治療薬「ベルケイド」を手に入れた。だがいったんは主力商品の1つになってくれたベルケイドは、15年に出た裁判所の予想外の判決のために特許切れが数カ月後に迫っている。

11年におよそ140億ドルで買収したナイコメッドも、期待したほど新興国の売上高押し上げ効果をもたらさなかった。円安の影響が大きいとはいえ、昨年度の売上高は減少した。

武田薬品はカナダの製薬会社バリアント・ファーマシューティカルズVRX.TOから胃腸薬事業を買収するという話も浮上していたが、結局実現しなかった。

こうした中でアリアドを手に入れたことは、ウェバー氏にとって多少の慰めにはなる。アリアドには販売承認済みの白血病治療薬があり、昨年の売上高は1億8000万ドルだったと見込まれている。さらに肺がん治療薬も成功が証明されそうだが、こちらは同じ種類の製品との競争が今後強まるだろう。

武田薬品がアリアド買収で相当大きなプレミアムを乗せたことで、対抗案が提示されて破談に至る事態は防げるかもしれない。それでも買収額はあまりにも高いように見受けられる。

●背景となるニュース

・武田薬品工業は9日、アリアド・ファーマシューティカルズを52億ドルで買収することに合意したと発表した。アリアド1株当たりの買収額は24ドルで、6日終値に75%のプレミアムを乗せた。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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