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焦点:コロナ禍のアートフェア、生き残り模索 デジタルは絶好調

[チューリヒ 18日 ロイター] - スイスのバーゼルにある瀟洒(しょうしゃ)な会場で毎年6月に開かれる世界最大級のアートフェア(美術品の展示即売会)、「アート・バーゼル」。本来ならば作品を購入したり、有望な新しい才能を探し求めたりする人々でごった返すはずだが、今年はこうした喧噪は見られず、代わりに新型コロナウイルスワクチンの接種を待つ人々が距離をとって列に並ぶことになりそうだ。

3月18日、スイスのバーゼルにある瀟洒(しょうしゃ)な会場で毎年6月に開かれる世界最大級のアートフェア(美術品の展示即売会)、「アート・バーゼル」。本来ならば作品を購入したり、有望な新しい才能を探し求めたりする人々でごった返すはずだ。写真は2015年6月、バーゼルで開かれた「アート・バーゼル」に展示された中国の現代芸術家、艾未未(アイ・ウェイウェイ)氏の作品を見る見学者(2021年 ロイター/Arnd Wiegmann )

アート・バーゼルは昨年、新型コロナの流行で開催が中止された。今年も開催時期が9月に延期され、隣接する会議場はワクチン接種会場になっている。

アートの世界はロックダウン(都市封鎖)、移動制限、ソーシャルディスタンスなどで大揺れだが、最も大きな影響を受けたのがアートフェアで、コロナ禍の打撃を抑えるために対応せざるを得なくなっている。

<超富裕層さらに豊かに>

16日に発表された、UBSとアート・バーゼルのリポート、「アート・マーケット」によると、2020年の世界の美術品販売は総額501億ドル(約5兆4500億円)。前年から22%減り、世界金融危機以来の落ち込みを記録した。ただ、今回はアジアを中心に超富裕層による購入は持ちこたえており、一様に打撃を被ったわけではない。

2007─08年の世界金融危機時には世界中で富裕層が損失を被った。しかし今回のコロナ禍では、景気刺激策や市場の乱高下で超富裕層がさらに豊かになっている。

サザビーズやクリスティーズを筆頭とする競売会社は、以前から電話による入札やオンライン販売が当たり前だったため、富裕層顧客に働きかける体制へと比較的容易に軸足を移すことができた。

両社とも収益全体は落ち込んだが、オンラインの活動は過去最高を記録し、アジアの買い手からの購入も底堅かった。またコロナ禍前から見られた黒人や女性、現存作家の作品への関心もさらに高まった。

オンライン方式は従来のオークション市場に比べてアクセスしやすいと考える若いコレクターが市場に流入している。また古くからのバイヤーは現実世界で購入するのを待ち焦がれている。競売会社は今年、こうした流れに乗りたい意向だ。

サザビーズのチャールズ・スチュワート最高経営責任者(CEO)は、「状況が少しでも安定して見通しが良くなれば、オークションに参加し、場合によっては作品を購入したいという巨大な繰り越し需要が目覚める」と予測。「人々が安心して外出できるようになれば、しばらくぶりの大きなブームが起きるかもしれない」と述べた。

<小規模ギャラリーは苦戦>

クリスティーズでは今年、デジタルアート作家ビープルの作品が7000万ドルで落札され、仮想空間から富を生み出せるということがはっきりした。

この作品はブロックチェーン(分散型台帳)技術で認証する「NFT(非代替性トークン)」と呼ばれるデジタル資産。入札はオンライン方式で行われ、最後にはビジター数が2200万人に達した。

まずアート作品の実物を見ることなく、オンラインで購入しようとする人は増えている。

一方、専門家によると、小規模なギャラリーは苦闘している。新型コロナ流行によってアートの世界が、非常に裕福な買い手と、よく知られた実績のある売り手に集中する動きが加速したためだ。

アート・マーケットの執筆者であるクレア・マックアンドルー氏は「全員の財産が減った世界金融危機のときと違い、今回は富裕層の富が増加している」と述べた。「これはアート作品の販売にとっては良いことだ。しかし上位層にばかり集中し、勝者が総取りするという旧来の構造問題にまた戻ってしまった」と言う。

アート・マーケットによると、アートディーラーの売上高全体に占めるアートフェアの比率は2019年には43%だったが、20年は22%にすぎなかった。この半分弱がデジタル開催のフェアで得られた収入だ。

ロンドンでメイヤー・ギャラリーを経営するジェームズ・メイヤー氏は「デジタルの世界は(ソーシャルメディア上で)流行している作品を、従業員100人以上の大手ギャラリーを通じて購入する形に集中している」と語る。

メイヤー氏はアート・バーゼルにいつも出席してきた。しかし実際に現地を訪れる代わりにはならないと、デジタルでの参加は見送った。

打撃を受けているのはギャラリーだけではない。バーゼル観光局によると、例年ならばアート・バーゼルの開催期間中に10万人近くが同市を訪れ、最初の4日間は市内のホテルがほぼ満室となる。

<中国の回復は追い風>

ロイターが取材したギャラリーやアドバイザーは、新型コロナの流行が収まればアートフェアや、こうしたフェアを目的とする旅行の需要は回復する、と見込んでいる。

アート・バーゼルは5月下旬に香港でフェアを予定している。TEFAFやフリーズなどの他の主要なアートフェアは今後、何らかの形で実地開催のフェアを開き、デジタルによる参加でそれを補完するとしている。

ただ、新型コロナ流行前ですらアートフェアは数が多すぎるとの声が一部で聞かれていた。ギャラリーやコレクターは選別を強め、過去1年間経験したような地域色の強いフェアにこだわり続ける意向を示している。

中国がいち早く新型コロナ流行から回復し、現代中国アートの購入意欲が高まったことから、香港のギャラリーはビジネスが好調だ。

そうしたギャラリーのひとつ、デービッド・ツビルナー香港のシニアディレクター、レオ・シュー氏は、あまりにも多くの主要都市で大規模なフェアやビエンナーレが開かれ、人々はそこで散財するのに慣れきっていたと指摘。「正直に言って、あれが戻ってきて欲しいとは思わない」と話した。

シュー氏によると、デービッド・ツビルナー香港は昨年、売上高が増加したが、それは主に富裕で目端の利く中国人への売り込みによるものだという。

ニューヨークで現代アートのギャラリーを経営するジーン・ケリー氏は、アートフェア関連の収入の落ち込みを、フェアへの不参加によるコスト削減で穴埋めしていると語った。

(Brenna Hughes Neghaiwi記者、Barbara Lewis記者)

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