[東京 29日 ロイター] - S&Pグローバル・レーティングは29日、中国当局が米中貿易戦争の影響を抑制するため、急激な信用の伸びを促せば、ソブリン格付けを圧迫する要因になりかねないとの認識を示した。
アジア太平洋ソブリン格付け担当シニアディクレター、キム・エン・タン氏が、ロイターとのインタビューで述べた。
同氏は、関税や市場アクセスを巡る米中の対立を理由に中国を来年格下げする可能性は低いとしながらも、対立が長期化すれば、融資抑制の手を緩めようという姿勢が中国政府内で強まると指摘。
「(中国)当局が経済に対する懸念を強め、デレバレッジが休止しつつある局面まで来ている」とし「こうした状況が長引けば、政府がデレバレッジの方針を180度転換し、我々が格付けに対する懸念を強める状況に至る可能性がそれだけ高まる」と述べた。
同氏は、米国の関税引き上げに対する懸念で中国経済が鈍化するという理由だけで、中国を格下げすることはないとの見通しも示した。現在の中国の格付けは「Aプラス」、見通しは「安定的」。
同氏によると、貿易取引が減れば、他のアジア諸国の成長も抑制されるとみられるが、多くの国では財政指標が改善しており、大きな格下げリスクは全くないという。
大幅な利上げを見送る可能性を示唆したパウエル米連邦準備理事会(FRB)の発言で資本流出リスクが低下したことも、アジアのソブリン格付けへの圧力を和らげる要因になるという。
金融市場が混乱した場合も、アジア諸国では経常黒字や潤沢な外貨準備が適度なバッファーになるとしている。
同氏は、マレーシアの政治的な安定が、将来問題になる可能性があるとの懸念も表明。同国のマハティール首相は2年程度で首相を辞任する意向を示しており、現在の4党連立が機能しなくなった場合は、格付けのリスク要因になるという。
マレーシアの現在の格付けは「Aマイナス」、見通しは「安定的」。