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アングル:韓国で恋愛リアリティー番組大ブーム、同棲や同性愛もテーマに

[ソウル 6日 ロイター] - 韓国で「恋愛リアリティー番組」が大ブームだ。内容は若い独身者同士がカップルになっていく過程を追うものが多いが、未婚の同棲や同性愛などを取り上げた番組も増えており、価値観の変容が浮き彫りになっている。

 3月6日、韓国で「恋愛リアリティー番組」が大ブームだ。写真は2月、ソウルで行われた「脱出おひとり島2」のファンミーティングに参加する視聴者と出演者(2023年 ロイター/Soo-hyeon Kim)

ロイターの集計によると、昨年テレビやインターネット動画配信サービスで流れた恋愛リアリティー番組は少なくとも20本に上り、前年から3倍以上に増えた。

特筆すべきは、結婚や家庭が絡まない、新しい関係性を受け入れる番組が増えていることだ。

例えば「結婚じゃなくて同居」は未婚を選んだカップルに焦点を当てており、「ヒズ・マン」は男性同士の恋愛がテーマ。離婚経験者が恋人を探す番組もある。

恋愛を巡るいざこざは古今東西のテレビ番組にとって永遠のテーマだが、韓国ではとりわけ重きが置かれている。韓国は結婚志向と子どもを持つことへの意欲が急激に低下している。激しい男女格差と育児費用高騰のためだとされる。

「結婚じゃなくて同居」は1月に放送が始まった。チーフプロデューサーのキム・ジン氏は、未婚の同棲を推奨したり、結婚を否定する意図はなく、議論に火をつけるのが番組の狙いだと説明。「こうしたカップルのライフスタイルや決断の理由を見せることで、このテーマを社会の前面に押し出したかった」と話す。

韓国では同棲の数に関する公式な統計はないが、もはや眉をひそめられるようなことではなくなっている。とはいえ、結婚せずに子供を持つ例は非常に少ない。

番組で紹介された、10年以上つきあっているチョ・ソンホさん(32)とイ・サンミさん(32)。モデルとして活躍するイさんにとって未婚のまま一緒に暮らすという決断は、伝統に縛られないための、自分の意思による選択だった。良い母親になり、同時に自分自身に忠実でいることは「現実には不可能」だとして、子どもを持つことに前向きではない。「結婚し、年末年始に両方の実家に行くといった義務を負わなければならない理由がよくわからない」と言う。

一方、K-POPアイドルからユーチューバーに転じたチョさんは、一般的に女性の方が子育てで大きな負担を強いられることを考えると、イさんの気持ちは理解できるという。

<大切なのは議論>

韓国は過去5年間で新婚カップルの数が23%減少、出生率は世界最低で、結婚や出産を敬遠する流れが進んでいる。

恋愛リアリティー番組がブームを巻き起こす一方、恋愛に拒否を置く人も多いようだ。

韓国人口保健福祉協会が昨年約1000人を対象に行った調査によると、19歳から34歳の独身者の約3分の2が恋愛をしていなかった。さらに、このうち女性の61%、男性の48%が「将来、彼氏や彼女を見つけたいとは思わない」と回答した。

「結婚じゃなくて同居」のような番組は、韓国が欧米社会に近い形で人間関係の多様性を受け入れつつある様子を示しているが、それでも欧米の番組と一線を画す面がある。

韓国の番組では衝突や怒りの爆発といった場面はほとんどない。口説く、優しく抱きしめるといった場面はあるが、キスやセックスはなしだ。若者を無人島に置き去りにするネットフリックスのヒット作「脱出おひとり島」でも、参加者同士の長い会話が大部分を占める。

檀国大学のイム・ミョンホ教授(心理学)は「恋愛番組で会話が取り上げられるのは韓国にとって良いことだ」と指摘。「政府や社会は恋愛や結婚に対してより前向きな姿勢を育てる努力が必要で、リアリティー番組はその一助になる」と言う。

(Jihoon Lee記者)

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