June 6, 2018 / 1:29 AM / 2 months ago

焦点:東南アジアで地歩固めるインド、中国をけん制

[シンガポール 3日 ロイター] - 6月12日に予定されている米朝首脳会談と、先週の貿易を巡る米中の対立再燃の影でほとんど注目されなかったものの、インドが東南アジア一帯で外交・安全保障の関係強化に動いている。

6月3日、米朝首脳会談と、先週の貿易を巡る米中の対立再燃の影でほとんど注目されなかったものの、インドが東南アジア一帯で外交・安全保障の関係強化に動いている。写真は5月30日、ジャカルタを訪問したインドのモディ首相(中央)。左はジョコ・ウィドド大統領(2018年 ロイター)

中国をけん制する狙いがあることは明白だ。

モディ首相が11カ月後に控えた総選挙に労力を割かれる可能性がある上、こうした関係強化がこれまでにも長年「約束」されていたことを踏まえれば、インド政府がどこまでこれらの関係を進めるのかは不明だ。また、インドがすでに中国を揺さぶっているとするなら、インドとしても事を荒立てたくはないだろう。

だがモディ首相は最近、東南アジアで具体的な外交・安全保障上の手を打っている。

同首相は、インドネシアとの間で、同国北西部サバンの港湾開発の合意文書に署名した。世界でもっとも交通量の多い水路の1つであるマラッカ海峡の西側の入り口を監視できる位置に港が造られることになる。またシンガポールとの間で、寄航した海軍の艦船や潜水艦、軍用機などへの供給支援協定に合意した。

モディ首相はまた、マレーシアの首都クアラルンプールに飛び、先月の総選挙で勝利したマハティール首相と会談。東南アジア諸国の中でもっとも有力な3カ国との関係を着実に固めた。

モディ氏は1日、シンガポールで開かれたアジア安全保障会議(シャングリラ対話)で、インドは東南アジア諸国連合(ASEAN)と協力し、インド太平洋地域でルールにのっとった秩序を後押しすると表明した。

「われわれは、安定した平和な地域構築のため、個別にまたは3カ国かそれ以上の形で協力する」と、モディ氏は同会議の基調講演で強調した。

マティス米国防長官を含めた数カ国の代表が、支持を表明した。

同会議が閉幕した3日、シンガポールのウン・エンヘン国防相はこう話した。「インドがこの地域への強いコミットメントを表明し、多くの国が喜んでいるに違いない」

<中国の冷視線>

米国やオーストラリア、インドや日本の外交・安全保障関係者の間では近年、「インド太平洋」という表現が頻繁に使われるようになっている。これは、民主主義国を中心としたより広範な地域を指す表現で、一部で「中国中心」過ぎるという指摘が出ている「アジア太平洋」に代わって使われている。

地域でより重みを増すインドの重要性を追認する形で、米軍は5月30日に開かれた式典で、ハワイを拠点とする太平洋軍の名称を正式に「インド太平洋軍」に変更した。

対外的な中印友好関係のデモンストレーションや、強固な両国関係についてのモディ氏の発言とは裏腹に、中国政府は同氏の戦略に明らかに冷淡な反応を示している。

中国の共産党機関紙・人民日報系の環球時報は先週の論説で、「もしインドが戦略的に重要なサバン島への軍事的アクセスを求めるなら、誤って中国との戦略的競争にはまりこみ、いずれ痛い目に遭うだろう」と警告した。

1日、シンガポールでリー・シェンロン首相(右)と握手するインドのモディ首相(2018年 ロイター/Edgar Su)

シャングリラ対話に出席した中国人民解放軍軍事科学研究院のZhao Xiaozhou研究員は、記者団に対し、モディ氏が「自らがインド太平洋と考えるコンセプトについて、いくつか熱心な発言をした」と述べた。

同研究員は詳細に言及しなかったが、環球時報は、「インド太平洋戦略と、米国と日本、インドとオーストラリアの同盟もどきは、長くは続かない」とする同研究員の発言を引用した。

<より広範な足跡>

インド外務省当局者は、マラッカ海峡へのアクセスを確保しようとうする政府の取り組みには、自国の国益の要素が多分にあると話す。同国の貿易の60%が、同海峡を通過するからだ。

だがインドが考える自国の行動範囲は、より広い。

5月末には、南シナ海でインド艦船3隻がベトナム海軍と初の軍事演習を行った。中国は、南シナ海のほぼ全域で自国の領有権を主張している。

ベトナムの潜水艦は、インドで訓練を行っている。また両国は、情報共有の範囲を大きく拡大させたほか、高度な兵器の売却についても検討している。

西を向けば、インドは、モディ首相が今年オマーンを訪問した際、同国南部ドゥクムの港へのアクセスについての合意文書を取り交わした。この合意では、報道によると、インド海軍は補給などのために同港を使用することができるようになり、これによりインド洋西部での長期運用が可能になる。

インドは1月、フランスとの間で補給交換協定をまとめた。インド側は、インド洋の仏軍施設を利用することができるようになる。

インドのより自己主張の強い振る舞いは、中国の影響力が地域で拡大し、米国が距離を置き始めていると懸念する東南アジア各国の懸念に応えるものだと、アナリストは指摘する。

米国が、中国との間に貿易摩擦を引き起こし、北朝鮮との和平に向けて外交政策を180度転換させたとみられることは、地域におけるさまざまな前提を大きく揺さぶったと、彼らは言う。

「(ASEAN諸国には)安全保障関係を多極化させ、保険をかける圧力が生じている」と、シンガポール国立大学南アジア研究所のC・ラジャ・モハン所長は言う。

「活動的なインドは、こうした状況に自然にフィットする」

モハン所長は一方で、モディ首相の強気の姿勢が、どこまで続くか明らかでないとも指摘。

「インドにとって、これまでも実行が大きな課題だった。(モディ首相は)国外活動を行うためのインド政府の能力強化に苦戦している。改善された部分もあるが、まだ構造的な問題が残っている」と、同所長は話した。

(翻訳:山口香子、 編集:伊藤典子)

 1日、シンガポールで行われたシャングリラ対話で基調講演するインドのモディ首相(2018年 ロイター/Edgar Su)

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