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コラム

コラム:アストラゼネカの治験中断、早期コロナ克服の期待遠のく

[ロンドン 9日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 英製薬会社アストラゼネカAZN.Lが英オックスフォード大と共同開発している新型コロナウイルス・ワクチンの臨床試験(治験)で、深刻な副作用が発生した。今後もこうした事例は数多く出てくる可能性がある。同社は8日、治験に参加したボランティアの1人が不可解な疾患を発症したのを受け、世界中で治験を中断したと発表。こうした安全策の発動は通常の対応ではあるが、新型コロナ早期克服の期待はしぼむかもしれない。

9月9日、英製薬会社アストラゼネカが英オックスフォード大と共同開発している新型コロナウイルス・ワクチンの臨床試験(治験)で、深刻な副作用が発生した。写真はアストラゼネカのロゴとワクチンのイメージ(2020年 ロイター/Dado Ruvic)

アストラゼネカは、独立委員会による検証作業に入る。作業期間は定まっておらず、同社のパスカル・ソリオ最高経営責任者(CEO)は作業を迅速に進めたいと述べた。とはいえ今回のニュースは新型コロナとの闘いにとって打撃だ。このワクチンについて世界保健機関(WHO)は、おそらく世界で最も有望で、最も開発が進んでいると表現していた。

他のワクチン開発にも悪影響が及ぶだろう。アストラゼネカのワクチンは確かに、ある種の副作用が出る確率が相対的に高いと言える。別の生ウイルスに便乗する技術を用いており、人体の反応が複雑化する可能性があるからだ。この技術では、チンパンジーがよく感染する風邪ウイルスを用いて新型コロナウイルスを細胞に注入し、実際の感染と闘う免疫システムを刺激する。

米ファイザーPFE.Nや米モデルナMRNA.Oなどの企業で開発中のワクチンは、これとは異なる技術を用いているが、アストラゼネカと同様の副作用が出ないことを確かめるために治験が中断されるリスクはある。深刻な副作用のニュースを受け、人々が治験参加に二の足を踏む可能性もある。

今回の事例は、各国政府にとっても悪いニュースかもしれない。多くの国々は既に、数十億回分のワクチンを製薬会社に事前発注している。ワクチン接種を受けた人々は、映画館通い、飛行機旅行、出勤などに積極的になると期待してのことだ。トランプ米大統領に至っては、11月の大統領選までにワクチンを供給できる可能性まで口にしている。しかしアストラゼネカの挫折は、ワクチン開発は時間を要するものだという事実を突きつけた。これまでの最速記録は4年だ。

早急にワクチンが供給されなければ、社会的な制限措置は長引きそうだ。政府は地域社会の閉鎖や旅行制限を課す必要が生じるかもしれないし、労働者は密なオフィスに通うのを避けるだろう。どの側面から考えても、経済の苦境は続きそうだ。

製薬会社にも悪影響は及ぶ。モデルナとドイツの製薬会社バイオエヌテックBNTX.Oの株式時価総額は、ワクチンの早期供給への期待から年初に比べて180億ドル増えている。投資家の熱狂につける薬はないようだ。

●背景となるニュース

*アストラゼネカは8日、新型コロナワクチンの治験参加者が不可解な疾患を発症したため、大規模な後期治験を含む世界中の治験を中断すると発表した。

*同社は独立委員会による安全性データの検証を認めると説明。治験日程への影響を最小限に抑えるため、検証作業の迅速化に取り組むとした。

*治験参加者が発症した疾患の性質は開示されていない。ただスタット・ニュースによると、参加者は回復が見込まれている。

(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)

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