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焦点:豪4大銀の業績見通し悪化、そっぽ向く機関投資家

[シドニー 22日 ロイター] - コモンウェルス銀行(CBA)CBA.AX、ウエストパック銀行WBC.AX、 オーストラリア・アンド・ニュージーランド・バンキング・グループ(ANZ)ANZ.AX、ナショナル・オーストラリア銀行(NAB)NAB.AXの豪大手4銀行は、不正融資など一連の不祥事の影響で業績見通しが悪化し、機関投資家の離反を招いている。

 10月22日、コモンウェルス銀行(CBA)、ウエストパック銀行、 オーストラリア・アンド・ニュージーランド・バンキング・グループ(ANZ)、ナショナル・オーストラリア銀行(NAB)の豪大手4銀行は、不正融資など一連の不祥事の影響で業績見通しが悪化し、機関投資家の離反を招いている。写真はNABのロゴ。シドニーで2月撮影(2018年 ロイター/Daniel Munoz)

ロイターが株式ポートフォリオを調べたところ、これまで4大銀行のおかげで確固たる運用成績を上げてきた成長志向のグロースファンド31本強が、今年に入って保有していた4大銀の株式を全て処分した。4大銀の株式の保有を減らしたグロースファンドも146本に及び、4大銀の株価はこの1年間に14─20%下落した。

ウィルソン・ファンズ・マネジメントのジェフ・ウィルソン会長はロイターに「市場が過剰反応しているとは思わない」と述べ、むしろまだ悪材料は完全に織り込まれていないとの見方を示した。

利益率が世界トップクラスだった豪4大銀行の威光は揺らいでいる。リフィニティブ・アイコンのデータによると、4大銀の過去10年間の株主資本利益率(ROE)は20%近かったが、今年は12%に落ち込んだ。

ロイターの分析では、国内第3位のANZが31日に発表する下半期決算は、コストの上昇や融資の落ち込みが響き、利益が前年同期比15%減の293億豪ドル(20億9000万米ドル)となる見込み。国内4位のNABが11月1日に発表する決算も、12%程度の減益が予想されている。

不祥事を調査する王立委員会は既に融資規準の厳格化を加速しており、銀行の経営構造が大きく変化して4大銀行の収益モデルにも圧力が掛かりそうだ。

これまでの調査で銀行は顧客の返済能力を確認する基本的なチェックをせずに融資を行っていたほか、サービスを提供していないのに顧客の口座から手数料を徴収したり、さらにはインセンティブの導入によって従業員の不正を煽っていた実態が明らかになった。

4大銀はこうした不正について謝罪しており、ショー・アンド・パートナーズの推計に基づくと罰金の支払いや法令順守に伴うコスト増は総額60億豪ドルに上る。

4大銀のうちANZ、CBA、NABの3行は不正が集中して発生した富裕層向けウェルスマネジメント部門と保険部門の大部分を手放した。

こうした部門はこれまで大手銀の収益の伸びを支えてきただけに、今後は国内の住宅市場や企業向け融資に大きく頼らざるを得なくなる。とはいえ、不動産価格は下落し、家計の負債が過去最高水準に達するなど国内の与信環境は厳しい。

過去20年間の平均が12%前後だった住宅ローンの伸び率は今後は4%以下まで低下し、競争が激化する見通しだ。

事業縮小に伴い、銀行はもう1つの収益の柱である手数料収入も収入全体に占める比率が40%程度からその半分ほどに落ち込んだ。

当局は外為サービスやクレジットカード関連での過剰な手数料徴収を取り締まるなど、手数料についても監視を強めている。

アルゴ・インベストメンツのマネジングディレクター、ジェーソン・ベドー氏は「4大銀が以前のような利益の伸びを達成するのはより難しくなる」と予想。融資が伸び悩み、規制が強化され、法令順守のコストが上昇しているだけでなく、事業の面で4大銀それぞれの特性がなくなりつつあり、同じ市場を奪い合う構図になっていると指摘した。

(Paulina Duran記者、Tom Westbrook記者)

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