March 25, 2019 / 2:40 AM / 7 months ago

コラム:「幸福な国」豪経済は、重力に逆らえるか

[シンガポール 22日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 過去30年近く重力に逆らって浮揚してきた豪州経済が、ついに物理法則に屈しつつあるように見える。

 3月22日、過去30年近く重力に逆らって浮揚してきた豪州経済が、ついに物理法則に屈しつつあるように見える。シドニーで2015年撮影(2019年 ロイター/David Gray)

昨年第4・四半期の国内総生産(GDP)は停滞。住宅価格は下落し、賃金も伸び悩んでいる。だが、豪経済の勢いを保つ手段はまだ残されている。

豪経済は「幸福な国」の愛称が示す通りに、アジア通貨危機、世界的な金融危機、史上まれに見る鉱山ブームの終焉、また約10年で首相が6人も変わるという国内政局の混乱を見事に乗り切ってきた。

移民の流入が助けとなったが、好調な中国経済からの波及効果や、その後の不動産市場・インフラ投資拡大のほうが、経済を大きく支える要因となった。

現在、こうした要因の多くは、消滅しつつある。1人当たりのGDP──つまり、典型的な先進国のほぼ2倍の人口増加ペースの影響を除いたGDP──は、約10年ぶりに2四半期連続でマイナス成長に陥った。政府はこの算出方法を良しとしていないが、役員室や酒場でこぼされる不満の背景には、こうした現実がある。

まず、宴会の格好の話題となっていた不動産市場の熱狂が収まりつつある。豪中銀によると、全国の住宅価格は、2017年終盤までの5年間で50%近く上昇したが、コアロジックによると、2018年の下落率は、2008年以降で最悪の5%近くに達した。

シドニー、メルボルンなどに住宅を保有する世帯の純資産は、依然として高水準だが、こうした住宅価格の反転は、個人消費に心理的な悪影響を及ぼす可能性がある。クリスマス商戦後の値下げは、2月に入っても続いていた。

不動産ブームの背景の1つにはアジア勢の購入があったが、それに加え、低金利と優遇税制でオーストラリア人も賃貸物件への投資を進めていた。

今現在、需要は減退しており、銀行にも不良債権処理の圧力がかかり、融資の審査基準も厳格化されている。一方、長期にわたる建設ブームで、供給も需要に追いついた。そうなると、住宅価格の下落は、迫りくる不況の足音ではなく、健全な後退と言えるのかもしれない。2016年半ばの水準に下落しただけなのだ。

賃金も、見た目ほど悪くない可能性がある。給与が伸び悩んでいるとはいえ、2月の失業率は約8年ぶりの低水準に改善。シドニーがあるニューサウスウェールズ州などではすでに過去最低を記録している。

また、余剰生産力の隠れた源である不完全失業率も、安定しつつあり、雇用の拡大が続いている。複数の大型プロジェクトの影響もあり、鉱山会社などはすでに西部地域で人手不足を指摘。豪中銀は、全国の賃金が「緩やかに上昇する」と予想している。

豪ドル高の一服が本物であれば、慎重な楽天主義も正当化される可能性がある。

豪州の家計債務は、世界でも有数の高水準にあり、確かに懸念要因ではある。これは、住宅市場がGDP(1兆3000億ドル)の5倍以上に膨らんだことが背景だ。こうした借り入れは、銀行のバランスシートの過半を占めている。

ただ、家計債務は、不況を増幅することはあっても、必ずしも不況のきっかけとなるわけではない。金利が低いことに加え、多くの場合、債務を抱えているのは相対的に若く裕福な世帯で、返済能力は相対的に高い。

さらに重要なことに、金利オンリー型の高リスク融資の比率は、以前に比べれば大幅に低下している。豪中銀が昨年終盤に明らかにしたところでは、金利オンリー型融資の比率は全体の25%強と、ピーク時の約40%を下回っている。

中国経済はどうか。豪州の輸出の約3分の1は中国向けだ。鉄鉱石価格は、ブラジルのダム決壊の影響で急伸しており、資源大手のリオ・ティントやBHPなどからの供給が予想外に拡大している。中国政府も景気刺激を続けていく意向を示唆しており、地政学的な緊張が再燃しなければ、鉱物・金属に対するおう盛な需要は続くはずだ。

もっとも、こうした要素は、豪州が自らコントロールできるものではない。ただ、豪州はある程度まで自らの運命を決めることができる。

まず、低金利とはいえ、金利は1.5%ある。必ずしも利下げで住宅購入を促せるわけではないが、日欧に比べれば金融政策の余地は大きい。

これに加え、財政政策の発動も可能だ。政府は今年度の財政赤字予想を下方修正しており、金融危機後初となる黒字計上に向かっている。

5月の選挙を控え、減税だけでなく、人口増大で急務となっている道路・公共交通機関への投資も可能だ。同国の人口は2031年までに3000万人を超えると見込まれている。

独立政府機関である豪州インフラ委員会が作成した2019年のリストには、総額400億ドル以上の開発計画が記載されている。

国内労働人口の半数以上は、就職後に大きな不況を一度も経験したことがない。このため、企業経営者やエコノミストから見ると、今回のような景気減速が集団心理にどのような影響を及ぼすのか、予測は難しい。

ただ、少なくとも、選挙で選ばれた政府には、豪州経済の浮揚という離れ業を続けるだけの力がある程度まで残されているはずだ。

●背景となるニュース

・第4四半期の豪GDPは前期比0.2%増、予想下回る伸び [nL3N20T0DI]

・豪中銀、成長と雇用のバランスに配慮 住宅市場巡り議論=議事要旨[nL3N21608M]

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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