[シドニー 17日 ロイター] - オーストラリア準備銀行(中央銀行)のロウ総裁は17日、国内経済は依然新型コロナウイルス禍からの回復段階にあり、景気が完全に回復するまでしばらくの間は刺激策が必要との認識を示した。
総裁は講演で、景気は想定よりも速いペースで上向いているが、賃金と物価の伸びは驚くほど抑えられていると指摘。「なお回復段階にあるという事実を忘れないことが重要だ」とし、賃金の伸びとインフレの「上振れは起きていない」と述べた。
インフレ率が中銀の目標レンジである2─3%で持続的に推移するためには、賃金の伸びが最近の水準より大幅に高くなる必要があるとも指摘。
企業がコスト抑制に注力し、賃金以外の方法で従業員の維持・確保を図ったり、代わりに生産を制限したりする中、それにはしばらく時間がかかる可能性があるとの見方を示した。
また、こうした制約は構造的であり、労働市場の逼迫がしばらく続くまでは克服できないだろうと述べた。
その上で、インフレ率が2─3%に戻るまで現行0.1%のキャッシュレート(政策金利)を引き上げない意向を中銀が示し、2024年までそうした状況になる公算は小さいと予想しているのはこのためだと説明した。
総裁は、7月の理事会で3年債利回りのターゲットを24年4月償還債から24年11月償還債に変更するか検討する見込みだとした。
主要な問題は、キャッシュレートが3年の間に上昇する確率であり、中銀はさまざまなシナリオを検討してきたと述べた。
「24年中にキャッシュレート上昇の条件が満たされるシナリオもあれば、そうでないシナリオもある」とし、次回の会合でこれらのシナリオを改めて検討する考えを示した。
7月の理事会では、1000億豪ドルの債券買い入れプログラムに変更を加えるかどうかも議論する。
総裁は、現在の景気回復を中銀がどのように支援するのが最善かという点が重要な検討事項だと指摘。最近の回復が、低失業率や賃金上昇の加速を伴う「強く耐久性のある経済成長に移行するのを理事会としては確認したい」と述べた。
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