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アングル:ワクチン遅れに不満のシドニー市民、次期総選挙で与党に逆風

[シドニー 20日 ロイター] - オーストラリアのシドニー西部でアートスタジオを経営するキャシー・チョーカーさんは、ずっと以前から保守派の与党・自由党を支持してきた。この地区は総選挙の行方を左右するため、チョーカーさんはスコット・モリソン首相が次の選挙で勝利するのに欠かせない有権者の1人だ。しかし、彼女はすでにモリソン氏には投票しないと決めている。

最近の世論調査によると、モリソン豪首相(写真)率いる自由党の保守連合は、来年半ばまでに行われる総選挙で、過半数割れとなりそうだ。写真はロンドンで6月撮影(2021年 ロイター/Henry Nicholls)

新型コロナウイルス感染対策のためのロックダウンで、スタジオが無期限休業となっているチョーカーさんは、他のほとんどの先進国と比べてワクチン接種の進め方がまずいとモリソン政権を批判している。

「なぜ準備しなかったのでしょう。世界中で起きていることを目の当たりにしてきたのに。本当に無能」と、怒りが収まらない。

こうした思いを抱えているのは、チョーカーさんだけではない。最近の世論調査によると、モリソン氏率いる自由党の保守連合は、来年半ばまでに行われる総選挙で、過半数割れとなりそうだ。

オーストラリアは、今でもコロナ禍の影響が他の多くの先進国に比べて小さい。感染者数の累計は4万1400人余り、死者数は同971人に過ぎず、数カ月の間は危機を脱したかに見えた。しかし、感染力の強いデルタ株で、ワクチン接種の遅れと言う弱点が露呈した。

かつて自由党党首を務めたジョン・ヒューソン氏は「問題はモリソン氏が期待を膨らませたことだ」と述べた。「オーストラリアは、感染者が出ても数が少なく、うまく行っていた。だからモリソン氏は、今も感染者数を少なく抑えなければならなくなっている」と言う。

オーストラリアは19日の新規感染者数が754人と、1日としては1年前のピーク時以降最高となった。その多くは、チョーカーさんが住むシドニー西部リンゼイ選挙区で発生している。

シドニー西部は人口が約250万人で、シドニー中心部のビジネス街、メルボルン市に次ぐ国内第3位の経済規模を誇る。2カ月間のロックダウンではデルタ株の感染を抑えられなかった一方で、地域ビジネスに深刻な影響を与え、地元では怒りが高まっている。

チョーカーさんは2019年の総選挙では自由党に投票したが、今回のロックダウンでは中小企業が無視されていると考えている。

「家族全員が同じ気持ち。私には成人した息子たちがいるけれど、『うん、お母さんが必要とする候補者に投票するよ』と言ってくれている」と言う。

オーストラリアは全人口2500万人の半数以上が、何らかの形でロックダウン下での生活を強いられており、エコノミストはここ数年で2度目の景気後退に陥るリスクがあると警告している。

リンゼイとその周辺の選挙区の住民は、国内で最も厳しい行動制限措置を受けており、ほとんどが運動や生活必需品の買い物以外、家に閉じこもっている。

リンゼイに住むジョディ・リーブスさんは「この地域の住民は、オーストラリアの原動力。働く必要があるし、ぎりぎりで生活している人も多い」と説明する。

無党派だというリーブスさんは「モリソン氏が、私たちのことを社会に忘れさせるには強力な宣伝活動が必要になる。でも、何が間違っていたのかを、私が皆に思い起こさせてやる」と決心している。

<ワクチン接種のつまずき>

オーストラリアのパンデミックに対する政策は、責任のありかが州政府と連邦政府に混在しているが、モリソン政権は国のワクチン接種計画のまとめ役として多くの責務を負っている。

この数週間、ワクチン接種率を上げようと大々的な取り組みを行ってきたものの、16歳以上の完全接種率は30%にとどまっている。

こうした遅れは、オーストラリアの接種計画の中核を担うはずだったアストラゼネカ製ワクチンで一部の接種者にまれに血栓が発生し、接種方針に変更が生じたことが一因。

その後、オーストラリアはファイザー製ワクチンの供給を増やそうと奔走し、アストラゼネカ製については、使用勧告の一部を撤回した。

モリソン氏は、政府の対応で雇用と企業の存続が保たれ、オーストラリアは他の国のような死者数の発生を回避できたと主張している。

オーストラリアの規定によると、政府は来年5月までに総選挙を実施する必要がある。予防接種計画を進め、移動制限を解除して国民の気分を盛り上げるため、選挙の時期をなるべく遅くするとの見方が一般的だ。モリソン氏はこうした戦略で、世論調査の予想を覆して19年の総選挙で勝利を収めた際に確保した支持基盤を維持したいともくろんでいる。

19年の選挙でモリソン氏は、鉱業と農業が盛んなクイーンズランド州とウエスタンオーストラリア州で接戦を制し、野党・労働党からリンゼイ選挙区を奪い取ることで勝利への狭い道を切り開いた。

労働党は国内で2番目に人口の多いビクトリア州で強い支持を得ており、これらの接戦区である程度勝利を収め、リンゼイ地区の票を固めれば、13年以来の政権復帰を果たす可能性もある。

(Jonathan Barrett記者、Colin Packham記者)

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