October 10, 2018 / 7:45 AM / 2 months ago

焦点:高齢ドライバーの「軽人気」に活路、車各社は安全性強化

[東京 10日 ロイター] - 自動車メーカーが国内新車需要の喚起に苦心している。少子化で運転人口が減少に転じるのは時間の問題。そのうえ、都市部を中心に若者の車離れも進んでいることから、高齢者に焦点を当てざるを得ない状況だ。

 10月10日、自動車メーカーが国内新車需要の喚起に苦心している。軽自動車を運転する男性。大和市で8月撮影(2018年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

一方、今や軽自動車(以下、軽)は保有される車の3台に1台を占め、さらに拡大する可能性がある。各社は軽の居住性や安全性を、登録車と遜色のない水準まで高めて販売増加を目指す動きがあり、高齢者と軽の動向が国内市場を変えようとしている。

<一番売れている車、軽に安全機能を標準装備>

ホンダ(7267.T)が昨年9月に発売した軽「N-BOX」の新型車は、日本で一番売れている車だ。9月の車名別販売台数では13カ月連続でトップを維持した。

発売した年の購入者を世代別でみると(20代は20歳未満含む)、新型では60代以上は27%と、12年に発売した旧型の16%から約10ポイント伸びた。これに対し、旧型は30代(27%)の占める割合がトップだった。「新型となり先進安全技術が標準装備されたことで、年齢層の高いユーザー構成比が上昇した」と同社広報部はみている。

軽の安全装備は、上級タイプのみやオプションが一般的。だが、ホンダは登録車で採用している安全運転支援システム「ホンダセンシング」を、軽として初めて新型N-BOXの全タイプに標準搭載した。衝突軽減ブレーキ、車線逸脱抑制、高速道路走行時に先行車との車間距離を一定に保つなどの機能が付いているほか、社会問題化している前後方の誤発進を防ぐ機能も、ホンダ車として初めて採用した。

こうした安全装備は、交通事故ゼロに向けて歩行者の安全と全世代の運転者のために開発されたシステムで、運転技術に自信のない若者にも魅力となっているが、ことのほか高齢運転者の好感を呼んでいる。

ホンダは、日本初のエアバッグ搭載車や衝突実験用の歩行者ダミー人形を独自に開発するなど、積極的に安全機能の開発に取り組んできたが、現在もAI(人工知能)を活用して運転者をコーチングする機能などを開発中だ。コーチング機能は追突など危険な状態になりそうだとAIが判断すると、運転者の心理状態や体調変化なども読み取り、運転者を安全な運転にさりげなく導くことを目指している。

安全技術開発を担当している高石秀明上席研究員は、ロイターのインタビューで、高齢者にできるだけ長く、安全に安心して車に乗ってもらうことが希望であり、「免許を返上して諦めるのではなく、できるだけ自由な移動の喜びを感じてもらいたい」と話す。今後も「独自で安全技術の開発を目指す」といい、ホンダ車の魅力につなげる考えだ。

<軽専門販売店、客の7割超が高齢者>

ダイハツ工業が5月に発売した「ハイゼット・トラック」は、軽トラックとして初の衝突回避支援ブレーキを搭載。軽トラックをよく使う農業従事者の高齢化が進んでいるため、最先端の安全機能を装備した。このブレーキが付くと価格が5万4000円(税込み)アップするが、同社広報によると、軽トラック購入者は価格志向が強いにもかかわらず、購入者の約5割がブレーキ付きのグレードを選んでおり、「手応えを感じている」という。

また、高齢運転者のニーズを取り入れるよう車の設計段階からも工夫している。同社の軽のエンジニアである中島雅之氏は、視力の弱くなった高齢運転者にとって、死角に入るゾーンの周辺が特に危険なため、例えば、サイドミラーを車体から遠くに設置することで、運転時により多く情報を取り込めるようにし、安全運転につなげるという。

鹿児島県在住の今田吉幸さん(68)は、20年近くトヨタ自動車(7203.T)のセダン「マークII」を運転していたが、来年初めに自動車保険が切れるのを機に、軽へ乗り変える予定だ。軽のほうが登録車より低価格なことも魅力なほか、「高齢になると、小さい車のほうが運転しやすい。特に駐車場へバックで入れる時にね」と語る。

神奈川県内の軽専門ディーラー、トータス大和店では、過去10年間の顧客総数のうち、7割超を高齢者が占める。同店営業担当の村野公紀氏は「子育てが終わって大きな車が必要なくなり、小さい車に乗り換える人が増えている」と話す。

少子化が進む中、交通手段が多く駐車場代の高い都市部の若者の間では、カーシェアの利用が増加中だ。今は足として車が必要な地方でも、今後は自動運転車によるサービスが普及するとみられ、「新車販売が大幅に伸びるとは考えづらい」と調査会社TIWのシニアアナリストの高田悟氏は話す。

それでも同氏は、小回りが利き、現時点では登録車に比べて税金が圧倒的に安い軽の需要は「今後も根強いとみられ、各社は力を入れざるを得ない」と指摘。「軽に安全性能など付加価値をつけて、かつ、手ごろな価格も維持しつつ、販売台数を増やし、利益を出し続けていくしかない」と語る。

実際、18年度上半期の車名別販売台数では、上位10車種のうち7車種が軽となり、17年度上期の6車種から増えた。登録車に負けない居住性や安全性の高さを売りにした新車の投入により、国内市場における軽の比重は高まっている。新車全体に占める軽のシェアは、14年度に初めて4割を突破。15年に軽自動車税引き上げ、16年に燃費不正の発覚という逆風が吹いたが、17年度は増加に転じた。

日本自動車工業会の調べによると、軽乗用車ユーザーのうち60歳以上の高齢者は約34%で、その占める割合は10年で約1.6倍に増加。軽のユーザー全世代で88%、特に高齢者は95%が「もし買い換えるなら次も軽」と回答している。

<目立つ高齢者の事故>

ここ10年間の交通事故による死亡者数は減少傾向にあるが、死者全体に占める65歳以上の高齢者(高齢運転者を含む)の割合は10年前の約47%から約55%に上昇している。高齢運転者の数も増えており、高齢運転者による死亡事故の要因は、ブレーキとアクセルの踏み間違いやハンドル操作ミスなどが多い。

こうした事態を受け、政府は高齢運転者による交通事故防止対策の一環として、自動ブレーキを搭載した車を「セーフティ・サポートカー(通称:サポカー)」、自動ブレーキに加えてペダル踏み間違い時加速抑制装置などをつけた車を「セーフティ・サポートカーS(同サポカーS)」という愛称で、昨年3月から普及啓発に取り組んでいる。

車メーカーはこのロゴを使って車を販売でき、購入者も自動車保険料が安くなるなどのメリットがある。サポカーの取り組みを統括する経済産業省ITS・自動走行推進室長の垣見直彦氏は「高齢運転者による交通事故が社会問題化していることから、事故を減らすため注意喚起し、幅広く安全機能を普及させる」と話す。

トータス大和店で開かれたダイハツの軽「タント」の自動緊急ブレーキ体験会。参加した神奈川県在住の三保頼栄さん(80)は10年以上、同社の軽「ソニカ」を運転してきたが、安全技術の進化に驚いた。「次の車を買う必要がある時まで長く生きられるかわからないが、(サポカーの車なら)いいだろうね」。

白木真紀 取材協力:田実直美、Kwiyeon Ha 編集:田巻一彦

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