March 11, 2019 / 3:13 AM / 4 months ago

焦点:自動運転技術支える「眼」、ライダー開発競争の視界不良

[6日 ロイター] - 自動運転車開発にしのぎを削る自動車メーカーやテクノロジー企業が、大きな障害に突き当たっている。いくら「考える」能力があるクルマでも、低コストで信頼性の高いセンサー技術で「見る」ことができなければ、役立たずなのだ。

3月6日、自動運転車開発にしのぎを削る自動車メーカーやテクノロジー企業が、大きな障害に突き当たっている。写真はベロダイン社のライダーがとらえた道路のイメージ。ベロダイン2月提供(2019年 ロイター)

イーロン・マスク最高経営責任者(CEO)率いる米電気自動車大手テスラ(TSLA.O)を顕著な例外として、大半の自動車メーカーが開発する自動運転車は「ライダー(LiDAR)」と呼ばれる検知システムを頼りにしている。ライダーとは、レーザー光のパルスを使って車体周囲の環境の正確なイメージを構築する最先端のセンサーである。

自動運転車開発のプレッシャーの高まりを受けて、多くの企業がすでにこの技術への投資に踏み切っている。

米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)(GM.N)、同フォード・モーター(F.N)、独BMW(BMWG.DE)は、今後2年間で発売する初期型の自動運転車に、資金力豊富なライダー関連スタートアップであるベロダインやイノビズのセンサーを搭載するものと予想されている。

公開されている投資データをロイターが分析したところ、ライダー関連スタートアップ約50社に対して過去3年間に投じられた企業・個人投資家の資金は10億ドル(約1110憶円)を超える。2018年には過去最高の4億2000万ドルを記録した。

2021年半ばに登場予定のフォード初の自動運転車には、ベロダインとスウェーデンのサプライヤーであるベオニアがライダーを提供する予定だと、同プロジェクトに詳しい関係者が明かした。

ベロダインのマータ・ホール社長は、この計画について「10億ドル以上の契約」と表現する。シリコンバレーで見られる自動運転の試作車の多くは、ライダー開発のパイオニア的存在である非上場のベロダインが製造する「HDL-64E」(7万5000ドル)を屋根に搭載している。

だが、自動車メーカーと大手サプライヤーのあいだでは、どの技術が主流となるのか結論が出ていない。それは、この種のセンサーについては、大量生産とコスト削減を可能にする業界標準がまだ確立されていないことを意味する。

投資家とスタートアップ企業にとって、初期投資の見返りが得られる見込みは薄い。産業調査会社IHSマークイットによれば、2025年の時点で自動車用ライダーはわずか25億ドルの売上高しか生み出さないと予想されている。

ライダー関連スタートアップのルミナーの共同創業者でCEOを務めるオースティン・ラッセル氏は、全力で最新のライダー技術の開発・商品化・導入に取り組んでいるものの、「投資の追加によって乗り越えられる問題もあるだろうが、物理的な法則を乗り越えるわけにはいかない」と語る。ルミナーはスウェーデンのボルボ・カーズから出資を受け、トヨタ自動車(7203.T)や独フォルクスワーゲン(VOWG_p.DE)傘下のアウディと開発契約を結んでいる。

「業界の大多数に足踏みをさせている根本的な障害は、そうした物理法則上の問題だ」とラッセル氏。

スタートアップや自動車メーカー、サプライヤー、投資会社、調査会社の幹部ら20数名を対象とした取材で裏付けられたのは、ライダー技術については盛んに議論されているものの、見解の一致はほとんど見られない、ということだ。

トヨタの研究機関、トヨタ・リサーチ・インスティチュートで自動運転担当シニアバイスプレジデントを務めるライアン・ユースティス氏によれば、トヨタはブラックモアやルミナーなど複数のライダー関連スタートアップと提携しているが、新たなセンサー技術についても検討を続けており、技術の絞り込みにはまだ積極的ではない、という。

「1つの生態系が出現してほしいと考えている。我々が評価したい技術はさまざまあり、技術へのアプローチの長所や短所もいろいろとある。また、競争的な市場によるプレッシャーがあることが望ましい」とユースティス氏は言う。

はるかに成熟が進んでいるレーダー探知技術において見られたように、最終的にはライダー分野も、せいぜい5─6社の主要企業に絞られていくのかもしれない。だが、企業幹部や研究者がロイターに語ったところでは、2025年以降、恐らくは2030年まではそうした状況が生じない可能性が高いという。

IHSマークイットでシニアアナリストを務めるジェレミー・カールソン氏は、「長い助走になりそうだ」と言う。

こうなると、リスクは大きい。せっかく投資した技術が、2025年以降、多数の自動運転車が組立ライン上を流れる頃には時代遅れになっているかもしれない。

自動運転車用ソフトウェアを開発するリノボのクリス・ハイザーCEOは、完成車メーカーが「1つの技術に傾注してしまうと、不利に陥りかねない」と言う。もっと新しく低コストのシステムが登場するかもしれないからだ。

「ライダー」の語源については、オックスフォード英語辞典が言うように「ライト(光)」と「レーダー」の合成語なのか、あるいは「光検知・距離測定(light detection and ranging)」なのか、専門家のあいだでも見解が分かれている「レーザー探知・距離測定」とする文献もある。

また、自動運転車を動かすためにライダー技術が本当に必要かについても、完全な合意があるわけではない。

テスラのマスクCEOは、同社の自動運転支援システム「オートパイロット」は、ライダーを必要としておらず、代わりにレーダー、カメラ、ソフトウェアの組み合わせに頼っていると述べている。

ライダーはまだ比較的未成熟で流動的な技術だ。よく使われているのはベロダイン製ユニットのように不格好な電気機械的デバイスだが、もっとコンパクトな新型で高性能の電子デバイスが台頭しつつある。数量限定でも1万ドル以下で、最終的には大量生産によりわずか200ドルで販売することを意図した製品だ。

フォルクスワーゲン商用車部門における自動運転戦略の評価を担当するトーマス・セドラン氏は5日、ジュネーブ・モーターショーの際にロイターの取材に応じ、コスト削減の必要性について、「ライダー技術における飛躍的なイノベーションが必要だ」と述べた。

自動運転システムの開発において最も積極的なサプライヤーの1つでるアプティブ(APTV.N)は、ライダー関連で、イノビッツ、クアナジー、レダーテックというスタートアップ3社に投資している。またアプティブは、ライダーと組み合わせて使われることの多い探知技術である自動車用レーダーの主要サプライヤーにもなっている。

自動運転車に搭載されたベロダイン社のライダ。オタワで2月撮影(2019年 ロイター/Chris Wattie)

アプティブの最高技術責任者であるグレン・デボス氏によれば、ライダーは、長期を要したレーダー技術の成熟プロセスと同じ道をたどる可能性があるという。需要と製造量が拡大して行くにつれて、技術、サイズ、コストや信頼性が時間をかけて最適化されていく形だ。

「コスト曲線が低下するには、何回か世代交代や反復が必要だろう」と彼は言う。「5年から10年はかかるプロセスだ」

(翻訳:エァクレーレン)

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