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アングル:電気自動車「天国」に続く補助金の道
2017年9月22日 / 06:53 / 1ヶ月前

アングル:電気自動車「天国」に続く補助金の道

[ユダベルク(ノルウェー) 21日 ロイター] - ノルウエーのフィンノイ島は、電気自動車(EV)の所有率が世界一高い。その理由は、本土との間をつなぐトンネルの年間6000ドル(約66万円)の利用料金が、免除になるためだ。

9月21日、ノルウエーのフィンノイ島は、電気自動車の所有率が世界一高い。写真は日産のリーフ。千葉市内で行われた発表会で6日撮影(2017年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

トンネルが開通した2009年以降、米テスラ(TSLA.O)のEVや、日産自動車(7201.T)の「リーフ」の売上が急増し、今ではフィンノイ島を走る車の5台に1台が電気自動車となっている。世界的には、この割合はまだ100台に1台程度だ。

国際エネルギー機関(IEA)によると、昨年ノルウエーで登録された新車の29%が完全なEVまたはプラグインハイブリッド車だった。これは2位オランダの6.4%や、3位スウェーデンの3.4%を大きく上回っている。中国は1・5%で、米国は1%未満に過ぎない。

世界各地でEV販売を支えているのは政府からの補助金だ。ノルウエーで1人当たりのEV所有数が世界一になったのも、やはり世界的に最も手厚い補助金の効果だ。

ノルウエーでは、EV所有者が、何千ドル規模の減税を受けられるほか、各地方自治体も道路利用料金や駐車料金の免除など、さまざまな特典を提供している。

「経済的インセンティブは効果がある。フィンノイ島の様に手厚ければなおさらだ」と、元ノルウエー中銀総裁のSvein Gjedrem氏は指摘する。同氏は、漁業やトマト栽培で知られノルウエー西部に位置する人口3250人のこの群島の出身だ。

政府補助金への依存は、英国やフランスなどが打ち出した、ガソリンやディーゼル車など内燃機関で動く自動車を徐々に減らし、電池で動力を得る車に切り替える政策を複雑なものにしている。電気自動車の方がはるかに高価で、航続距離が短く、充電も長時間かかる。

つまり、数百万人規模の購入者に巨額の財源を割いて補助金を出すことなく、ガソリン車やディーゼル車の新車販売を2040年から禁止するとの公約をこれらの政府が実現するには、電気自動車が今よりずっと安価になる必要があるということだ。

フィンノイ島と、ノルウエー本土にある近隣の町イェルメランの2つの自治体における対照的な経験が、消費者行動に及ぼす補助金の影響の大きさをはっきりと示している。

フィンノイの島民が、近郊にある石油産業の拠点都市スタバンゲルに電気自動車で通勤する場合、化石燃料車で通勤する人に比べてトンネル利用料金を年間5500─6500ドル節約できる。

対照的にイェルメランは、ノルウエーの潮流に反して、EV促進策を何も講じていない。

ロイターに提供された未公表の政府統計によれば、フィンノイ住民のほぼ10人に1人がEVを所有しているが、より面積が広く人口が同規模のイェルメランではその割合は100人に1人以下だ。

「理念の問題ではなく、すべて経済の問題だ」と、イェルメラン役場のWictor Juul氏は、この結果について述べた。

<優遇策の見直しも>

豊富な石油や天然ガス資源の輸出で潤うノルウエーは、世界でも有数の富裕国だ。だがそれでも、財政的な理由や、予想を上回るペースで電気自動車の普及が進んでいることから、EV優遇策は抑制されつつある。

例えば、ノルウェー全土を対象とした駐車料金や国有フェリー、道路の利用料を免除する政令が最近撤廃され、地方自治体ごとの運用に任されることになった。また、最高級EVに対する減税についても、見直し作業が始まっている。

こうした動きは、これまでのところ販売に大きく影響していない。ノルウエー電気自動車協会のクリスチナ・ブ氏は、付加価値税の免除など、他の優遇策は継続されるため「あまり心配していない」と話す。

 9月21日、ノルウエーのフィンノイ島は、電気自動車(EV)の所有率が世界一高い。写真は8日、同島で日産リーフを充電するArne Nordboeさん(2017年 ロイター/Alister Doyle)

一方で、EV優遇策の見直しが実際に影響を及ぼした例も世界にはある。

米ジョージア州で2015年、5000ドルの減税措置が撤回されると日産リーフの販売が激減した。デンマークでも、政府が補助金をカットしたことで、欧州の流れに逆らって昨年のEV輸入が急減した。テスラの販売台数は、前年の2738台から176台に落ち込んだ。

<ノルウエー重視のテスラ>

ノルウエーの電気自動車協会によると、同国ではテスラのEVセダン「モデルS」の本体価格は、税抜きで63万6000クローネ(約910万円)だ。これは独アウディのガソリン車「A7」の32万クローネの倍近い価格だ。

だが実際の購入に際しては、「A7」の方が購入者負担が大きくなる。消費税14万クローネ、二酸化炭素排出税12万5000クローネ、自動車重量税11万クローネなどが加算され、総額69万7000クローネに達するためだ。

対照的に、「モデルS」購入者は少額の廃車料金を前払いするだけでよく、支払総額は63万8000クローネで済む。

「ノルウエーが大好きだ。EV普及で世界をリードしている」とテスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が6月にツイートしたことも不思議ではない。急速充電設備の整備に力を入れるなど、テスラはノルウェーに大きく投資している。

ノルウエー財務省によると、基礎的減税は総額で2016年末までに120億クローネに上る。現在、同国では約14万台の完全EV車が道路を走っている。

これまでにガソリン車やディーゼル車の段階的撤廃を表明したフランスと英国も、EV購入者には手厚い補助金を提供している。

英国では、購入価格の最大35%の値引きが受けられる。フランスでは、ディーゼル車を売ってEVを購入する場合、数千ユーロの優遇がある。

ノルウエーのヘルゲセン環境大臣は、EV補助金制度の負担が大きくなっていることを認めた。ただ、技術革新により、2020年代初頭にはEVの価格は内燃車と競争できるようになると予測する。

フィンノイのHenrik Halleland町長も、その見通しを共有しており、EV販売は、最終的には巨額の補助金なしでも成り立つと見ている。

内燃機関で動く自動車に課される島のトンネル通行料は、5億5000万クローネに上るトンネル建設費用の返済に回される。完済後は、トンネルは全ての車に通行無料となる。

「電気自動車はとても良くなっており、どちらにしても購入するという人が多くなるだろう」と、Hallelannd氏は話す。

とはいえ今は、EVのドライバーにもディーゼルやガソリン車の半分の料金を払わせたいと同氏は考えている。彼自身はEVを購入する予定はなく、通行料を払って建設費用を助けるためにも、マツダの内燃機関自動車を乗り続けると言う。

一方のEV所有者は、悪びれる様子はない。

「政治的な選択の問題だ」と、日産リーフを運転する教師でコメディアンのArne Nordboeさんは言う。「EVの価格がもっともっと安くなり、使い勝手がさらに良くなれば、もっと(通行料を)払うよ」

(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)

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