August 5, 2018 / 11:08 PM / 2 months ago

アングル:電気自動車は大商機、動くサプライヤー各社

[セントポール(米ミネソタ州) 1日 ロイター] - まるで魔法のようだった。デリー・フェイミ氏はビーカーのなかで沸騰する湯にバッテリーを次々に投入した。物理の常識で言えば、これはやってはいけない。電気的にショートを起こしてしまうはずだからだ。

 8月1日、まるで魔法のようだった。デリー・フェイミ氏はビーカーのなかで沸騰する湯にバッテリーを次々に投入した。写真は、3M社の「ノベック」に投入されたリチウムバッテリー。米ミネソタ州セントポールで2018年2月撮影(2018年 ロイター/Nick Carey)

だが、これは水と電気という非常に危険な組み合わせではない。米複合企業スリーエム(3M)(MMM.N)のエンジニアであるフェイミ氏が実験のなかでバッテリーを投入しているのは「ノベック」という引火性・伝導性のない液体だ。3Mはノベックをスーパーコンピューターの冷却用に販売しているが、今ではバッテリー冷却用として自動車メーカーにも売り込みたいと考えている。

バッテリーの温度を安定的に低く維持できれば、電気自動車(EV)の航続距離を伸ばしやすくなる。つまり、バッテリーを低温に保つことで、自動車メーカーにとっては重要な問題の解決につながる可能性がある。EVの一般普及という点で、航続距離の短さが大きな妨げになっているからだ。

「ごらんのように、温度は一定だ」と、フェイミ氏。実験で使われたノベックの温度は、沸点である32度から動かなかった。3Mではこの製品をサーバ冷却用としてデータセンターに販売することも狙っている。

「自動車メーカーはバッテリーからギリギリ最大の能力を引き出す方法を見つけようと努力している」と語るのは、3Mに昨年創設された自動車電化対応プログラム部門を率いるレイ・エビー氏。「それこそまさに3Mの得意分野だ」

主要自動車メーカーは、今後数年のあいだにEVのニューモデルを何百種類も展開する計画だ。コンサルタント会社アリックスパートナーズの試算によれば、2023年までに最大2550億ドル(約28兆円)の投資が流れ込む。

2017年の世界中すべての自動車メーカー及びサプライヤーによる研究開発投資が計1150億ドルで、設備投資が計2340億ドルだったことを考えれば、その規模の大きさが分かる。

こうした投資の多くはサプライヤーに流れる。ただし、依然として内燃エンジン車よりも高いEV製造コストを引き下げる方法をサプライヤーが提供できることが条件になる。3Mや、他の自動車用テクノロジー企業は、他の市場と込みで量産効果を活かせる既存製品をEVに応用する方法を模索している。

米ボルグワーナー(BWA.N)やアプティブ (APTV.N)といった主要サプライヤー、さらにはノルウェーのアルミ大手ノルスク・ハイドロ(NHY.OL)、合成ゴム製造のトリンセオ(TSE.N)などの企業は、EVの航続距離を延ばすための製品開発を進め、EVの販売拡大を阻む大きな障害に取り組んでいる。

サプライヤー側では、自動車メーカーが開発の初期段階で彼らのテクノロジーを採用してくれることを願っている。そうすれば、類似の製品を複数のメーカーに販売できるからだ。

EV開発には定番のアプローチが存在しないため、自動車メーカー各社はそれぞれ独自の道を歩んでおり、サプライヤーにとっては、パーツの選択どころか、素材の選択に至るまで影響を及ぼすまたとないチャンスが訪れている。

コネクター製造のTEコネクティビティ(TEL.N)で輸送ソリューション担当副社長を務めるアラン・アミーキ氏は、「最終的には、この高電圧市場においても規格化が進むことになるだろうが、まだその段階には至っていない」と語る。

そこでTEコネクティビティなどのサプライヤーは、顧客である主要自動車メーカーのエンジニアリング部門内に自社エンジニアによるチームを出向させている。こうすればサプライヤーは、顧客企業の内部で、既存の、あるいは開発中の自社製品・素材を売り込める。

顧客である自動車メーカーは、1回の充電での航続距離の延長、電磁干渉などの技術的な問題の解決、そしてさらに重要な点として今なお収益性の低い車両製造コストの削減に向けた方法を探し求めている。

 米ミシガン州トロイのノルスク・ハイドロの研究施設で、アルミニウム合金を調べる研究員。2018年2月撮影(2018年 ロイター/Nick Carey)

セントポールに本社を置く3Mが自動車電化対応グループを設立したのは、世界各国の自動車メーカーが、主として中国を視野に入れて思い切った投資計画を展開していることを受けたものだ。中国政府は、2019年を起点に電気自動車の生産比率を拡大させる法律を制定している。

3MではEV関連テクノロジーへの投資内容を開示していないが、インゲ・チューリン執行会長は、「大きな、実に大きな投資だ」と話している。

3Mではすでに、米自動車大手ゼネラル・モーターズ (GM.N) の「ボルトEV」の航続距離延長のために温度管理テクノロジーを提供している。

台湾の自動車関連スタートアップである行競科技(Xing Mobility)は、高性能車種「ミスR」のバッテリー冷却用に3Mの「ノベック」を使っている。3Mは他の自動車メーカーもこのテクノロジーの採用を検討していると言うが、その社名は明らかにしなかった。

また3Mでは、携帯電話で用いられるフィルターのテクノロジーをEVに転用し、エネルギー消費量を抑えることによってバッテリーの持続時間を延ばしつつ、これまでより明るいインフォテイメント画面やメーターパネルを製造することを狙っている。

また3Mは、これも携帯電話由来の電磁干渉をカットするテクノロジーも持っている。これによって、たとえば送電線の下でも、さまざまな機能を犠牲にすることなくEVが走行できるようになる。

<航続距離延長につながる軽量化>

車両の軽量化はEVの航続距離延長につながる。

すでに米EV大手テスラ(TSLA.O)向けの供給を行っているノルスク・ハイドロで、北米における先端製品開発を指揮しているマイク・トジア氏によれば、同社は押出成型によるボディフレーム部品と精密配管という2つの既存事業を複合することにより、新たなバッテリーパック冷却手法を開発しているという。

これによってノルスク・ハイドロは、自動車メーカーに対し、さらなる軽量化の方法を提示できるようになり、それによってアルミニウムをもっと魅力的な選択肢にすることができるはずだ。

トジア氏は、「自動車メーカーとしては鉄鋼の方が使い慣れているから、どうしても既存素材と戦うことになる」と言う。「だが、自動車メーカーはより多くの選択肢を積極的に探している。大量生産においてコスト競争力を維持しなければならないからだ」

EVの航続距離延長の探求は、タイヤにまで及んでいる。

トリンセオではドイツ工場への投資を行い、合成ゴムの生産量を33%増大させる。予想される電気自動車生産の成長に対応し、サプライヤーによる高効率製品の開発を支援するためだ。トリンセオのハヤチ・ヤーカダス上級副社長によれば、合成ゴムで作られるタイヤは従来のタイヤに比べてすでに12%の効率向上を実現しているという。

「EVに関して求められる開発サイクルは、従来の自動車産業で我々が経験してきたよりも、かなり短期・迅速なものになっている」とヤーカダス氏は話した。

(翻訳:エァクレーレン)

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