June 7, 2018 / 8:33 AM / 12 days ago

焦点:スペア部品で荒稼ぎか、自動車メーカーの「隠れた武器」

Tom Bergin and Laurence Frost

 6月3日、過去10年間で10億ドル(約1100億円)を超える増収を実現した仏ルノーやプジョー、英ジャガー・ランドローバーといった自動車メーカーの戦略を支援したのは先進的価格設定ソフトだという。写真はジャガーのロゴ。チューリヒで2017年8月撮影(2018年 ロイター/Arnd Wiegmann)

[ロンドン/パリ 3日 ロイター] - 過去10年間で10億ドル(約1100億円)を超える増収を実現した仏ルノー(RENA.PA)やプジョー、英ジャガー・ランドローバーといった自動車メーカーの戦略を支援したのは先進的価格設定ソフトだという。

製作元のアクセンチュアが顧客向けに行ったプレゼンテーションによれば、そのソフトは各メーカーの顧客層がもっとお金を払っても構わないと考えるスペア部品、その望ましい値上げ幅、また値上げすべきではないパーツを特定する機能を持つ。

同ソフト開発を手掛けたローラン・ブーブール氏が裁判所に提出した訴状によれば、「値上げすべきではない部品」にはラジエーターや車体部品などが含まれる。保険各社の支援を受けたフランスの自動車保険修理協会(SRA)がインフレ率算出の際に価格を織り込む部品リストに、これらが含まれる可能性があるからだ。

この訴訟の関連文書は、仏ニュースサイト「メディアパール」が入手したもので、欧州の調査報道ネットワークEICとロイターにも提供された。

ロイターが閲覧した顧客向けプレゼンテーションと訴状の内容は、2009年から2015年までの期間をカバーしている。

ジャガー・ランドローバーは現在も、この「パートネオ」と呼ばれるソフトの使用を認めているが、同ソフトを今も使い続けている自動車メーカーが他にも存在するのか、ロイターは確認できなかった。

アクセンチュアは、このソフトが自動車利用者に不公正になる可能性を否定しており、自動車メーカーの効率改善が狙いだと主張する。

「企業による自社製品の評価・管理を支援するこの種のソリューションは、複数の業界で広く使われている。これらは企業によるスペア部品の見通しやその入手可能性についての分析を手助けするものだ」と同社は声明で説明した。

ブーブール氏は、アクセンチュアが欧州の競争ルールに違反したことにより、自身の評判が傷ついたとして、同社に3300万ユーロ(約43億円)の支払いを求めている。

同氏によれば、アクセンチュアは仏PSAグループ(PEUP.PA)のための価格体系を構築する際に、ルノーから入手した非公開情報を利用しており、他のメーカー向けにも同じことをやった可能性があるという。訴状では、具体的な情報を明らかにしていない。

係争中の訴訟について同氏はコメントできないと、彼の弁護士は語る。アクセンチュアは、同氏の訴えを否定している。

ルノーやジャガー・ランドローバー、プジョーは、スペア部品を巡る価格戦略は合法的であり、自動車オーナーの弱みに付け込むものではないと説明。効率を重視し、消費者の利便性を確保するものだと主張する。

プジョーは声明で、自らのスペア部品戦略は「購買力に関係なく、あらゆる顧客ニーズに対して最高水準の信頼性や安全性で対応できるよう、幅広いスペアパーツを提供する」ためのものだと述べている。

ルノーは、「顧客に多種多彩な高品質のスペアパーツを提供するよう努めており、その価格は、当社が公平かつ公正であると考える変数に基づいて計算されている」と説明。

またジャガー・ランドローバーは、「スペア部品全体のなかで価格設定に一貫性を持たせ、競合他社に対して適切な価格設定ができる」ように「パートネオ」ソフトを利用していたと語った。

フランスの競争監督当局は、過去に同ソフトの検証を行ったが、本格的な反トラスト調査を開始すべき理由は見当たらなかったと語るが、その判断根拠については説明を避けた。

ルノーは、自社の価格設定に関する非公開情報が他の自動車メーカーに流れたという認識はないと語る。PSAはブーブール氏の告発を退けたと言うが、同社のソフト設定の細部についての質問には回答しなかった。

アクセンチュアは、自身の「パートネオ」ソフトについて、「クライアントとのあいだで機密データや要注意データが共有されることはない」と話している。

<「知覚価値」で価格設定>

過去20年、価格設定を支援するソフトは広く利用されてきた。

ペンシルバニア大学のアーロン・ロス教授(コンピューター情報科学論)は、顧客が喜んで払うであろう最高価格を見極めるためにソフトを利用することは、メーカーや小売企業のあいだで長年行われてきた慣習の延長にすぎない、と語る。

 6月3日、過去10年間で10億ドル(約1100億円)を超える増収を実現した仏ルノーやプジョー、英ジャガー・ランドローバーといった自動車メーカーの戦略を支援したのは先進的価格設定ソフトだという。写真は中国の四川省成都市で2016年、PSAグループと東風汽車の中国合弁企業の工場。チャイナデイリー提供(2018年 ロイター)

「ソフトを使わなくても、製品価格は利益最大化を目指して設定される」とロス教授は言う。

アクセンチュアは2013年、独BMW(BMWG.DE)に対して行ったプレゼンテーションのなかで、同社ソフトを使うことにより、顧客企業は部品価格を平均15%引上げることが可能になった、と説明した。

だが、推奨される値上げ幅は製品によって大きく異なる。

ロイターはアクセンチュアがPSA、ホンダ(7267.T)、ボルボ(VOLVb.ST)などクライアント6社を相手に行ったプレゼンテーションを閲覧したが、多くの交換用部品について、価格を2倍にすることが推奨されていた。

2013年10月に行われたボルボ向けのプレゼンテーションでは、「パートネオ」により、自動車・トラックメーカー7社で合計4億1500万ドルの「通年での増収が実現」したと述べている。

ボルボは「パートネオ」ソフトを使っていないと言うが、このプレゼンテーションについてはコメントを拒否している。PSAは、スペア部品価格の値上げの有無や、値上げ幅についてコメントを拒否している。ホンダにもコメントを求めたが回答は得られなかった。

アクセンチュアはプレゼンテーションのなかで、「パートネオ」は知覚価値価格算定方式に依拠している、と述べている。

メーカーでは部品価格について特定のマージンを追求することが多いが、このソフトは、消費者が通常のマージンより高い価格でも喜んで購入するような部品を特定しようと試みている。

顧客向けプレゼンテーションによれば、同ソフトは「自動車購入者から見て価値が高い、あるいは製造コストが高く見える製品は何か」という基準で、値上げ可能な部品を選択する。

アクセンチュアは2009年、仏PSAに対して行ったプレゼンテーションで、あるパーツの本質的価値についての顧客の認識は、大きさや重量、光沢のあるエンブレムや歯車といったアイテムの素材によって決まることが多いと指摘している。

三菱自動車(7211.T)に対するプレゼンテーションでは、銀色の車種別エンブレムの価格を14.42ユーロから87.49ユーロへと6倍以上に値上げしてはどうかと提言。三菱自では、同ソフト利用の有無、またスペアパーツ価格の値上げの有無についてコメントを拒否している。

業界アナリストによれば、自動車部品ビジネスは以前から非常に収益性が高かったという。

メーカー各社は、乗用車販売において10%以上のマージンを得ることに苦労しているが、アクセンチュアは、2013年に行ったBMW南アフリカ事業部向けのプレゼンテーションの中で「スペアパーツの粗利益率は最大90%に達する可能性がある」と述べている。

BMWは「パートネオ」ソフトを利用しないことに決めたと述べているが、詳細な説明は拒否した。

<価格設定への監視>

新車市場は非常に透明性が高く競争も激しいが、スペア部品市場は流動性も透明性も、さほど高くない。アナリストによれば、その一因は、一部の部品が商標や特許によって保護されているからだという。

自動車メーカーに対しては以前から、オーストラリアから米国に至るまで、スペア部品で稼ぎすぎているとの批判が、保険会社や自動車愛好家団体から浴びせられてきた。

「パートネオ」ソフトは主に、消費者に与える印象に基づいてスペア部品の値上げを狙っているが、一方で一定品目における価格上昇に対する保険会社の反発を回避しようとする特徴もある。

ロイターが閲覧した3件の顧客向けプレゼンテーションによれば、同ソフトでは、「第三者による価格監視があるものと、ないもの」という基準で部品を分類している。専門誌や保険会社によって価格が監視されているかどうか、という基準だ。

たとえばフランスでは自動車保険修理協会(SRA)が、自動車部品価格のインフレ率を測定しており、パーツ価格の上昇を抑え込むことを狙って、そのデータを公表している。

ブーブール氏の訴えによれば、SRAが注意深く価格をチェックしている特定の部品については、「パートネオ」ソフトは値上げを避けていたという。同ソフトが現在もそうした動作を継続しているかどうかについて、アクセンチュアはコメントしなかった。

(翻訳:エァクレーレン)

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