September 20, 2018 / 4:35 AM / a month ago

コラム:金融危機で銀行買収の大半失敗、MUFGが成功例

[ニューヨーク/ロンドン 18日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 10年前の世界金融危機では、金融機関同士の合併・買収が数多く誕生した。しかし買収によって苦汁をなめた銀行も多い。いくつかの大失敗と一握りの成功例を振り返ろう。

 9月18日、10年前の世界金融危機では、金融機関同士の合併・買収が数多く誕生した。しかし買収によって苦汁をなめた銀行も多い。写真は7月、ロンドンのロイズ銀行支店前を歩く女性(2018年 ロイター/Toby Melville)

多くの失敗例の原因は、比較的安定していた銀行が、経営難の他行を再生させられると甘く見たことにあった。買い手側は当時の状況を、歴史に刻まれるような世界的金融危機ではなく、通常の景気後退だと踏んでいた。欧州では2008年9月のロイズTSB(LLOY.L)によるHBOSの買収と、その数週間前のコメルツバンク(CBKG.DE)によるドレスナー銀行買収がこの部類に入る。

ロイズの買収は当初、勝ち組に見えた。簿価を下回る価格でHBOSを買うことにより、英国の住宅ローン市場のシェアを20%強に高められれるはずだった。HBOS側はそのころ金融市場での資金調達に苦労しており、身売りによってその苦労から解き放たれるはずだった。しかし1カ月後、統合後のグループは英国政府に救済された。しかも2009年初め、HBOSは予想をはるかに上回る100億ポンドの税引き前損失を発表した。

コメルツ銀行は保険のアリアンツ(ALVG.DE)からほぼ額面並みの価格でドレスナーを買収し、ドイツ最大級のリテール行となった。しかし数カ月後、ドイツ政府から180億ユーロの資金注入を受けることになる。政府は今もコメルツ株を約15%保有しており、同行の株価は簿価の40%前後で推移している。

バンク・オブ・アメリカ(BofA)(BAC.N)の買収は米国最悪の事例と言ってよいだろう。2008年1月、同行は同国最大級の住宅ローン金融機関、カントリーワイドを40億ドルで買収した。これは簿価のわずか3分の1だったため、損失に対して十分なのりしろがあるように見えた。しかしカントリーワイドの損失と罰金は結局、BofAに約400億ドルのコストを負わせることになる。

規制当局からの罰金によって打ちのめされた案件は他にもある。JPモルガン(JPM.N)は政府の支援を得てベアー・スターンズとワシントン・ミューチュアル(WaMu)をそれぞれ約20億ドルで買収した。しかし後に金融危機絡みでJPモルガンに課せられた罰金440億ドルの大半は、買収した両社に起因するものだ。

 9月18日、10年前の世界金融危機では、金融機関同士の合併・買収が数多く誕生した。しかし買収によって苦汁をなめた銀行も多い。都内で4月撮影(2018年 ロイター/Toru Hanai)

一握りだが、成功した事例もある。サンタンデール(SAN.MC)がしたたかなエミリオ・ボティン会長の下で行った英国での買収2件は、抜け目のなさのお手本だ。2008年7月にはアライアンス・レスターを13億ポンドで、その2カ月後にはブラッドフォード・アンド・ビングレーの優良資産を6億ポンドで買い、同社の不良債権は英国の納税者に押しつけた。サンタンデールの英国でのシェアは瞬時に6%から10%に拡大。数年後に襲ったユーロ圏危機では、英国部門の利益がサンタンデールを大いに守ることになった。

しかしBREAKINGVIEWSが選ぶ金融危機絡みの買収の好例は、モルガン・スタンレー(MS.N)に関係するものだ。これは目立つ案件ではなかった。2009年以来、シティ(C.N)から段階的にスミス・バーニーを総額93億ドルで買収。これが功を奏し、モルガン・スタンレーの富裕層向け資産運用部門の税引き前利益(過去1年間)は、2008年の両社の同部門を合わせた額に比べて約3分の2も増えている。

しかし何と言っても絶賛に値するのは三菱UFJフィナンシャルグループ(MUFG)(8306.T)によるモルガン・スタンレーへの出資だ。始まりは不吉だった。米議会が同社の救済を否決した翌日の2009年9月29日、MUFGはモルガンの優先株など90億ドルを購入することで合意し、ダウ工業株30種平均は1日で777ポイントの下落を記録した。

しかしこの投資はMUFGにとって3つの面で大きな成果をもたらした。第1に、劇的に合従連衡が進んだ投資銀行界においてモルガン・スタンレーを存続させる役割を果たしたおかげで、BREAKINGVIEWSの計算によると、MUFGは過去10年間で投資額を配当込みで約3倍に増やすことができた。

第2に、MUFGは現在、モルガン・スタンレーとの合弁事業から利益の約2割を稼ぎ出している。

第3に、事業提携の成功により、MUFGは一から巨大投資銀行と戦うために数十億ドルを投資する必要がなくなった。野村証券(8604.T)によるリーマン・ブラザーズの一部資産買収など、日本企業の海外買収には失敗例が多いだけに、MUFGの成功はなおさら特筆すべきものだ。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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