October 15, 2018 / 2:44 AM / a month ago

コラム:サウジ経済フォーラム、世界大手銀は出席辞退せよ

[ニューヨーク 14日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 世界の金融業界はサウジアラビア政府の残虐行為に加担するのか──。同国に批判的な記者が同国政府の指示により、トルコ・イスタンブールのサウジ総領事館で殺害された疑惑を受け、世界屈指の銀行や投資会社トップはこうした問いを突き付けられている。

サウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子が今月23日から首都リヤドで主催する経済フォーラム「砂漠のダボス会議」への出席を取りやめるべきかどうかの判断を迫られているのだ。

トルコ当局が示した殺害を裏付ける証拠を信じるなら、厳密な人道的意味では出席を辞退すべきだ。しかし事はそう単純ではない。

米国、欧州、日本の大手金融機関は評判の芳しくない多くの国々と取引をしている。「自社がやらなければ他社がやるだけだから」とか、「他国の政治体制を判断する立場にはないから」と言い訳をしながらだ。こうした釈明は、人権侵害で批判されている中国やロシア、その他の国々のケースでは有効かもしれない。

しかしサウジのケースにはもう1つ、複雑な要素が絡む。第1に、サウジは記者殺害を否定している。第2に、お上が明確な指針を示してくれない。トランプ米大統領は殺害疑惑に憤慨したとしながらも、1100億ドルに上るサウジへの武器輸出に影響が及ぶことは望んでいない。トランプ氏はまた、米国の報道機関を「民衆の敵」と呼ぶ人物だ。

ウクライナ南部クリミアの併合を巡って欧米がロシアに制裁を科したように、今回も制裁が発動されるなら銀行も判断しやすくなる。欧米の銀行は今も一部のロシア企業と取引しているが、同国内で開かれる経済フォーラムへの幹部の出席は概ね見送っている。

記者殺害疑惑が浮上する以前から、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子主催のフォーラム出席を辞退する理由はあった。昨年のフォーラム後、皇太子は汚職疑惑を理由に、王子ら数百人を適切な手続きをとらずに拘束した。場所はフォーラムが開かれたのと同じホテルだ。サウジはカタールとの国交断絶など、中東の不安定化を招く外交政策にも関わっている。中でも最悪なのは、今も続行中のイエメンにおける代理戦争だろう。

そしてカネの問題だ。レフィニティブのデータによると、サウジは今年、証券発行やローン、M&Aなどで銀行に合計2億4700万ドルの手数料収入をもたらした。これは国営石油会社サウジアラムコの上場という超大型案件が棚上げになったにもかかわらずだ。

10月14日、世界の金融業界はサウジアラビア政府の残虐行為に加担するのか──。イスタンブールで5日、サウジ人記者ジャマル・カショギ氏の写真を掲げるデモ参加者(2018年 ロイター/Osman Orsal)

最大の受益者は、幹部がフォーラムへの出席を予定していた銀行だ。リーグテーブル首位はJPモルガン(JPM.N)、2位はHSBC(HSBA.L)。シティグループ、スタンダード・チャータード、ゴールドマン・サックス、三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306.T)、BNP(BNPP.PA)、クレディ・アグリコールなども上位に名を連ねる。

JPモルガンは14日、ジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)のフォーラムへの参加見送りを発表した。

これまで法的な意味では、これらの金融機関とサウジとの取引に問題はなかった。しかも昨年実権を握ったムハンマド・ビン・サルマン皇太子は改革派のイメージを打ち出しており、金融関係者や政治家、私を含むジャーナリストはサウジの政治が従来よりリベラルで人道的になるとの期待を抱いた。皇太子は絶対権力を握ってはいるが、自由を求める民衆の気持ちを理解し、サウジ経済の命綱である石油資源が将来的に枯渇するのを見据えているというのが、一致した見方だった。

しかしサウジ人記者の殺害が同国政府の指示だとすれば、すべての西側銀行は来週のフォーラム出席を考え直すべきだ。幹部が出席することは、記者殺害に携わった可能性のある体制を支持しているというメッセージを送ることになりかねない。

自行だけ出席を辞退するのは危ないと考える幹部もいるかもしれない。しかし回避策はある。出席を予定しているすべての銀行と大手機関投資家が共同で辞退を決めれば、一部の機関だけが将来サウジとの取引を制限されるという不利益を被らずにすむ。関係機関の幹部はまず、早急に電話会議の手はずを整えるべきだ。

●背景となるニュース

*サウジアラビア政府は14日、記者殺害疑惑を巡る制裁の脅しには屈せず、制裁には対抗措置をとると表明した。

*米国を拠点とするサウジ人記者ジャマル・カショギ氏は2日にトルコのイスタンブールにあるサウジ総領事館を訪問した後に姿を消した。トルコ政府は総領事館の中で記者が殺害されたと考えているが、サウジは否定している。

*トランプ米大統領は、サウジ政府の殺害関与が事実なら「厳罰」を科すとする一方で、同国への武器売却を止めれば米国は自らを罰することになるとも述べた。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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