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焦点:EV革命の追い風あるか、金属リサイクル会社の挑戦
November 24, 2017 / 11:49 PM / 19 days ago

焦点:EV革命の追い風あるか、金属リサイクル会社の挑戦

Jan Harvey

 11月17日、リサイクル業者は、使用済みバッテリーから金属類をより低コスト、かつ高効率で抽出する技術を磨きつつある。写真は分解前にランドローバー用使用済みリチウムイオン電池の残存量を確認するリサイクル作業員。独クレーフェルトで16日撮影(2017年 ロイター/Wolfgang Rattay)

[ロンドン 17日 ロイター] - リサイクル業者は、使用済みバッテリーから金属類をより低コスト、かつ高効率で抽出する技術を磨きつつある。電気自動車(EV)販売の本格化に伴って、発生するであろうコバルトやリチウムなど金属素材の供給不足を自らの追い風とするためだ。

彼らの大きな悩みは、使用済みバッテリーが少なく、自身のリサイクル技術のコスト効率が向上しないことだ。だが、この業界の先頭を走る企業は、いずれ供給、利益ともに増大するとの自信を抱いている。

「炭酸リチウム及び天然もしくは合成のグラファイト価格は、ここ3、4年で2─3倍にまで上昇し、自動車バッテリーの原材料としてはコバルトを除いて最も貴重なものになった」。独リサイクル企業アキュレックで共同マネージング・ディレクターを務めるアルブレヒト・メルバー氏はそう語る。

「大きな価値あるものが将来リサイクルされるようになる」

現在は年間100万台に満たないEV販売台数だが、2025年には1400万台を超えると期待されており、バッテリー原材料の需要急増に拍車を掛けることになる。

2021年までに対応が必要となる追加需要は、コバルトが年間3万トン、リチウムが同8万1000トンに上る、とデータ分析を専門とするベンチマーク・ミネラル・インテリジェンスは予測する。

コモディティ調査グループCRUは、リサイクルで得られるコバルトが、現在の年間7110トンから、2021年には1万1600トン、2026年には2万4900トンに跳ね上がると予想。これはそれぞれ、市場供給全体の9.7%、17.9%に相当するという。

EV販売台数が昨年50万台に達した中国では、リサイクル業者が膨大な使用済みバッテリーに対応する準備を進めており、他の企業もチャンスを窺っている。

「ハイエンド製品のコバルト酸リチウムイオンバッテリー約1000ポンド(約454キロ)からは、約6000ドル(約67万5000円)相当の電極材料が回収できる」と加金属リサイクル会社アメリカン・マンガネーゼ(AMY.V)のラリー・ロー最高経営責任者(CEO)は語る。

また、ローエンド製品のNCA(ニッケル、コバルト、アルミニウム)バッテリーからは、約1700ドルの同材料が回収できるという。

「これを鉱業と見なすならば、非常に高品質な原材料が得られることになる」と語るローCEO。「バッテリー鉱山と呼んでいいかもしれない」

<ひっ迫するコバルト需給>

ほとんどのEVは、NMC(ニッケル・マンガン・コバルト)を正極に、グラファイトを負極に使ったリチウムイオンバッテリーを動力源としている。

現在、コバルト採掘量が需要に十分対応できるかが懸念されている。なぜなら、世界供給の大半がアフリカ中部のコンゴ(旧ザイール)に依存しており、採掘地域では紛争が頻発しているからだ。コバルト価格は今年に入り2倍以上に上昇している。

主にチリで採掘されるリチウム供給については現時点ではそれほど大きなひっ迫は見られず、アルゼンチンやオーストラリアでも新規生産が開始される予定だ。

それでも、バッテリー向けリチウム供給が、増大するEV販売に追いつくのは厳しいとの見方から、今年に入り、リチウム価格は3割以上上昇し、1トンあたり1万2000ドルという過去最高水準に達している。

リサイクル業者は、リサイクルに回される使用済みバッテリーの不足の他にも、再生可能な形でリチウムを回収するという難題にも直面している。

リサイクル業者の大半は、金属を回収するために使用済みバッテリーを高温に熱している。それは「高温冶金法」と呼ばれるプロセスだ。だが一般的にこれで得られるのはコバルトのみで、ニッケルを回収できる場合もあるが、リチウム抽出はもっと困難でコストがかかる。

リサイクル費用には幅があるが、CRUの試算によれば、炭酸リチウムに転換するコストを1トンあたり最大7000ドルに抑えなければ採算が取れないという。

今のところリチウムは廃棄スラグとなってしまうことが普通で、そのまま投棄するか、建設材料としての用途しかない。だが、これらの金属価格が全般的に上昇するなかで、そうした事情も変わってくるかもしれない。

<素材のマトリックス>

バッテリーからより多くの金属廃棄物を回収するための鍵となるのは、技術の進歩だ。いくつかの企業では、使用済みバッテリーの安定確保さえできれば、リチウムを本来の用途に使えるような形でリサイクル回収できる方法を開発したという。

ベルギーの非鉄大手ユミコア(UMI.BR)は、高温冶金法と湿式冶金法と呼ばれる化学プロセスを組み合わせて、コバルトやニッケル、銅の抽出と合わせ、スラグからリチウムとレアメタル(希土金属)を回収している。

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「バッテリーは複雑な素材のマトリックス(母体)だ」とユミコアは説明する「だが我が社の方法なら、1回のプロセス手段でリチウムを分離、凝縮させ、コバルト、ニッケル、銅との合金を生成することが可能だ」と同社は言う。

ユミコアは、EV用バッテリーを年に約3万5000個処理できる7000トン規模の実験プラントを稼働させている。

実績を積んだ材料リサイクル事業者であるユミコアは、リチウムイオンバッテリーの処理事業者として、欧州内でも最も進んでいる会社だとアナリストは高く評価している。

「リサイクルをテーマに投資するなら、今のところユミコアが最善の選択肢だ」。NSFウェルスマネジメントのグローバル・ニュー・モビリティ・ファンドに投資助言するスイス系コンサルティング会社のポートフォリオマネジャー、トビアス・ビショフ氏はそう語る。

米リトリーブ・テクノロジーズは、2002年以来、加ブリティッシュコロンビア州トレイルの工場でリチウムイオンバッテリーのリサイクルを行っており、コバルトや、ニッケル、銅を回収している。2年前には同バッテリーの処理をする米オハイオ工場を拡張した。

トレイル工場における生産量は2012年から昨年末までに倍増し、約1200トンのバッテリーを処理している。今後5年間も同じペースでの成長を期待している、と同社のトッド・コイ副社長は言う。

他社もリチウムイオンバッテリーのリサイクルに力を注いでいる。

アキュレックは現在、独西部クレフェルトの施設内に、自動車バッテリーをリサイクルする処理能力1000トン規模の実験プラントを設けている。ただし同社によれば、処理量はまだ少ないという。

    豪リチウム開発企業ネオメタルズ(NMT.AX)は、加モントリオールに実験プラントを建設中だ。コバルト、リチウム、ニッケルの抽出に向けて、研究所や小規模施設でテストされたプロセスの開発が目的だ。

    また、同じくカナダでは、アメリカン・マンガネーゼが、本来は低品質マンガン鉱を処理するために開発された技術を活用して、バッテリーに含まれるリチウムの他、コバルトやニッケル、マンガン、そして アルミニウムも100%回収できると胸を張る。

    アメリカン・マンガネーゼでは、このプロセスについてコンセプト実証段階を終えて特許を出願中。次のステップは実験プラントだ。

    <第2の人生>

    しかし、リサイクル事業者にとっては、使用済みバッテリー供給の増大によってスケールメリットが実現しない限り、商業的な開発が困難だ。米リトリーブは、湿式冶金プロセスを用いたリチウムのリサイクル開発には、ボリュームが鍵になると語る。

    「現在のコモディディ価格で考えると、予定される設備投資を正当化するためには、年間約4000トンのバッテリーを処理する必要がある」とリトリーブのコイ副社長は語る。これは、同社が現在処理している量の3倍以上だ。

    「将来的に、2023年以降には、これだけの処理量に達する自信はあるが、市場がまだその段階に至っていない」

    EV販売台数は急速に伸びているが、リチウムイオンバッテリーの寿命は平均8─10年であり、使用済みバッテリーが相当数に達するには10年近くかかることになる。

    アメリカン・マンガネーゼのローグCEOは、当面は不良品バッテリーからの原材料回収に注力して、正常なバッテリーが寿命を迎えるのを待つという。

    ただ、バッテリー製造企業によれば、寿命を迎えたバッテリーも、その後さらに10年ほどは、グリッドストレージ(定置型蓄電池)として「第2の人生」を送るケースが多い。

    例えば、独自動車メーカーBMW(BMWG.DE)は、同社製品に搭載されるバッテリーについて、特にそうした目的で設計しているという。

    グリッドストレージのシステムは、もう自動車を駆動するレベルの性能がなくなったバッテリーを使用し、電気を蓄えることで需給変動に対応できるようにするものだ。もっとも、グリッドストレージによってリサイクルが遅れると、誰もが確信しているわけではない。

    「結局のところ、バッテリーに含まれる原材料が、グリッドストレージとしてのバッテリー自体より価値が高くなるかどうかという問題だ」とCRUのアナリスト、ジョージ・ヘッペル氏は語る。

    「原材料をリサイクルして、それをベースに、新しいテクノロジーによる高効率バッテリーを製造するインセンティブの方が高くなる、と私は考えている」

    ユミコアでは、2020年代には使用済みバッテリーの量は年間10万トン以上に達し、2025年前後に「大量の」使用済みバッテリーが市場に到来すると予測している。それが実現すれば、リサイクル事業者の追い風となるチャンスが現実になるだろう。

    「非常に重要になり得る市場だということは、間違いない」とポートフォリオマネジャーのビショフ氏は言う。「これまでにも注目してきたし、また改めて注目することになるだろう」

    (翻訳:エァクレーレン)

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