November 21, 2018 / 3:47 AM / 21 days ago

コラム:対立深める米中、関係修復は可能か

[19日 ロイター] - 17─18日に開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)の際、首脳宣言の表現を巡る米国提案を議長国パプアニューギニアが支持したことに、中国の外交担当者が反発した。

 11月19日、ますます危険な道を進もうとしている米中首脳は今月末、引き返すチャンスを得ることになる。写真は2017年、北京で握手を交わすトランプ米大統領と習近平国家主席の手(2018年 ロイター/Damir Sagolj)

パプアニューギニアの外務省を突然訪問した彼らは、警察が呼ばれるまで退去しなかったと、豪メディアなどが報じている。

中国側はこれらの報道を否定しており、彼らが小国の当局者を威圧しようと試みたという内容は「まったくのでたらめ」と一蹴した。

だがこうした衝突が報じられること自体、アジア太平洋地域の米同盟諸国と中国を緊張緩和へ導くと期待されていた同会合が、逆に対立をあおってしまったという印象を強烈に裏付けている。

アルゼンチンで月末開催される20カ国・地域(G20)サミットで、トランプ米大統領と中国の習近平国家主席が重要な会談に臨むまであと2週間。そして中国政府が提示した約140項目の対米貿易改善案についてトランプ氏が「現時点でまだ受け入れられない」と述べてから数日後というタイミングで、世界の2大経済大国は、これまで以上に対立の度合いを深めている。

先週末のAPEC首脳会談は、29年の歴史を誇る同会議として初めて、首脳宣言を採択できないまま閉幕した。もっぱら、貿易を巡る表現で対立が際立ったためだ。

これに先立って、南シナ海における米中軍の対立や台湾を巡る緊張も高まっており、米軍の元司令官が「15年以内に米中が戦争状態に陥る可能性が高い」と警告したことは広く報じられた。

全体的に、APEC首脳会談は中国にとって外交上の大きな失敗だったように見受けられる。

習主席は演説で、昨年のダボス会議以来そうしているように、自らをトランプ政権と米国で台頭する保護主義に抵抗するグローバリゼーションと自由貿易の擁護者として自らを描き出そうと試みた。

中国政府は太平洋の島嶼国に12億ドル(約1350億円)以上の融資を提供しているが、その約3分の1がパプアニューギニア向けだ。それだけに、同国で開催された今回の首脳会議で、そうした「ソフト・パワー」の広がりを実証できると期待していた。

だが、域内の首脳と習主席の会談から中国人以外のジャーナリストを締め出すことも含め、中国政府の高圧的な戦術は裏目に出たようだ。

中国はAPECでほぼすべての参加国と対立する羽目に陥った。その一方で、ペンス米副大統領は演説で、米政府が中国による画期的大事業である「一帯一路」構想に反対しており、自ら代替案を提示する意志があることをこれまで以上に明確に示した。

中国のシルクロード構想「一帯一路」は、数十億ドル規模のインフラ投資を含め、アジア、アフリカ、欧州の交流拡大を促進するものだ。

米国と、アジア太平洋域内の主要同盟国である日本、オーストラリア、ニュージーランドは、このところ経済面での影響力をますます露骨に行使するようになっている。18日には、これら4カ国とパプアニューギニアとのあいだで電力インフラへの投資を目的とした数百万ドル規模の協定を締結。これは中国政府に対抗し、米国とオーストラリアの軍事基地を保護するための意識的な動きと見られている。

G20でこうした動きがどう展開されるかは予断を許さない。

APECでペンス副大統領が明らかな攻撃姿勢を示した後だけに、アルゼンチンではトランプ大統領が習主席に対し、もっと融和的なアプローチを取ることもできるだろう。

なんといってもトランプ大統領は、交渉開始時点では強硬姿勢を見せておいて、その後に落とし所を探るという戦略を長年推奨してきた人物だ。他方、11日開催された第1次世界大戦の休戦記念式典におけるマクロン仏大統領との辛辣なやり取りが示したように、G20での米中会談が二国間に横たわる深い溝を強調するだけに終る可能性もある。

米中政権内部の多くが、両国は今後数十年間悪化が見込まれる対立に陥っていると考えている。こうした状況下では、双方に挟まれた国々がどちらか一方を選択するよう迫られ、往々にしてその選択を巡り内部分裂が生じる。これは世界的に活動する以外の選択肢がほとんど無い西側の国際企業にとっても、頭痛の種となる。

中国当局者は6月、米国企業の幹部に対し、彼らの会社が激化する対米貿易摩擦の犠牲となるリスクを犯している、と明確に警告した。米国で活動する中国企業もやはり高まるプレッシャーを感じている。

米中政府はまた、他国に対してますます露骨に圧力をかけるようになっている。たとえばポンペオ米国務長官は10月、パナマなどの中南米諸国に対し中国との協定を結ばないよう勧告した。

ベネズエラやスリランカ、フィリピンといった地域も国情も異なる国々において、中国寄りの独裁的勢力と西側寄りの勢力という政治の二極化が進んでおり、地政学的な色合いの濃い力関係を呈している。

数百人もの超法規的な殺害を伴う自らの麻薬撲滅作戦について米国のオバマ前政権から批判を受けて以来、明らかに中国寄りにシフトしていたフィリピンのドゥテルテ大統領は先週、南シナ海での米軍活動を批判し、中国政府はすでにこの海域を「手中に収めて」いると述べた。

習主席のフィリピン訪問を控えたこの発言は、領有権が争われている環礁などを占拠・軍事化する中国の動きに抵抗しようとしているフィリピン軍部や政界主流派の多くと対立するものだと捉えられている。

米中対立の主要な原因は、依然として貿易摩擦だが、こうした南シナ海などでの軍事的対立が最も危険なものになる可能性がある。マティス米国防長官の訪中キャンセルや、今夏行われた米軍主導の環太平洋合同演習(リムパック)に中国が招待されなかったことなどにより、米中の軍事交流は、ここ数カ月かなり低調となっている。

恐らく南シナ海における力の誇示よりもさらに深刻なのは、中国政府が「反抗的な属州」とみなす台湾を巡って、米中が注力を強めているように見える点だ。

こうした力関係に、域内諸国は憂慮を強め、不安を感じているが、どのように行動すべきかは、いまだ決めかねている。

中国との関係や外交交流を改善しようと独自の努力を進めている最も分かりやすい例が日本だ。

APECでの顛末によって、日本は一層その努力を強めるだろうし、北朝鮮が改めて挑発的言動や兵器試験を行っているとなれば、なおさらだ。恐らく北朝鮮のこうした動きは、孤立を深める中国が、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長を抑制することに、それほど構っていられないと感じている兆候だろう。

ますます危険な道を進もうとしている米中首脳は今月末、引き返すチャンスを得ることになる。彼らが引き返せないとすれば、あらゆる関係諸国が今後、非常に不愉快な驚きに直面することになりかねない。

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*筆者はロイターのコラムニスト。元ロイターの防衛担当記者で、現在はシンクタンク「Project for Study of the 21st Century(PS21)」を立ち上げ、理事を務める。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。(翻訳:エァクレーレン)

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