July 25, 2018 / 2:55 AM / 5 months ago

コラム:迫る制裁再開、イラン核合意を救う道はあるか

[23日 ロイター] - 8月に設定された米国の対イラン制裁再開の期日が迫るなか、国際企業のイラン撤退の流れが加速している。

7月23日、8月に設定された米国の対イラン制裁再開の期日が迫るなか、国際企業のイラン撤退の流れが加速している。テヘランで2012年2月撮影(2018年 ロイター/Morteza Nikoubazl)

核開発計画の制限と引き換えにイランへの国際制裁を解除する2015年の「包括的共同作業計画(JCPOA)」から脱退するとのトランプ米大統領の決定により、この核合意は瀬戸際に立たされていた。

コンテナ海運大手の仏CMA・CGMのロドルフ・サーデ最高経営責任者(CEO)は7日、「トランプ政権」を理由に、イランとの取引から撤退すると発表した。

その直前の6日には、イランのザリフ外相が英国、フランス、ドイツ、中国、ロシアの各国代表とウィーンで外相級会合を開いたが、打開策は得られなかった。こうした会合が開かれるのは、トランプ氏が5月にイラン核合意からの撤退を表明して以来初めてで、米国の制裁による損害を埋め合わせる経済支援策が協議された。

弱体化した核合意が今後たどる運命は、現段階では3つ考えられる。存続か、突然死か、緩やかな消滅か、だ。

合意成立後、イラン指導部は、自国の利益が保たれる限り合意にとどまると表明。合意はイラン経済に利益をもたらし続けている。同合意を棚上げするという米政権の決定後も、イラン指導部の立場は変わらなかった。

ウィーンでの外相級会合の直前、ロウハニ大統領はイラン核合意にとどまる姿勢を改めて強調した。だが会合の数日後、ドイツのメルケル首相との電話会談で、欧州連合(EU)が提示した穴埋め策は「明確な道筋を欠く」もので「失望した」と述べた。

JCPOAの順守をイラン指導部に訴えるためにEU側が提示した穴埋め策は、欧州投資銀行(EIB)によるイランへのサービス提供を保証し、イランで活動する欧州企業を米国の2次制裁から守る条項の対象とし、米金融システムを迂回(うかい)するイラン中央銀行への直接送金の仕組みを確立することの3本が柱だった。

ルドリアン仏外相によると、8月までに欧州が米制裁からイランを守る仕組みをつくり上げることは恐らく難しいものの、損害を埋め合わせる経済支援策は、第2次制裁が発動する11月4日までに導入できる可能性があるという。

国内外で大きな展開がない限り、イラン指導部は欧州の努力を眺めつつ、11月まで待つ公算が大きい。イラン原子力庁のカマルバンディ報道官が自国政府が欧州側からインセンティブの提示を受けており、「イランの要求に沿う要素もあるが、さらなる検討が必要だ」と17日述べたことは、留意すべきだ。

だがイランの最高指導者ハメネイ師は、核合意を完全に破棄するという「革命的」な決断を示し、反対傾向を強めているイラン世論の信頼を取り戻すチャンスとして、弱体化した核合意を利用する誘惑に駆られる可能性がある。そもそも、2013年に主要国との核交渉入りを可能にしたのは、ハメネイ師の「英雄的な柔軟姿勢」だった。米国の脱退と制裁再開により、画期的な核合意が失敗に直面していることは、イランの最高指導者の政治的失点となっている。

ハメネイ師がこうした決断をすれば、イランは以前より大規模かつ早いペースで核開発を再開し、核合意は突然崩壊するだろう。

しかし、イラン指導部がそのような決断をすれば、中国やロシアとの間に溝が生じ、欧州だけでなく西側諸国とも衝突する可能性が高くなる。国連安全保障理事会がイランに制裁を再開することにもつながる。

こうした理由や、イスラエルが軍事行動に出ることへの懸念から、イラン指導部が核合意の「強制終了」に動く可能性は低い。

国内で政府に反対する立場をとる人が増え、隣国との緊張が高まるなかで他国の軍事行動を招いたり、国連安保理がイラン核問題を再び取り上げたりする事態を避けるため、イランは恐らく、欧州による調整が失敗に終わった場合、JCPOAから断固離脱するのではなく、徐々に抜け出すことを狙うだろう。

なぜなら、たとえ欧州がイランを米制裁から保護するため政治的意思を結集したとしても、長期的に米国の圧力に耐えることは困難であり、イラン政府にミサイル開発や地域への介入に関する譲歩を見返りとして新たに欧州が求めてくる可能性があるという結論に、イラン政府が達したとみられるからだ。

ホイヤーEIB総裁は最近、イラン核合意を救うというEUの約束の実現性を疑問視し、イランについて「われわれが積極的な役割を果たせない」ような国だとして、EIBがイランに投資すれば同行の他の地域での活動が脅かされるおそれがあると警告した。

トランプ大統領がイラン核合意から撤退したことを受けて、ハメネイ師は6月4日に最初の反応を示し、19万SWU(分離作業量)のウラン濃縮能力を「可及的速やか」に、しかし「現段階ではJCPOAの範囲内で」達成するための土台づくりを原子力庁に指示した。(イランのウラン濃縮能力は、核合意前は1万SWU前後、現在では6000SWU程度と推定されている。)

この数日前、ロウハニ師は原子力庁に「上限なき工業規模の濃縮」に備えるよう指示したばかりだった。

現実には、「徐々に抜け出す」とは、核合意の選択的順守という形を取るかもしれない。国際原子力機関(IAEA)の査察官による核施設へのアクセスを制限したり遅らせたりすることが考えられる。米政府による5月の核合意脱退後に初めて出した報告書で、IAEAは、イランがJCPOAの下で合意した追加議定書で自主的に進めると約束した「補完的アクセス」を遅らせているとして、非難をにじませた。

欧州とロシア、中国が、米国のイラン制裁を中和することに失敗した場合、核合意の緩やかな消滅がもっとも起こりうる結果だろう。

直接戦争へとつながるわけではないにしても、このシナリオは著しく地域の緊張を強め、中東情勢はさらに不安定になるだろう。

ロウハニ師が22日に「すべての戦争の母」という演説を行い、それに対してトランプ米大統領が「米国を絶対に絶対に脅すな」とすべて大文字でツイートして反発するなど、米国とイランの間の「舌戦」はエスカレートしている。

欧州などを味方につなぎとめて、米軍の軍事行動の防波堤としたいイランの意思が、核合意の不完全ながらも最終的な救いの手となるかもしれない。

*筆者はスウェーデンのルンド大学の博士候補生。イラン・インターナショナルテレビのプロデューサーも務める。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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