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焦点:仮想通貨で資金調達、ICO規制強化が招く「国外脱出」
December 1, 2017 / 2:12 AM / 14 days ago

焦点:仮想通貨で資金調達、ICO規制強化が招く「国外脱出」

Gertrude Chavez-Dreyfuss

11月28日、仮想通貨のデリバティブ取引事業を経営する米起業家バラス・ラオ氏が、事業資金の調達に最適な場所を検討した際、彼のリストに米国は入っていなかった。写真はリガで11月撮影(2017年 ロイター/Ints Kalnins)

[ニューヨーク 28日 ロイター] - 仮想通貨のデリバティブ取引事業を経営する米起業家バラス・ラオ氏が、事業資金の調達に最適な場所を検討した際、彼のリストに米国は入っていなかった。

米サンディエゴを拠点とする元技術者で、ウオール街の大手金融機関でも勤務経験のあるラオ氏が、代わりに選んだのはアフリカ東部の島国セーシェルだ。

このような決断を下す起業家は、彼1人ではない。

仮想通貨技術を使った「イニシャル・コイン・オファリング(新規仮想通貨公開=ICO)」と呼ばれる資金調達手法に対する当局の取り締まり強化を受け、起業家の多くが、より仮想通貨に寛容で税金の安い場所へとビジネスを移転させている。

数十社の新興企業が今年に入り、シンガポールやスイス、東欧やカリブ諸国に押し寄せていることが、ロイターが入手した企業の登記情報や起業家への取材で明らかになった。

2009年に誕生した最も有名な「ビットコイン」のように、ICOで使われる仮想通貨も、暗号化技術とブロックチェーン(分散型台帳)と呼ばれる取引記録データベースを使って、当局の規制下にある銀行や従来型決済システムを介さずに、迅速かつ匿名で資金の移転を行うことができる。

仮想通貨調査会社スミス+クラウンの調査結果は、ICO抑制へ乗り出した各国規制当局の試みが、事業者を他の拠点に移転させる結果に終わってしまうリスクを露呈している。

米国で新興企業が今年実施されたICOは34件で、世界で最多だった。だがそれは、規制環境が適していたからというより、世界の「テクノロジーハブ」としてのシリコンバレーの役割や、米国の金融市場の奥深さを反映した結果だ。

スミス+クラウンによると、シンガポールでは21件を記録しており、2016年の1件から急増。前年の3件から19件に増えたスイスがそれに続いた。中欧は前年比13件増の14件、カリブ諸国は同8件増の10件だった。

「スイスとシンガポールの人気が高いことが確認された。だが、米国は多額の調達を狙う企業向けの場所として残る可能性がある」と、スミス+クラウンの調査責任者Matt Chwierut氏は語る。

<スイスの利点>

スイスでは特定のICO規則はないものの、一部の取引要素は既存する規制の対象になり得ると、スイス連邦金融市場監督機構(FINMA)は9月に表明している。

ICO上位5件のうち4件、調達総額にして6億ドル超が、チューリヒの南に位置するツークで登録された企業が実施している。ツークは税金が安く、世界の「仮想通貨バレー」として知られている。

対照的に、中国と韓国は今年に入りICOを禁止した。米国やマレーシア、ドバイ、英国、ドイツの各規制当局は、監督不十分な現状では、投資家は詐欺やハッキング、盗難などのリスクにさらされると警告している。

ICOに「友好的」な規制環境にある国や自治体で件数が急増している実態は、国の規制当局による取り締まりの難しさを浮き彫りにした。規制当局自身も、その困難さに気付き始めた。

「われわれは他の監督機関と話し合っている、そして2国間の対話があちこちで行われていると認識している」とドバイ金融サービス機構はロイターにメールで回答した。

米証券取引委員会(SEC)は、ICO実施企業が管轄外の場所に拠点を移している現状について、コメントしなかった。

英金融行動監視機構(FCA)とマレーシア証券委員会は、ICOは高リスクの投機的な投資だということを、個人投資家は留意すべきだとの主張を繰り返した。

ドイツ連邦金融サービス監督庁の広報担当者は、欧州連合(EU)内での「ホッピング」は、EUの監督当局もドイツと同じ立場を取っているため、「ほとんど無益だ」と回答する。

ドバイの当局者は、事業者が友好的環境を求めること自体は異例ではないが、監督当局はICOのリスクについて警告する必要があると述べた。韓国と中国の当局からはコメントを得られなかった。

米国では、SECが7月25日に証券取引としてCIOが規制対象となり得るとの判断を下したことで、仮想通貨市場に冷や水を浴びせた。しかし、新興企業側が、企業持ち分ではなくサービスや製品へのアクセスを与える「ユーティリティトークン」を発行することで、規制回避が可能と考えたため、それは一時的な影響にとどまった。

とはいえ、規制当局の見解が変わる可能性への懸念から、米企業は国外でのICO実施を検討するようになった。

「われわれの法律顧問は、規制当局がユーティリティトークン規制を変更する可能性は大いにあるとみている。安全のため、ICOは米国外で実施されるべきだ」と、ケイマン諸島で2月にICOを計画している米オンライン雇用サービス会社Job.comの共同創業者アラン・スチュワート氏は語る。

実際、ロイターが取材した新興企業15社のうち、米国でICOを実施したのは、10月に1500万ドルを調達したAirfoxのみだった。他は、国外でのICOを実施済みか、これから予定している。

仮想通貨の先物取引プラットフォームLeverjを立ち上げた前出のラオ氏は、仮想通貨にオープンだという理由から、セーシェルをICOの舞台として選んだという。「ここでは、仮想通貨に関してネガティブな見解を何も出していない」と、ラオ氏は語った。

<ものの数分で調達>

フィンテック調査会社Autonomous NEXTによると、ICOによる資金調達は、2016年が1年間で1億ドルだったのに対し、今年は11月半ばまでに約36億ドルに達した。

通常、ICO発行企業がホワイトペーパーと呼ばれる事業計画書を公表すると、新たなICOに関する情報がオンラインで拡散される。投資家は、企業サイトを通じ、ビットコインとイーサリアムという2大仮想通貨のいずれかで払い込むことが多い。

ほとんど審査されることもなく、ものの数分で新興企業が巨額の資金を得ることができるICOの手軽さは、監督当局の警戒を呼んでいる。だが統一されたアプローチがないため、各国当局はこの新たな資金調達市場に対して、影響力を行使できないままだ。

「各国政府が組織だったやり方で協力するのは難しい」。ブロックチェーンの専門弁護士を多数抱えるニューヨークの法律事務所Hogan Lovellsのパートナー、ルイス・コーエン氏はそう指摘する。

「さまざまな監督機関が、ICOを各自のレンズを通して見ており、完全に見解が一致するのは困難だ」

動きが素早く、規制の少ない仮想通貨企業は、国境を軽々と越えていく。

例えば、流動性に乏しい資産を自身の仮想通貨取引所で取引できるトークンに転換することを目指すBANKEXは、米デラウェア州に登録しているが、ケイマン諸島で今月ICOを実施する予定だと、同社のイゴール・フメル最高経営責任者(CEO)は語る。

前述のコーエン氏は、ICOを禁止することは愚かだが、何らかの規制か、自主規制の導入は必要だと指摘する。

「何らかのカードレールが必要かもしれない。新しい革新的なビジネスモデルを築こうとする真面目なプラットフォームと、あぶく銭を得る手段としてICOを考える不誠実な企業が、一緒くたにされるのは、フェアではない」

(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)

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