June 10, 2014 / 1:47 AM / 4 years ago

ブログ:「アナと雪の女王」と潜在成長率

伊賀 大記

[東京 10日 ロイター] - 「アナと雪の女王」がヒットしたことで、ちょっと安心した。映画の関係者というわけではない。最近、映画も音楽も大ヒットがないと感じていたからだ。

昔は、誰もが知っているヒット曲や映画があったが、最近はどれも小粒に感じるのは筆者だけではないだろう。映画の興行収入は過去最高らしいが、3Dなどで単価が高くなっている影響が大きいのではないか。

金融市場では今、潜在成長率についての議論が盛んだ。経済の「実力」ともいえる潜在成長率が下がっているから、景気が良いにもかかわらず、金利は上がらなくなっているとの見方が、足元の世界的な低金利現象の要因として語られている。英語では「secular stagnation(長期停滞)」と言うらしい。

過去の作品のリメイク、どこかで聞いたようなストーリーやメロディー、そんなものばかり目につくなかで、人間の想像力も、もしかして限界なのではないか、潜在成長率も本当に下がっているのではないか、と考えてしまっていた。だから、「アナと雪の女王」の大ヒットはかなり嬉しく感じられたのだ。

メロディーの限界説というのがある。12音階の組み合わせは「無限」としても、メロディーとしてちゃんと成立する組み合わせは意外に少なく、そろそろ限界に近いのではないかという説だ。400匹の猿が400台のタイプライターを400年叩き続けると、そのうちの一匹がシェイクスピアと全く同じ作品を書くだろう、という例えもある。

世界の特許数(国際出願)だけみれば、過去最高を更新し、さらに増え続けている。しかし、人口当たりの特許数は減少しているとの指摘もある。また最近の発明は小粒で、もっぱら一部の人にしか恩恵を与えていないと言われる。昔の鉄道や自動車といった発明は、あまねく人々に恩恵を与え、産業を雇用を拡大させてきた。

世界経済をけん引してきた先進国が停滞期間に入り、今度は新興国が引っ張っていってくれると期待していたら、雲行きが怪しくなってきた。開発が拡大する一方、環境汚染も気になる。芸術も発明も目ぼしいところは見つけられてしまった。世界的に「フロンティア」が失われつつあるのが、潜在成長率低下説の背景にあるのかもしれない。

しかし、前出のメロディーの限界説は昔から言われていたことだ。その間も、素晴らしい音楽や映画は生み出されてきた。大ヒットがないのは、消費者の好みが多様化しただけという可能性もある。インターネットや携帯電話、スマホは、人々の生活をがらりと変え、生産性も上げたと言ってもいいと思う。ヒット商品はこれまでの姿をしていないだけなのではないか。

スマホはパソコンやカメラ、ビデオ、音楽プレーヤー、ゲームなど多種多様な機器を一台に詰め込んだ「凝縮する発明」だ。産業や雇用が小さくなるという批判もあるようだが、これはかつて、様々な機械が発明されたときに起きたのと同じ批判でもある。新しい機械は、一部の産業を衰退させたが、生産性は上昇し、消費者は使わなくてすむようになったお金を別のところで使い、産業や雇用、そして経済を発展させてきた。

「アナと雪の女王」はCG(コンピューター・グラフィクス)を使ったアニメ映画だが、CGをポピュラーにしたピクサーを作ったのはiPhone(アイフォーン)を発明したスティーブ・ジョブズだ。今の停滞感など、1人の「天才」の出現が吹き飛ばしてしまうかもしれない。そういう期待感はまだある。

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