Reuters logo
ブログ:「マイナス金利詐欺」に御注意を
2016年2月6日 / 22:54 / 2年前

ブログ:「マイナス金利詐欺」に御注意を

伊賀 大記

 2月7日、経済学的には、金利低下は経済にとってプラスとされる。しかし、金利がマイナスにまで落ち込んだらどうなるのか、教科書には載っていない。写真は一万円札。2013年、都内で撮影(2015年 ロイター/Shohei Miyano)

[東京 7日 ロイター] - 日銀のマイナス金利導入について、あるテレビ番組で「影響は限定的」と答えたエコノミスト氏。すぐさま自身の母親から電話があったそうだ。「本当に大丈夫なんだろうね」。

個人の預金金利はマイナスにならないからと安心させたそうだが、日本人の預金元本に対する過敏なまでの神経質さを感じたという。「マイナス金利になれば、お宅の預金は目減りしますよ。だからうちに預けてくださいとか、今すぐ引き出してください、といったマイナス金利詐欺が流行るのではないか」と心配する。

経済学的には、金利低下は経済にとってプラスとされる。利息の目減りなどマイナス面はあるものの、投資や事業の促進などの効果の方が上回るというのが理由だ。しかし、金利がマイナスにまで落ち込んだらどうなるのか、教科書には載っていない。日銀に先んじた欧州中央銀行(ECB)も経験はまだ1年半と浅い。経済にどういう影響が出るか実は誰もよくわかっていない実験的な政策なのだ。

不動産ローンなどは低下するが、預金金利も低下する。消費に与える影響はまだ不明だ。資金調達金利の低下でノンバンクなどはメリットを受けると期待されているものの、利ザヤで稼ぐ銀行などの収益は圧迫される。債券から株式などリスク資産に資金シフトをもたらすかもしれないが、業績が伴わなければ、「歪んだ株高」となってしまう。

もし預金金利がマイナスになり、個人が資金を引き出しにかかれば、取り付け騒ぎが起きかねない。預金者の「反乱」をおそれる金融機関は預金金利をマイナスにはしないとみられているが、日銀の黒田東彦総裁は、必要があれば追加緩和を躊躇(ちゅうちょ)しないと話している。

マイナス金利拡大にどこまで金融機関が耐えられるか。定期預金はともかく、普通預金の金利はすぐ変わる。家計の普通預金を含む流動性預金は高齢化を背景にこの15年で3倍の350兆円に増えた(日銀資金循環統計、定期預金は減少)。また「手数料」という名の金利を取られるかもしれない。実際、欧州の一部金融機関では、ATMの手数料引き上げなどがみられ始めている。

日銀がマイナス金利導入を決めてから1週間。国債市場の金利は史上最低水準に低下しているが、日本株やドル/円は上昇分を帳消しにするどころか、大きく割り込んでしまった。金融マーケットに対する効果は、今のところ「黒田バズーカ」と大きく異なる。

デフレ脱却は重要だが、「未踏の地」に一段と踏み入ってきた金融政策に対し、成長戦略は遅々として進まない。マネーをいくら増やしても有望なビジネスが乏しいのが現状だ。アベノミクスは各政策のスピード感がそろわないまま、歪みが一段と大きくなっている。

私たちの行動規範:トムソン・ロイター「信頼の原則」
0 : 0
  • narrow-browser-and-phone
  • medium-browser-and-portrait-tablet
  • landscape-tablet
  • medium-wide-browser
  • wide-browser-and-larger
  • medium-browser-and-landscape-tablet
  • medium-wide-browser-and-larger
  • above-phone
  • portrait-tablet-and-above
  • above-portrait-tablet
  • landscape-tablet-and-above
  • landscape-tablet-and-medium-wide-browser
  • portrait-tablet-and-below
  • landscape-tablet-and-below