December 11, 2014 / 3:37 AM / 5 years ago

ブログ:辣腕弁護士が問う「日本と原発」

[東京 11日 ロイター] - 映画「日本と原発」を観た。中部電力(9502.T)浜岡原発の運転差し止め訴訟など、裁判を通じて脱原発活動を続けてきた河合弘之弁護士が監督、主演したドキュメンタリー作品だ。

 写真は先月、東京電力・福島第一原発にて、汚染水を処理する多核種除去設備(ALPS)の前に立つ防護服姿の同社スタッフ。代表撮影(2014年 ロイター)

「私たちは原発で幸せですか」と問い掛ける映画の、娯楽性や芸術的価値についてコメントすることは筆者にはできないが、エンディングの交響曲が印象的だった。

佐村河内守氏のゴーストライターだったことを告白して話題になった新垣隆氏の作曲だ。全国の原発を次々に映し出しながら流れる荘厳な曲を聞くことができただけで、入場料1500円は十分に元が取れたと思う。

1980年代後半のバブル期に起きた数多くの経済事件に弁護士として立ち会った河合氏は、東京都心の超一等地にオフィスを構える辣腕の仕事人としての顔を持つ。

上映終了後、あいさつに立った同氏は、「私は本気で日本から原発をなくそうと思っている。私を助けてほしい。助けていただく方法はこの映画を拡散することです」と呼びかけた。

上映した六本木のシアターは超満員だったものの、小さな箱だ。入場者の多くは脱原発に共感する人たちだったと思う。原発問題に無関心な人にこそ観てもらいたいと思いながら、河合氏の言葉に耳を傾けていた客もいただろう。

ブログでこの映画のことを取り上げることは、河合弁護士が唱える脱原発の主張を広めることに荷担していると思われるだろうか。そう捉えられても仕方ないかもしれない。しかし、筆者の本心はちょっと違う。

映画を観る少し前、河合氏に初めて会い聞いた内容には、原発の是非よりもっと重要だと感じたことがあり、それを伝えたいというのが本稿の狙いだ。

3.11以前にも全国各地で多数の原発訴訟があったが、若干の例外を除いて反原発派の住民は敗れ続けてきた。

「しょせん、裁判官たちは国策に反するような判決を出せないのではないか」と河合氏に問うと、同氏は「裁判は民主主義社会の安全弁だ。民主主義だけだと、衆愚政治になった場合や、大衆が激情型行動をとった時に取り返しがつかない。そういう時のためのインフラとして裁判制度がある。今こそ安全弁が働くべきだ」と語気と強めた。

まもなく衆議院選挙の投開票日。3.11以降、3度目の国政選挙だ。2年前の衆議院選挙、昨年7月の参議院選挙では、程度の差こそあれ、脱原発を掲げた政党の比例代表における得票率(全国)を合計すると、選挙に圧勝した自民党を上回った。今年2月の都知事選では票の分散も影響し、脱原発派候補は落選した。

各種世論調査をみると、原発再稼働に反対の意見はおおむね6割近くを占めている。選挙では、単一の政策課題が争点になるわけではないが、原発に限って言えば、「国民の意見が現実の政治、議席数にまったく反映されないねじれ現象が起きている」(河合氏)との指摘通りかもしれない。

間近に迫った総選挙は、有権者の関心の低さも手伝い、各マスコミが原発再稼働に積極的な自民党圧勝の予想を報じている。その通りの結果なら、原子力規制委員会により新規制基準適合が認められ、「地元同意」を取り付けた九州電力(9508.T)川内原発を先頭に再稼働が次々と進んで、「原発回帰」が鮮明になると考える人々も多いに違いない。

一方で、川内原発をめぐっては、周辺住民らが再稼働差し止めの仮処分を鹿児島地裁に申請。関係者によると年明け以降に地裁の決定が出る見通しだ。

河合氏は、「司法は『千万人といえども吾往かん』と正義を貫ける。例えば、福井地裁が、運転してはならないとした大飯原発の事例がそうだった」と指摘した。

「自ら省みてやましいことがなければ、千万人の反対者があっても恐れることなくわが道を進もう」(広辞苑)との孟子からの引用だ。同調圧力が強いこの国で司法が独立性を発揮するのか。原発問題の隠れたヤマ場だと思う。

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