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ブログ:フィリピン麻薬戦争、刑務所が「天国」に
2016年11月18日 / 08:36 / 1年前

ブログ:フィリピン麻薬戦争、刑務所が「天国」に

[9日 ロイター] - ドラッグ使用の罪で逮捕され、裁判を待つジェイソン・マダランさんは、フィリピン首都マニラにある刑務所の、蒸し暑く、窓のない監房にいる。

ここケソンシティー刑務所はあまりの過密状態のため、収容者は廊下や階段の吹き抜けで寝なくてはならない。トイレも1つ当たり、他の収容者150人と共有する。

だが同国のドゥテルテ大統領が塀の外で「麻薬戦争」を激化させているなか、自分はラッキーだとマダランさんは話す。

マニラで10月撮影(2016年 ロイター/DAMIR SAGOLJ)

マニラで10月撮影(2016年 ロイター/DAMIR SAGOLJ)

「ここの方が安全。外では、警察は撃ちたければ撃ってきて、その後に、おまえは麻薬の売人だと言うんだ」

フィリピン警察は、正当な捜査において麻薬容疑者だけに発砲していると説明する。

同警察によれば、ドゥテルテ氏が6月30日に大統領に就任して以降、約2300人の麻薬使用者と麻薬密売人が、警察の捜査もしくは自警団員とみられる人物によって殺害された。

さらに数千人が逮捕され、すでにあふれ返っている同国の刑務所は限界に達している。

ケソンシティー刑務所の収容人数は800人だが、現在は3400人を超える。

マニラで10月撮影(2016年 ロイター/DAMIR SAGOLJ)

ケソンシティー刑務所から法廷審問に向かうため、収容者のリストをチェックする刑務官。マニラで10月撮影(2016年 ロイター/DAMIR SAGOLJ)

8月半ばにドゥテルテ大統領の麻薬撲滅運動が激しくなると、ケソンシティー刑務所が収容者を他の刑務所に送るよう訴えるまで、同刑務所の収容人数は一時4000人を超えた。

刑務所のデータによると、収容者の3分の2が麻薬関連犯罪で収監されている。

ケソンシティー刑務所は、アジア全域で人気の、強い中毒性を持つ薬物メタンフェタミンの爆発的使用によってもたらさる地域的な危機の縮図である。

国連薬物犯罪事務所(UNODC)によると、タイやミャンマーなどの国々の刑務所も、主に麻薬関連犯罪の収容者のせいで慢性的な過密状態にある。

暇をつぶす収容者たち。マニラで10月撮影(2016年 ロイター/DAMIR SAGOLJ)

暇をつぶす収容者たち。マニラで10月撮影(2016年 ロイター/DAMIR SAGOLJ)

しかし、英ロンドン大学バークベック校の犯罪政策研究所(ICPR)によれば、フィリピンの刑務所はアジアのなかでも最も過密しており、占有率は316%に上り、ハイチ、ベナンに次ぐ世界3位に位置づけられている。

マニラで10月撮影(2016年 ロイター/DAMIR SAGOLJ)

マニラで10月撮影(2016年 ロイター/DAMIR SAGOLJ)

刑務所の過密状態は「収容者の安全と健康状態において、非常に大きな課題」をもたらしている、とケソンシティー刑務所のアバルカ刑務官は語る。

同刑務官によれば、収容者はよく眠れず、病気になりやすく、いつ衝突が発生してもおかしくない状態だという。同刑務所では7月、汚染水からコレラが発生した。

マニラで10月撮影(2016年 ロイター/DAMIR SAGOLJ)

マニラで10月撮影(2016年 ロイター/DAMIR SAGOLJ)

 11月9日、フィリピン首都マニラにあるケソンシティー刑務所はあまりの過密状態のため、収容者は廊下や階段の吹き抜けで寝なくてはならないが、同国のドゥテルテ大統領が塀の外で「麻薬戦争」を激化させているなか、自分はラッキーだと考えている収容者もいる。同刑務所で5日撮影(2016年 ロイター/Damir Sagolj)

マダランさんのいる監房棟に続く階段には「地獄へようこそ」とチョークで落書きされている。

29歳の自治体職員であるマダランさんは、過去数カ月の間にマニラの自宅付近で5人が撃たれて死亡したと話した。刑務所内の方が安全だと感じている収容者はマダランさんだけではない。

マダランさんと同じ監房にいるマルコニーノ・マキシモさん(39)は、フィリピンで「シャブ」として知られる結晶メタンフェタミンを吸うためのパイプを所持していた容疑で1年前に逮捕されたと話す。

「自分はここにいられてラッキーだ。あまりに大勢の人が殺されているのだから」とマキシモさんは言う。

ケソンシティー刑務所から法廷審問に向かうため、収容者のリストをチェックする刑務官。マニラで10月撮影(2016年 ロイター/DAMIR SAGOLJ)

携帯電話をチェックする警護員。マニラで10月撮影(2016年 ロイター/DAMIR SAGOLJ)

ケソンシティー刑務所には刑務官がほとんどいない。大半の監房棟は4つある集団の1つが管理している。こうした集団のリーダーたちによって刑務所の平和が保たれていると、前述のアバルカ刑務官は話す。

「それでも暴動が起きることがある。問題に対処するため、リーダーたちと定期的に対話しなくてはならない」

混み合い、十分な広さが確保できないため、夜は監房に鍵がかけられない。階段に1段ずつ寝たり、ハンモックで寝たり、教会や教室に流れ込んだりしている。

また、雨が降っていなければ、唯一運動できる場所であるバスケットコートで寝る収容者もいる。

毎朝8時になると、大勢の収容者がバスケットコートに集まり、国歌斉唱し、ちょっとしたエアロビ体操を行う。

マニラで10月撮影(2016年 ロイター/DAMIR SAGOLJ)

マニラで10月撮影(2016年 ロイター/DAMIR SAGOLJ)

アバルカ刑務官は、収容者は日中にできる限り体を動かすことを奨励されていると話す。だが、収容者がロイター記者に語ったところによると、体操したり、教会で祈りをささげたり、24個あるトイレに並んだりしている収容者のおかげで空いたスペースで、多くの収容者が睡眠不足を取り戻そうとするという。

刑務所の統計によると、少なくとも2000人が保釈対象となる犯罪者だが、ほとんどが貧しく、保釈金を支払うことができない。

また、過密問題の背景には、フィリピン司法手続きの遅さもある。多くの収容者が裁判までに何年も待たねばならない。

マニラで10月撮影(2016年 ロイター/DAMIR SAGOLJ)

マニラで10月撮影(2016年 ロイター/DAMIR SAGOLJ)

ドゥテルテ大統領の麻薬取り締まりは国民に人気がある。先月の世論調査では、84%が賛成と答えた。だが、取り締まりの対象は貧困層に偏っており、大物麻薬密売人は逮捕を逃れていると、一部から批判も上がっている。

選択できるのなら、塀の外に出たいと語るのは、元麻薬使用者のデニス・チャールズ・レッダさん(29)だ。

「ここは、精神的にも肉体的にも地獄だ」と、他の収容者が眠る寝台下の狭い空間で寝ているレッダさんは言う。

「実際に自分は麻薬を使用した。でも、ここから出られるなら、更生するために何でもする」

マニラで5日撮影(2016年 ロイター/DAMIR SAGOLJ)

マニラで5日撮影(2016年 ロイター/DAMIR SAGOLJ)

(写真:Damir Sagolj 文責:Andrew RC Marshall)

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